数学

ジョン・スティルウェル『逆数学 定理から公理を「証明」する』

大学に入った時、まず、最初に数学科で習うのが、解析学と線形代数なのだが、その解析学の教科書として使っていたのが、 杉浦光夫『解析入門1』 解析入門 ?(基礎数学2) であった。そして、この最初の方の章の最後の練習問題で、いわゆる 実数論 と呼ばれる…

数学の証明は「機械」化できるか

中学生になると、数学に図形問題というのが、あらわれる。三角形の相似性の証明とか、そういったやつだ。線Aと線Bが平行であることを証明せよ、みたいなやつだ。 なんだか分かんないけど、教科書に書いていることを真似て、いろいろいじくっていると、答が…

白井仁人「量子力学への統計力学的アプローチ」

(前半は、掲題のエッセイと、なんの関係もない話が続きます。) 大衆運動についての研究こそ、私のこのブログの最終テーマであった(それは、私がエリック・ホッファーから、示唆され「勝手に」継承しただけのことなのだが)。 そういう意味で、社会科学系…

マーク・ブキャナン『歴史は「べき乗則」で動く』

(掲題の本も、紀伊国屋新宿の福嶋さん書店で紹介されていたもの。) 湯浅さん書店を見て、一点だけ、違和感を感じたのは、まったく自然科学系の書物がなかったことだろうか。 例えば、少し前の日本では、ほとんどの人が百姓であった。みんな農民であった。…

森毅「集合のカテゴリー」

このブログにおいて、哲学の大物と言ったら、もちろん、 ドゥルーズ である。20世紀最大の哲学者故ドゥルーズは、多くの問題を考察したが、彼の思考の中心線になったものこそ、「当然」 ベルグソン であっただろう。 しかしこの見方はジル・ドゥルーズの出…

青山広『論理体系と代数モデル』

つい最近、ちょっと、おもしろい、数学書をみかけたので、紹介したい。 今どき、数学書がおもしろい、って、なんの話と思われるかもしれない。 ただ、それがどうして、おもしろいのかを、説明するには、ちょっと用意が必要である。 以下、がんばってみる。 …

小寺裕『和算書「算法少女」を読む』

掲題をみて、なんのことを言っているのかを分かる人は少ないだろう。それを説明するにはまた、少々、話が混み入ってくる。 算法少女、という本は、二つある、掲題の文庫が解説をしている、江戸時代の、和算書、と、1970年代に、発表された、児童向け文学…

ジュリアン・ハヴィル『世界でもっとも奇妙な数学パズル』

数学の、紹介書、には、いろいろなパターンがある。 いわゆる、教科書、と呼ばれているものは、すでに、その「分野」というものを自明として、その、入門を目指すものである。これは、この入門によって、次の、専門誌の論文を読みこなして、この分野の入口に…

林晋「形式化と無矛盾性のパラドックス」

プログラミングと、数学の証明には、非常に大きな、相関関係がある。それが、カリーハワードの結果、だったか。そのことは、ちょっと意外に思われる。プログラムは、いーかげんで、証明は、なにか「厳密」な、なにか、のように思われているから。 数学の証明…

T.W.ケルナー『フーリエ解析大全』

1996年の翻訳。 現代数学の、一つの頂点は、間違いなく、オイラーの公式、であろう。これほど美しい、エレガントな結果もない。 この、オイラーの公式、の関数版が、フーリエ変換、であると言えるであろう。 フーリエ級数は、工学系の人たちは、よく、計…

島内剛一『数学の基礎』

高校生までの、子供たちに、一風、変わった、数学を、紹介するとしたら、どういったものがありうるであろうか。 私は、まず、なによりも、声を大きく言いたいことは、「高校までの数学は、嘘、だ」、ということだ。 これは、高校生までの、数学をやってきた…

グレゴリー・チャイティン『メタマス!』

著者の本の、何冊かが、日本でも翻訳されて、本屋でも、今も、並んでいる。 著者も、ゲーデルの不完全性定理に、とりつかれた一人だ。他方、IBM の研究所にもいたようで、コンピュータでの実験を重要視するタイプのようだ。 彼が、言う、情報理論は、言って…

1+1+...=-1/2

人は、「1+1=2」が好きだ。 人類において、絶対、ゆるがない真実のように、この等式について、語りたがる。 しかし、この足し算を、延々と続けた果てには、何が待っているか。 そりゃ、ずっと増えていくんだから、無限大、でしょ、って、ちょっと数学が得意…

新井敏康「ゲーデルの無矛盾性証明」

ヒルベルトのプログラムについて、どれくらいの人が、ご存知なのだろうか。 ヒルベルトは、カントールが進めた集合論が、さまざまな矛盾、パラドックスを生みだしてしまった、反省から、一つの、プログラムを提唱する。 数学を、その文法から、反省すること…

ロバート・カニーゲル『無限の天才』

アメリカに、黒人の血をもつ大統領が生まれたことは、実に、歴史的な事件となった。欧米の社会は、変わろうとしている。それは、一言で言えば、「文化的な混血」ではないだろうか。 なぜ、このことが重要か。例えば、ナチスにとって、民族優越主義、こそが、…

春日真人『100年の難問はなぜ解けたのか』

NHKスペシャルの書籍化。 数学について考えることは、人間なら、ある種の興奮を伴わずにはいられないだろう。 よく「数学を勉強して、なんの役に立つのか?」ということをのたまう子供がいるが(同じようなセリフに「どうして人を殺してはいけないのか?…

ブルバキ『数学原論 集合論3』

少しでも、数学を、マニアックにやった人にとっては、この本は、かなり印象的なものであった。 数学というのは、私の印象としては、とにかく、名人芸的な世界なんだと、自己定義したがる人たちが、勝手にやっているギルド的な集団というイメージがある。はっ…

照井一成「計算と論理」

ここでは、カリー=ハワード同型対応についての説明がある。 証明とプログラミングは、一般には、違うものであると考えられているが、非常に単純な同型性が見られるというのだ。 詳しいことは、自分ももうちょっと機会があれば、勉強してみてから、書きたい…

砂田利一『バナッハ・タルスキーのパラドックス』

バナッハ・タルスキのパラドックスについて、どれくらいの人が知っているのだろうか。 「スイカと地球は、それぞれ、有限個に分割して、平行移動・回転で、それぞれを移動すると、組み合わさって、互いに移り合ってしまう」。 恐らく、多くの人にとってこれ…

清水義夫『圏論による論理学』

昔、森毅が、その存在を指摘していた、Mac Lane が指摘した、論理学の現代版のようだ。 一般に、数学基礎論から、作られる、集合論は、どういう世界か?「はじめに一者あり」である。存在論的な形になっていて、その一者(実は、空)から、すべての存在が生…