2020-03-03から1日間の記事一覧

生まれてこないほうが良かったのか?:おわりに

こんなことを書いてきておいて、他方で、ベネターは以下のように語っている。 はっきり言っておくが、すべての人生が悪いからと言って人生は続けるに値しないということを言っているつもりはない。私はそこまで言う必要はない。そうではなく、私が論じようと…

生まれてこないほうが良かったのか?:第七章「絶滅」

しかし、そもそもそんなことを考えるまでもなく、どうせ人間は「死ぬ」んだ、という議論もありえるだろう。つまり、 必ず人間は「滅びる」 わけである。なにを言っているんだ、そんなこと分からないだろ、と言うかもしれない。しかし、そういった話ではない…

生まれてこないほうが良かったのか?:第六章「生殖と人口過剰」

ところで、今日、ネットのニュース記事を見ていたら、こんなのを見つけた。 一昨年には秋篠宮家の眞子さまが佐渡島で行われた「佐渡トキ野生復帰10周年式典」にご出席。「環境後進国」と揶揄されがちな昨今、誰もが嬉しいニュースのはず、だった。 ところが…

生まれてこないほうが良かったのか?:第五章「形容詞」

そもそもこの、反出生主義は、多くの「まっとう」な哲学者から、馬鹿にされている。それは、大きくは以下の理由である。 ここではまず、「良い」について、一つの区別を導入したい。一言で言って良いと言っても色々な種類の良さが想定できる。ここで取りあげ…

生まれてこないほうが良かったのか?:第四章「死者の復活と輪廻転生」

実は、私も最初は、この反出生主義について、ぴんとこなかった。なにを言ってるんだろう、といった、はてなマークがいっぱいだった。ただ、こう考えてみればいいんじゃないのか、と思ったのが、以下のカンタン・メイヤスーの議論を補助線としてみたときだっ…

生まれてこないほうが良かったのか?:第三章「東浩紀先生のお説教」

ところで、東浩紀先生がまだツイッターをやっていた頃、この反出生主義について ボロクソの、けちょんけちょん に馬鹿にして、軽蔑しまくったツイートをしていたのが以下である。 功利的に判断したら「生まれないほうがよかった」となるのなんてあたりまえで…

生まれてこないほうが良かったのか?:第二章「ハードSF」

さて。あなたはSF小説の読者だろうか? しかし、このSF小説も、よく考えてみると「聖書」と非常に似た構造をしていることが分かる。 聖書は人間に、「子どもを産め」と命令した。よって、人間が子どもを産み、はるか未来まで「生きなければならない」こ…

生まれてこないほうが良かったのか?:第一章「聖書」

雑誌「現代思想」の、反出生主義特集もそうだが、そのほとんどの著者は、 反反出生主義者 である。つまり、ベネターは「間違っている」ということを必死になって主張している。なぜか? これには、非常に「分かりやすい」理由がある。それは、そもそもその主…

生まれてこないほうが良かったのか?:はじめに

掲題のタイトルが、ベネターの『生まれてこないほうが良かった』という本からとられていることは分かるだろう。といっても、私は反出生主義に賛成だとか反対だとか、といった議論をしたいわけではない。そうではなく、(例えばツイッターなんかを見ていても…