2016-01-01から1年間の記事一覧

佐藤岳詩『R・M・ヘアの道徳哲学』

この世界には、物理学の法則のようには、「善」や「悪」はないのだから、つまりは、道徳というのは存在しないんだ、というのが「無道徳主義者」であったわけだが、しかしよく考えてみると、こういった主張は奇妙である。 というのは、たとえそういった「無道…

子供の空間

なにをそんなトリビアルなことで悩んでいるのかと思われるかもしれないが、ようするに私たちは「大人」になってしまっていて、もう子供ではないわけで、そうすると子供のとき、自分がどうであったかなんていう瑣末なことは忘れてしまうわけである。 自分が子…

子供が感じる「罪」とは何なのか?

今週の videonews.com で木村草太さんがアニメ「聲の形」を「共同体の復活」の物語と言っていたわけであるが、それはアニメ版についてはあてはまると思うが、原作についてはどうなのか、ということについては以前、このブログでも書いたわけである。 という…

杉田俊介『フリーターにとって「自由」とは何か』

掲題の本は、2005年の初版となっているが、基本的にはアベノミクスが始まる前の、円高ドル安時代の次々と労働環境が「派遣中心」になってきた時代の空気を代表するものなのであろう。 もちろん、今も労働環境は厳しい。というか、その「派遣」中心型の労…

蝶名林亮『倫理学は科学になれるのか』

私たちが一般に「道徳」と呼んでいるようなもの、つまり、「善」とか「悪」と呼んでいるものが、結局のところ、物理学的な意味で、この世界に存在しないんだから、そんなものを考えること自体が無駄なんだ、ということを言う人が今でもいるわけであるが(そ…

フラット主義者ヒラリー

結局、お金持ちたちは民主党か共和党か、などという対立はどうでもよかった。どっちだろうが、 お金持ちがさらにお金持ちになる ための手段を提供してくれるなら、どっちかなどという話は最初から無意味だった。お金持ちにとって大事なことは、自分が「さら…

立岩真也・杉田俊介『相模原障害者殺傷事件 優性思想とヘイトクライム』

今回の日露会談において、たんにロシアにお金をあげただけで、4島返還がまったく進まなかったことについての、安倍首相の態度は、多くの人に違和感を与えたわけであるが、それで思い出したのは、安倍首相のおじいちゃんの岸信介が、戦中に官僚として、満州…

伊東光晴「問題は英国ではなくEUだ」

凡庸なグローバリズム主義者であり、フラット革命主義者たちが、イギリスがEUを離脱するという国民投票の結果を受けて、 大変なことになる と「不安」を煽っていた光景は、こういった「ポストモダン」一派の 歴史の流れを変えられない といったような「運…

フロイトからアドラーへの往還運動

さて。アニメ「ViVid Strike!」が、ほぼ第一話において予想しえた内容のまま最終回を迎えたのに対して、アニメ「Lostorage incited WIXOSS」は、少し興味深い展開を迎えている。 アニメ「ViVid Strike!」において、フーカ・レヴェントンはリンネ・ベルリネッ…

杉田聡『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』

私たちが財布の中を見てみれば、一万円札があって、そこには福沢諭吉が描かれている。ということは、福沢諭吉というのは「偉い人」なんだろうと、日本国民ならだれでも思うであろう。 ところが、掲題の著者によると、福沢というのは、当時における典型的な …

日本的「正義の戦争」論の危険性

さて。アメリカにトランプ政権が生まれるということは、戦後の冷戦体制が終わるということで、アメリカとロシアの「お金持ち」がグルになるということで、もう一度「明治」の「文明開化」に戻る、ということでもある。 そういった延長で、日本会議回りの連中…

<制度>に正当性はあるのか?

ある制度が存在するとき、お金持ちはその制度の「欠陥」をエキスパートの集団を組織して発見させることで「儲ける」わけである。つまり、どんな制度も「その意図の裏」を、 お金をもっている集団 によってハックされることで、彼らの利益追求に貢献してしま…

なんとも言えない違和感

さて。クラブW杯であるが、うーん。なんとも言えない雰囲気になっているわけですよねー。そもそも鹿島は、リーグ戦3位のチームで、実際、夏以降、負けが続いていたりする。それが、CSの上位3チームのトーナメントで、下剋上しちゃって、クラブW杯まで…

関廣野「『シン・ゴジラ』の政治学 主権についての不安な意識」

関廣野といえば、『プラトンと資本主義』という本を読んで、鋭い分析をするなと思った記憶がある。たしか、3・11のとき、いろいろと発言をしていたのではなかっただろうか。 私がなぜこの論文について言及したいと思ったのか、ということについては、彼が…

人間の<動物>化

アニメ「ソードアートオンライン」は、キリトという少年がヴァーチャルリアリティの世界で、活躍する話であるが、そこで彼はヒロインのアスナと出会う。そして、そのロールプレイングゲームの中で、彼女と結婚するわけだが、お互い、まだ高校生なわけで、現…

横田弘・立岩真也・臼井正樹『われらは愛と正義を否定する』

私がそもそも違和感を覚えるのは、なぜ人々は相模原障害者殺傷事件を 思想 の問題として扱わないのか、であった。そう考えると、日本における「優生学」を「まっとうな学問」として扱おうとする勢力と、例えばピーター・シンガーが考察したような、「一部の…

ヘルガ・クーゼ「ピーター・シンガーの実践倫理」

よくトロッコ問題というのが言われる。1人を殺す行為をしなければ、間違いなく5人が死ぬ場合、5人を殺すより1人を殺す方が罪は軽いんだから、そっちを選ぶべき、というわけである。 しかし、これは変だ。なぜなら、人がそれぞれの場面で、なにを選択し、…

自由と富裕層

自由というのは、自分が好きなだけ、東大受験をするために勉強する時間を確保する自由のことであり、東大受験をするための勉強の時間を「いくらでも確保できる」自由であり、つまり、朝から晩まで、東大受験のための勉強ができる、または、それだけを考えて…

日本的ファシズム

日本のナショナリズムの特徴の震源が結局どこにあるのかということについては、私は最後には「宗教」に行くと思っている。つまり、神道系の文脈なのであって、そこには、天皇でもいいのだが、ある「崇拝」を形にしよう、という表現になっている。 それに対し…

東浩紀に呪われた柄谷行人

それにしても、「批評という病」という東浩紀さんの文章は、あいかわわらず柄谷行人の『探求』がヤバいとか言ってるんだw 自分の卒論の題材を今だにヤバいとか言って、それを卒論にしたオレってヤバいって感じなんでしょうねw ネトウヨの日本ホルホルと変…

年金滞納者をdisるネトウヨ

年金滞納者が年金を払わないのは「けしからん」と言って、ネトウヨがdisってたので、政府が重い腰をおこして、 俺が正義を実現してやるぜ と立ち上がったら、なんと、その9割が、支払い免除対象者だったという 茶番劇 は一体なんなんだろうw あのさ。そろ…

<家族>とは誰か?

大人にとって、子供とは「扶養」する「義務」をおう、なんらかの「義務」に関係した存在だということになる。そういう意味では、子供というのは、それ「自体」としての属性をもたない。必ず、ある子供は だれだれ(=大人)の子供 という形式によってしか記…

当事者としての<子供>

私たち大人になんらかの「責任」を問えるのは、私たちが「子供」という段階を経て、「大人」になるための「教育」を受けてきた、と扱われているから、と考えることができる。それが「当事者性」であり、私たちは「子供」という教育の過程において、なんらか…

子供の<責任>

果して、子供に「責任」はあるのだろうか? こう言うと変な気がするかもしれない。しかし、子供とは「まだ大人ではない」というのが子供の定義なのだから、その子供になんらかの「責任」を問うというのは、(家族の中のしきたりとしては理解できても)社会の…

天皇の<当事者性>

世の中の議論をよく聞いていると、結局それって、「あなた」が決めなければいけないことなのか、というような疑問がわいてくることが往々にしてある。つまり、ひとまずそれって「当事者」がどう考えているのかに準じて処理していくしかないんじゃないのか、…

<非左翼>エリート

例えば、柄谷行人がトランスクリティークとして、カントとマルクスとフロイトを挙げたわけだが、彼らに共通した視点は、人間の能力の限界について言及したところではないか、と思っている。もっと正確に言うなら、人間の「自己」についての「観察」の客観性…

如月ショック

アニメ「劇場版艦これ」は、全体として「シリアス」路線での作品となっていたわけだが、テレビ版を見ていた人たちにとっては、これはどういうことなのだろうか、といった感想はもったのではないだろうか。 テレビ版は、それなりに、「息抜き回」のようなもの…

子どもの約束

私たち大人にとって、子どもの頃というのは「過去」であって、そして、単に過去なのではなく、「子どもの頃」なのであるわけだが、子どもとは、そもそも、 まだ大人ではない という定義なのだから、つまりは「学ぶ」のが子どもであって、子どもの定義であっ…

なぜ国家は必ず滅びるのか?

そもそも「自由」とは、お金持ちにとっては、 国家から、お金持ちだけが、(累進的に)多額の税金を取られない ことを意味するのだから、ようするに 自由(リベラル)=左翼批判 なのだ。彼ら「リベラル」の言う「多様性」とは、 お金持ちを「差別」しない社…

フロイト的問題

いわゆる、ダーウィン的問題というのが昔からあって、 ダーウィン的問題 ... 人間は遺伝子によって、どこまで規定されているのか? というわけだが、まあ、私たちが産まれて、大抵、多くの人が「大人」と呼ばれるように成長して、だいたい同じような年齢で寿…