2015-01-01から1年間の記事一覧

藤田直哉『文化亡国論』

例えば、エヴァンゲリオンとか伊藤計劃でもいいのだが、こういった作品が実際に何を描こうとしていたのかと考えてみると、なんらかの意味での、ペシミズム、つまり、悲観論なんですよね。 それは、人間への悲観論。人間をそれそのものとして評価できなくなっ…

蓮池透『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』

私は人間は感情の動物だ、と言われるとき、ある違和感がそこに嗅ぎつけざるをえない。それは、感情だとか動物だといったことを強調することによって、自らの 金銭的なずさんさ を隠しているのではないか、という疑いがあるからである。 例えば、掲題の本にも…

ヤクザとIS

私がおもしろいなと思うのは、日本においては、例えば、オウム真理教や酒鬼薔薇や秋葉ナイフ事件やタリバーンやISは、「問題」だと騒ぐのに、なぜか、日本「古来」の ヤクザ については何も言わないんだなあ、ということである(同じく、欧米やアジアのマ…

河野裕『汚れた赤を恋と呼ぶんだ』

うーん。 前回だったか、功利主義と徳倫理学は相性が悪い、といったようなことを書いた。 一方において、功利主義は「無敵」と言われる。なぜかというと、どんな「推論規則」も、その妥当性を、功利主義的に計算できるからなのだ。つまり、功利主義とは 何が…

継続高校の謎

劇場版ガルパンは、ネット上では大反響で、池袋では、来年の一月前半まで公開が決定している。客の入りもいいようで、何回も見に行っている人もいるのかもしれない。 ガルパンを特徴づけているのは、その多くの戦車道に関わる女子高生たちの多さなのであろう…

フィリッパ・フット「ニーチェ----価値の再評価」

ニーチェのキリスト教批判は、考えてみると、少し変な感じがしてくる。 というのは、彼がここで「キリスト教」と呼んでいるものと、彼がここで論じようとしている「一般論」とが、整合的ではないからだ。どういうことかと言うと、ニーチェは、確かにキリスト…

無料食堂

素朴に考えて、今の日本で 飢えて死ぬ というのは、ありえないんじゃないのか、と思うのだが。また、 栄養失調の子ども というのも。しかし、具体的にこのための「対策」が、この日本において、実現できているのかと言うと、その条件というのはなんなのかな…

中原圭介『石油とマネーの新・世界覇権図』

サッカーのクラブW杯で、サンフレッチェ広島がアジアチャンピオンの広州恒大に勝って三位になった試合は、決勝の試合の影に隠れて、ほとんど注目されない、なにかの「偶然」のように忘れ去られている。 しかし、本当にそうなのかは、ガンバ大阪とのチャンピ…

大塚和夫『イスラーム的』

私は、「反知性主義」という言葉がさかんに使われたとき、非常に興味深くその様子を眺めた。というのは、こういうことを言っていた人たちが、基本的には、いわゆる「原理主義」批判を行っていた人と重なっていたからであった。 日本における、いわゆる「原理…

「THE LIVING DEAD」考察

さて、気が早い話であるが、BUMP OF CHICKEN が紅白に出場するということで、私にとっても、一つの区切りになるのかな、といった印象をもっている。 といっても、ここで彼らの活動の全体をもって私なりに総括をしたい、ということではない。私が考えているの…

偽物の寄付

少し古い話になるが、東浩紀さんが3・11の後に発行した雑誌の思想地図の震災特集号の帯に、次のような文字が書かれていました。「1冊あたり635円が義援金となります」。ところが、この本の中身には、この文言に関する説明が載っていませんでした。 そ…

大塚英志『「おたく」の精神史』

私は2チャンネルというのはよくできているシステムだと今だに思っている。というか、こういった匿名システムというのは、ある意味における「平和」とは何を意味しているのかを体現している、と思っているからである。 例えば、同人誌において、匿名のペンネ…

姉と妹(その2)

劇場版ガルパンを見ていたときは、そういえば、テレビアニメ版は、あまりまともに見ていなかったと思い、再度、この作品について考えて、もう一度、この主人公の西住みほと、姉の西住まほの関係について整理してみようと思った。 作品において、主人公の西住…

広島地獄

普段、まったくテレビを見ない私も、ここのところのJ1のサッカーは、なんとなく見ていた。そこにおいて、私を興味深くさせたのは、サンフレッチェ広島というチームであった。 今シーズンの広島のサッカーは驚くべき成績である。得点はリーグ最大であり、失…

杉田敦「憲法九条の削除・改定は必要か」

私はどうも、近年、急に、一部の政治哲学者たちが言い始めた「憲法九条削除論」なるものの「動機」がさっぱり分からないでいる。というか、私はむしろ、そういうことを言い始めた連中が、本質的な部分において、 戦中の日本は「正義の戦争をした」 といった…

色のないお金

例えば、ISの収益構造を見てみると、石油の販売以上に収益となっているのが、占領地域の銀行からの現金の「強奪」である、とニュースになっていたが、このことは、なかなか、現代社会のボトルネックをついた、おもしろい観点なのかもしれない、と思ったわ…

岩崎葉子『「個人主義」大国イラン』

日本の高度経済成長からバブル崩壊、そして失われた10年と言われた時期に渡って、いわゆる「ポストモダン」であり、リバタリアニズムといった「思想」が、巷間を賑わせた時期があったが、そこにおいて基本的に問題とされたのは 個人主義 であったと思って…

山本武利『GHQの検閲・諜報・宣伝活動』

第一期安倍政権は、「戦後レジームからの脱却」を掲げて、戦後の価値観との対決をメインにすえた、政策転換を目指したわけだが、この挫折は、 アメリカ のご機嫌を損ねる形で終止符を打たれた。そのためか、第二期安倍政権においては、まったくアメリカと対…

柄谷行人「カントにおける平和と革命」

ある国家の政治体制の変革、つまり、君主制から民主制への変更を、その国家の中で閉じた問題だと考えられる条件はなんだろうか? というか、そもそも、なぜ、その国家内で閉じられると考えられるのであろうか? ある国家が、君主制から民主制に変化するとい…

総理が頭を下げても見て見ぬふりの日本の大企業

安倍首相が肝煎りで行った「子供の未来応援基金」が、たったの300万円しか集まらなかった、という話である。 安倍首相の肝いり“子供の貧困対策” 寄付わずか300万円|日刊ゲンダイDIGITAL しかし、この話がおかしいのは、経団連はなにをやっているのか…

柄谷行人「Dの研究 第4回」

柄谷さんの近年の、「世界史の構造」(=交換様式)の分析は、以下のような、「二元論 * 2」の構造となっている。 第1象限 ... 交換様式A:互酬 第2象限 ... 交換様式B:略取と再分配 第3象限 ... 交換様式C:商品交換 第4象限 ... 交換様式D しか…

西尾維新『悲亡伝』

トルコがロシアの飛行機を打ち落として、今、世界は第三次世界大戦に突入しようかの大騒ぎであるが、そもそも、なんらかの「武器」を形態して、目の前に現れた時点で、相手への信頼がない限り、なんらかのそういった武力衝突が起きないことを保障することは…

「ひきこもり」社会

西尾維新の終物語にでてくるヒロインの「老倉育(おいくらそだち)」における「ひきこもり」属性について考えていたとき、このヒロインが、いわゆる、 中二病 電波系 と呼ばれてきた、一連の作品と一線を画していることについて考えさせられた。 老倉の場合…

藤井聡『ブラック・デモクラシー』

今回の大阪府長、大阪市長の選挙は、「おおさか維新」の勝利となった。これによって、どうも、大阪は「大阪都構想」の再挑戦とのことで、また、住民投票を目指す、ということらしい。 しかし、私にとって関心のあることは、そこではない。 というか、私には…

姉と妹

ガルパンの主人公の西住みほは、ドジッ娘属性もそうだが、むしろ「引っ込み思案」であることが、この作品の構造を決定している。彼女の「引っ込み思案」属性には、ある 構造 が示唆されている。それは姉である、西住まほの存在である。 このように考えてみる…

政治におけるコミットメント

政治というのは何かと考えてみると、結局、私たちは今ここで生きている社会が、よりよいものになっていくことを目指して行う日々の営みだと言うことができるのかもしれない。 政治には二種類ある。一般的な、大衆社会論から考えるなら、政治とは、言わば、一…

伊勢崎賢治『新国防論』

プラトンは哲学とは「想起」のことだ、と言った。つまり「イデア」である。ということはどういうことか。私たちは「なんでも知っている」ということである。私たちが語るということは 思い出す ということであって、つまりは「悟り」のことだ、ということで…

「表象」への違和感

映画版のガルパンを見たが、確かに、いつもの学校廃校ネタをはさんで、JKたちの倫理的な諸関係を描いていたわけで、それなりにおもしろかった印象はあり、それはネットの評判と同じ評価だと言っていい。 ただ、いつも思うのは、ある「違和感」である。それ…

ある聖性について

フランスが、ISとの戦いを宣言して、シリアに爆撃を行うことについて、言うまでもなく、それにより多くの民間人の死者が生まれることは、始める前から分かっているわけだが、それでも、フランスはそれを「断行」するのだ、と言うわけである。 アメリカも、…

パリと「イスラム」

今回のパリのテロについては、実行犯が全員射殺されているわけで、結局「これ」がなんだったのかを、私たちが問うことを困難にしている。人それぞれが、自分の都合のいいように、この事件の「真相」を分かった気になって、今目の前にある「事実」を、やりす…