2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

入江君人『王女コクランと願いの悪魔』

この小説の主人公の王女コクランと、その王女の元におかれることになるランプの精としての、悪魔との関係は、この悪魔が、あくまでも、主人の「願い」に従属する存在であることによって成立している。悪魔は、主人が「願う」ことによって、その願いを叶える…

韓国の「ラフプレイ」をどう考えるか?

私は、別に、はるか昔の日韓ワールドカップを今さらむしかえして、なにかの糾弾運動を始めたいわけではない。しかし、この問題について、なにも語られない、なにも振り返られないことに、なにか大きな違和感がどうしてもぬぐえないわけである。 そう考えて、…

ナショナリズムについての素朴な疑問

嫌韓という言葉が人口に膾炙して久しいが、韓国における「反日」に対して、日本の「嫌い」という言葉のなんとも、オブラートに包まれたその表現が、まあ、なにかを表現しているのであろう。 「反対」と言うには、そこまでは大きな問題だと思っているのかと言…

A・R・ホックシールド『管理される心』

労働者は、賃金を受けとることによって、仕事をする。つまり、命令に従う。しかしこの場合、たんにその「行為」にのみ注目するのは正しくない、と掲題の著者は指摘する。つまり、この場合に、 何を売っているのか? について、もう少し、踏み込んで考える必…

井上芳保『つくられる病』

村上春樹の小説を読んだとき、ああいった「内面」を語ろうとするスタイルに対して、なにか気持ち悪い感覚を覚えたことがある。夏目漱石の「標準語」に非常に近い文体で、主人公という「僕(ぼく)」が、延々と 自己を語る というスタイルをとる。ここで語ら…

杉晴夫『論文捏造はなぜ起きたのか』

つい最近、国が国立大学における、人文教養系の学部学科の「廃止」を提言したことは、驚きをもって受け取られたと共に、これが一体、何を意味しているのか、といった視点で考えさせられた。 おそらく、日本政府は、かなり「本気」なんじゃないか、と思われる…

河野裕『いなくなれ、群青』

柄谷行人の『近代日本文学の起源』において問題にされていたのは、明治以降の言文一致の問題であった。この場合、問題とされたのは、 日本語の発明 という問題であった。例えば、夏目漱石の小説を読むと、私たちは「驚く」。というのは、漱石が書いた文章が…

原発再稼動を「しょうがない」と言う不思議

原発問題を考えるとき、私にどうしても解せなかったのが、なぜ、どんな世論調査でも、原発の再稼動に半分を大きく超えて反対が占めているのに、原発の再稼動を行うべきだとか、原発の新規建設をすべきだ、といったようなことを言い始める専門家が後を絶たな…

平雅行『親鸞とその時代』

ここのところ、なぜ今さら、歎異抄に興味をもち始またのかと言えば、子安信邦さんの新刊の『歎異抄の近代』を読んだからだが、その内容は私が、この人の本を読んできたものとは、ずいぶんと違う印象を受けた。 そもそも、多くの人は、なぜ「歎異抄」なのかを…

不良と純粋さ

今ごろ、「ホットロード」が映画化されていることに、いろいろと思うところがあるようだが、ようするに、今までは、原作者が断ってきて、企画はされても、実現されなかったということらしい。 とはいえ、私はまともに原作を読んだ記憶もなく、今さら読み直そ…

「日本会議クーデター」内閣

安倍政権が、内閣改造を行ったことで、驚くべき事態が起きた。それは、その閣僚メンバー19人のうち、15名が、日本会議という右翼系団体のメンバーだったことだ。しかし、もっと驚くべきは、そのことを、大手マスコミがまったくふれないことだ。大手マス…

「ハナヤマタ」のマチ

アニメ「ハナヤマタ」と「けいおん」の違いは、なんだろうか? おそらくそれは、「ハナヤマタ」の主要登場人物の基層低音に流れる「シリアス」さにあるのであろう。「ハナヤマタ」の主要登場人物たちには、どこか「部活をやる」ことについての、明確な動機が…

ピーター・シンガー『私たちはどう生きるべきか』

私はときどき、近代皇国イデオロギーというのは、本当に存在するのか、と考えることがある。もちろん、当時も今も、神道的に、大変に思い詰めて、宗教的な生活をしている人たちがいるだろうことを疑っているわけではない。 そうではなく、いわゆる、国家中枢…