海外批評

ローレンス・S・シードマン『累進消費税』

先週の、videonews.com のNコメでの宮台先生は相変わらず、消費税、消費税とうるさいわけであるがw、なんで、逆進性の激しい消費税ばかりを上げたがるんだろうねw さんざん所得税は減らされてきて、法人税は減らされてきて。法人税の増税はグローバル化で…

アンゼルム・W・ミュラー『徳は何の役に立つのか?』

ここのところずっと問題にしている、東浩紀先生の「観光客の哲学」であるが、そこにだれも触れないが、非常に問題が大きいと思われる記述がある。 たとえば少子化問題を考えてみよう。ぼくたちの社会は、女性ひとりひとりを顔のある固有の存在として扱うかぎ…

P・F・ストローソン「自由と怒り」

スピノザの頃から、この世界には「自由はない」といった議論が行われている。つまり、この世界は唯物論的に機械論的に「決定」している、というわけである。 そこで、掲題の著者によれば、どうもこの世界は二つの勢力に分かれるようである。悲観論者と楽観論…

スティーブン・ダーウォル『二人称的観点の倫理学』

そもそも、この本はなぜ今さら「二人称」などということを言い始めているのか。 もちろん、この著者の今までの人生がそこには反映されているのであろうが、端的には、クリスティーン・コースガードの『アイデンティティと義務の倫理学』が関係している。 そ…

ゲアハルト・シェーンリッヒ「尊厳・価値・合理的な自己愛」

カントの実践理性批判を現代的なパースペクティブのもとに再検討をしている人として、クリスティーン・コースガードの本(『義務とアイデンティティの倫理学』)を紹介したことがあるが、この本が興味深いことは、明らかにカントを超えてしまっていて、もは…

バラク・クシュナー『思想戦 大日本帝国のプロパガンダ』

日本の明治以降からWW2での敗戦までの、その「軍事」的な特徴を考えたいわけだが、その前に、この日本というのがなんなのかに言及せざるをえない。 明治・大正時代には、日本人は学校の授業や教育政策を通じてナショナリズムや愛国主義を学んでいたため、…

クリスティーン・コースガード『義務とアイデンティティの倫理学』

進化論は、人間は動物なのだから、進化の「法則」に照らして、「合理的」に行動するものだ、と解釈する。というか、「合理的」でなければ、死んでいた、と。まあ、いずれにしろ、進化によって、人間の「行動」は説明できる、というわけである。 しかし、私た…

ヘルガ・クーゼ「ピーター・シンガーの実践倫理」

よくトロッコ問題というのが言われる。1人を殺す行為をしなければ、間違いなく5人が死ぬ場合、5人を殺すより1人を殺す方が罪は軽いんだから、そっちを選ぶべき、というわけである。 しかし、これは変だ。なぜなら、人がそれぞれの場面で、なにを選択し、…

リチャード・ローティ「予測不能のアメリカ帝国」

トランプの得票よりヒラリーの得票の方が多かったのにもかかわらず、代議員制度のせいで、ヒラリーが負けた。だったらそれは、「一般意思」じゃない、というのは分からなくはない。しかし、そう言うなら、アメリカは国家ではなく合衆国だ、ということなので…

広瀬巌『平等主義の哲学』

フランシス・フクヤマは、ヘーゲルのアナロジーとして、資本主義国の社会主義国に対する「勝利」をもって、資本主義によって 歴史の終わり を語ったわけだが、どうだろう? 資本主義は社会主義になる。事実、そうなっているのではないか? 日本の金融緩和政…

A・A・ロング『ヘレニズム哲学』

以前から思っていたこととして、私には、いわゆる「功利主義」というのは、なにかがおかしいんじゃないのか、と思っている。というのは、「幸福」の計算として、最大多数の最大幸福というわけだが、まずもって、そんなことは可能なのかが疑わしいからである…

ジョ・ヨンイル「韓国人は司馬遼太郎をどう読むか」

(昨日のアメリカでの、50人を殺したテロは、まずもって、セクシャル・マイノリティがターゲットにされた、という意味で、非常に深刻な事態である。しかしそれにしては、なぜこのセクシャル・マイノリティの人権が脅かされていることが、多く報道されない…

バロウズ・ダンハム『倫理学』

いろいろな考えがあると思うが、私は基本的にファシズム論で考えていて、つまりは、大抵のことは、ファシズムを防げるのであれば、肯定できるんじゃないのか、と考えている。 しかし、それに対して、いや「ファシズムがいい」んだ、みたいな、ヒットラーの再…

アントニオ・ネグリ マイケル・ハート『<帝国>』

日本の戦後の自民党政治を見ていると、さまざまに「アメリカ」の影が見えてくる。つまり、日米地位協定に始まり、さまざまな日本の意志の決断の場には、アメリカが実質的に 介入 してきた。いや。介入したかどうかは関係ない。民主党政権が脱原発を政策とす…

ユルゲン・ハーバーマス『公共性の構造転換』

確かに、学校の試験問題には「答え」がある。ということは、その答えは「変わらない」ということを意味する。つまり、その問題が出された、どの試験会場でも、その答えは「同じ」というわけである。 しかし、このことは、いざそれを「自分」の話にされたとき…

アレックス・メスーディ『文化進化論』

先週の videnonews.com では、アメリカ大統領選挙の特集を行っていたのだが、その中で、今後の共和党は非常に未来が暗い、というようなことが話されていた。 というのは、いわゆるトランプやキリスト教原理主義者ばかりが共和党の大統領候補になるから、とい…

フィン・ブラントン『スパム[SPAM] インターネットのダークサイド』

私たちが「インターネットを見る」と言うとき、それは一体、何を行っていることになるのだろうか? 例えば、電子メールを考えてみる。なんらかのメーラを使って、私たちはメール・プロトコルに準拠した方法で、メールアドレスを作成して、自分に届いたメール…

ロバート・ブランダム『推論主義序説』

前回、セラーズの論文から、センスデータ問題なるものについて言及した。確かに、私たちは外界を知覚して、その「データ」を元に生きている。 しかし、このように言及してみたとき、ある「仮説」が、まるで「自明」なことであるかのように、私たちの認識を支…

ウィルフリド・セラーズ『経験論と心の哲学』

心理学において、「あなたは何何病です」と言うとき、私たちはある「混乱」におそわれる。というのは、ここで言う「何何病」という「アイデンティティ」は、一体、どのように「推論」されたのか、が説明されていないからだ。 数学においても、そもそも命題(…

カンタン・メイヤスー『有限性の後で』

人間はそもそも、その一人「だけ」をとりだして考えることには意味があるだろうか? というのは、その一人だけであるなら、おそらく、百年もすれば死んでしまうであろう。なんらかの、科学の発展によって、一人で子供を再生産できるようになったり、何百年も…

ジョシュア・グリーン『モラル・トライブズ』

著者は、人間の道徳は一種の「部族」単位で、進化してきた「本能」に関係して形成されている、と考える。そういう意味では、「道徳とは本能的な感情的な反射的な」なにかだ、と言っているのと変わらない。 他者への思いやり......自分の取り分だけでなく、他…

フィリッパ・フット「ニーチェ----価値の再評価」

ニーチェのキリスト教批判は、考えてみると、少し変な感じがしてくる。 というのは、彼がここで「キリスト教」と呼んでいるものと、彼がここで論じようとしている「一般論」とが、整合的ではないからだ。どういうことかと言うと、ニーチェは、確かにキリスト…

フィリップ・J・アイヴァンホー「徳倫理学と中国の儒教の伝統」

なぜ近年、わざわざ「徳倫理学」なるものが言われるようになったのかというと、少し歴史的な経緯がある。つまり、早い話が、 ベンサムの功利主義 カントの義務論 の二つが、とても成功してしまったため、むしろ、ヨーロッパの伝統的には、ずっと一般的だった…

マイケル・サンデル『民主政の不満』

アメリカという国は、移民によって作られた国である。つまり、イギリスに住んでいた、ある、一部の人たちが、そのイギリスでの生活が嫌で嫌でしょうがなく、どうしても、この生活から抜け出したくて、多少のリスクを犯してでも、アメリカという新規開拓に希…

エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』

こういうと変に聞こえるかもしれないが、なぜ子供たちは勉強をするのだろうか。別に学校に行くことが変だと言っているわけではない。学校には友達がいるわけであるし、子供が学校に行くことは本能のようなものであろう。しかし、なぜ勉強をするのだろうか。…

デイヴィッド・フィンケル『帰還兵はなぜ自殺するのか』

WW1のとき、心理学者のフロイトは、塹壕戦を戦った兵士たちがある、心理学的な障害に悩まされている事態に注目するようになる。いわゆる、戦争神経症である。これが、今に繋がるPTSDの研究へと繋がっている。 ベトナム戦争において、多くのアメリカ帰…

マックス・ウェーバー『知識社会学のカテゴリー』

私たちは、毎日、朝起きて、夜寝る。すると、ある「決まった」行動をするようになり、それに伴う、ある「決まった」結果の感覚をもつようになる。このワンセットの「同じ」さを「指示」するのが言葉、ということになる。 この場合、そのことば の「リテラル…

ドミニク・ルソー「立憲主義と民主主義」

よくよく考えてみると、なぜ「憲法」がどの国家においても存在するのかは、なかなかよく分からないことのように思われる。もちろん、この場合に「法律」についてはまだいいのであろう。こういったものが必要だというのは、なんとなく分からないではない。し…

クリス・カイル『アメリカン・スナイパー』

映画「アメリカン・スナイパー」は、クリント・イーストウッド監督による、なんとも言えないテーストの作品であったが、私はむしろこの、クリス・カイルという人そのものに興味がわいてきた。 たしかに映画は、なんともいえない、「厭戦」的な雰囲気をかもし…

ジャン=フランソワ・リオタール『ポスト・モダンの条件』

ポストモダンという言葉は、この本から始まったわけではないと著者は言っているが、実質は、この本の主張から始まっている。つまり、次のような意味において。 このメタ言説がはっきりとした仕方でなんらかの大きな物語----《精神》の弁証法、意味の解釈学、…