2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

VRと伝統的・精神的な意匠

柄谷行人の最新刊である、 世界史の実験 (岩波新書) においては、柳田国男が再検討されているわけであるが、柳田の『先祖の話』を再検討することで、 死者を含んだ、共同体の倫理 について語られていることが特徴的だ。それは、アウグスティヌスの『神の国』…

丸山善宏「ゲーデル・シンギュラリティ・加速主義」

もともと、現代思想系の系譜をもつ人たちが、ドゥルーズやデリダの死を境に、自ら、そういった言説から距離をとろうとしてきたことは、一つの違和感をもって受けとられた。 それは、言ってみれば、彼ら自身の 保守化 を伴って受けとられた。もっと言えば、た…

究極のポピュリズム

よく哲学者が使うレトリックに トートロジー話法 がある。AはAである。こういう当たり前のことを、さも真剣な顔をして(つまり、哲学者とか、学者とか、東大出身とかの、「はったり」を使って)、相手を脅し、不安にさせる。 この一つに「れいわ新撰組はポ…

カンタン・メイヤスー『有限性の後で』をどう読めばいいのか?

(以下の引用は全て カンタン・メイヤスー『有限性の後で』 有限性の後で: 偶然性の必然性についての試論 からのもの。) カンタン・メイヤスーの『有限性の後で』については、以前にも、このブログでとりあげたわけであるが、そのときは、別に、その本の議…

刀使ノ巫女のストーリー

アニメ「刀使ノ巫女(とじのみこ)」は、テレビ放映が一年くらい前になるが、スマホゲーは今も配信が続いている。ストーリーは少し違うが、大きな流れが変わっているわけではない。 私は、このアニメについては、世界観がよくできていて、完成している、と思…

映画「天気の子」の感想

前回の「君の名は。」の大ヒットがあった関係で、私は公開二日目では見れないんじゃないかと思っていたが、意外にも、それほど待つこともなく、しかも最前列でもなく、比較的いい席で見れた。おそらく、前回のヒットの関係で、公開劇場が大量に増えているの…

弱者を狙う暴力

今回の京アニの事件について、藤田直哉さんは以下のように言っている。 犯人の動機も明らかになっていない状態であんまり言うべきではないんだけど、あんな平和で和やかなアニメばかり作っていた会社が狙われて焼かれてしまうというその狙い方には、不穏なも…

AIへの嫌悪

私は近年の、AI ユートピア 的な世間の雰囲気が我慢ならない。コンピュータが発達すれば 薔薇色の未来 が待っている? なんで今、その薔薇色の未来が実現できていないのに、コンピュータが「やってくれる」と思えるの? AIの発展によって何が起きるか? …

京アニへのテロ

京都アニメーションのビルが、テロにあったということで、ニュースになっているが、その被害の甚大さをうかがうに、陰鬱な気持ちになる。 世間の反応は、まあ、ほとんどの人がアニメなんか見ないわけで、知らない会社の事務所が火事にあったくらいの態度なん…

ドラッグ資本主義

私は本気で受験なんて止めればいい、と考えている。学力テストなんて、なんの意味もない。むしろこれは 資本主義 が強いる「病気」だと考えているわけで、ようするに現代人はみんな「病気」だと言いたいわけである。 Netflix の『テイク・ユア・ピル:スマー…

自己所有権の「滑稽」さ

リバタリアンはなぜ世界は今だに、リバタリアンが考える 理想の社会 にならないのかと いらだつ わけであるが、そういった光景は、どこか「滑稽」である。 その滑稽さは、カントをまったく理解していなかったニーチェが、勝手なイメージを押しつけたカントと…

韓国財閥とリバタリアン独裁

ここのところ、雑誌「現代思想」では、加速主義についての議論が盛んである。しかし、そこで取り上げられる、ピーター・ティールや、ニック・ランドとは、言っていることだけを見れば、日本のネトウヨとも変わらないような、ヘイト・スピーチのオンパレード…

資本主義ゲームと左翼過激派

資本主義ゲームについて考えてみよう。このゲームの特徴は、 初期条件 に集約される。「最初」に既に、親の財産を相続した、などの理由で多くのお金をもっている人は、そもそも、このゲームにおいては 圧倒的に有利 である。なぜなら、「それ」を元手に 資産…

遡及法

さて。正義とはなんだろう? 例えばそれは、歴史を遡って論証することを可能にするようなものだろうか? ということはつまりは、 自分が生きている時代 においてのみ、自らの考える「正義」を適用することを許されているのだろうか? つまり、正義とは 誰に…

なぜVARは人々を納得させないのか?

サッカーW杯で導入されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)制度は、今回のコパアメリカでも使われていたわけであるが、相変わらず見ている人にストレスを与えるものになっている。 一体、何が問題なのか? 分かりやすいのが、日本とウルグアイの予…

不良たちの倫理

前期のアニメ「この音とまれ」は、まあ、和楽器の箏(こと)を主な楽器として使う箏曲部(そうきょくぶ)を中心にしたアニメであったわけであるが、ジャンプ系の漫画を原作としていて、コミックは20巻まででている。 まあ、そういう意味で、この作品自体は…

アニメ「八月のシンデレラナイン」の最終回

アニメ「八月のシンデレラナイン」は最終回を迎えたわけだが、この終り方は少し「しりきれとんぼ」の印象を与える。ようするに何が終わったのかが分かりにくいのだ。 ただ、少し考えてみると、この終わり方には納得をされるかもしれない。 ストーリーを見て…

クリスティーン・ポラス『「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』

前回紹介した本では、人権という概念が国家の統計的な扱いのレベルにおいては意味のある概念であったとしても、私たちの身近な人間関係においては、具体的にどうしたらいいのか、何が人権的でなにがそうでないのかがはっきりしない、といった意味でのアポリ…

八木雄二『神の三位一体が人権を生んだ』

私たちが産まれて、生きていく過程において、基本的に世界とは、身近な人間関係のことを言っていると考えるべきである。自分が住んでいる家には、父親と母親がいて、他の兄弟がいて、基本的に彼らは、自分が実際に、相手に干渉する関係にある。具体的には、…

国家の正義の無限遠点

最近のニュースで、どうしても分からないことが一つある。それは、まあ、このブログでも何回かは書かせてもらっているわけだが、韓国での徴用工裁判の件である。 ここで私が「分からない」と言っているのは、判決が日本企業への賠償請求を認めたかどうかなん…