ある時期から、マンガは、ほんとうに読まなくなった。最近は、本屋に行っても、マンガは、ほんと分からない。
昔、ジャンプでやってた、コブラを読み返してみた。アメコミの影響を受けたこの作品は、西部劇や、ハードボイルドの色彩の強い。
主人公のコブラの軽口は、なんでしょうかね。まあ、007シリーズなんでしょうけどね。
戦後、日本は、自分たちが戦っていた相手が、どんな存在であったのかを知る。まったく「異質」な他者だったのだ。帝国日本軍なら、「根性」「一糸乱れぬ皇軍の突撃」となるわけですが、彼らは、ヤンキーそのもの。ガムをくちゃくちゃ、まわりをきょろきょろ。ロックを聴いて、ディスコで踊って。へらず口はたたくし。会話表現上日本語の「がんばれ」と「リラックス」が等価になってしまう国(科学的にはまったく合理的だと思いますが)。
なんでこんな連中に戦争で負けたのか、さっぱり理解できないが、ただ、意味が分からず戸惑いながら、目が点になりながら、とにかく、その物質的事実を受け入れてきたのが、日本の戦後。でも、これはたんに、物質的ななにかだけじゃない。ある種、精神的な去勢だったはずです(もう完全に元に戻ることはないという意味で)。今の日本でアメリカ文化を正面きって軽蔑してる人なんて、ほとんどいないでしょう。事実性の前に、少なくとも、一目おいて見ない人はいない。
コブラの舞台は、未来のロボットやさまざまな宇宙人が活躍する。さまざまな惑星をまたにかける。その世界では、宇宙警察のようなものはあるようだが、日常的に殺し暴力が反乱している。奴隷、人身売買、ドラッグ、マインドコントロール、レイプ、性的虐待、少年誌なので、オブラートにつつんでいるところもあるが、言ってみれば、完全な、西部劇のアナーキーな世界(作者はこれこそ、ある意味現代の姿であり未来の姿だと言っているのでしょう)。そんな中、いろいろなピンチの場面もありながら、コブラは超人的な強さでその危機をのり越える。
コブラは、基本的に、どんな行動規範で行動しているのか。マンガを見てるかぎり、いろいろ知りあい、好きになった女性をトリガーとして、話は展開しているように見える。しかし、彼と知りあいになる女性は、敵対集団によって、ほとんどの場合、無残で残虐な殺され方をする。その場合の彼の反応は、こちらが拍子抜けするくらい、素直な怒りだ。
コブラの特徴とは、一言で、孤独、なんじゃないかと思うんですけどね。一人海賊とかいってるから、孤独というより、独立自尊なんでしょうが(西部劇ですから、個人主義ですか)。相棒のレディは、アンドロイドであり、その一線を越える関係ではない。むしろ、彼に仕合せな日々が訪れないことを象徴しているんでしょう。もちろん、彼と関わり恩を感じている人、彼の一声があれば、すべてを投げ捨ててかけつける人、そういう人はたくさんいるが、目的もなしに、コブラの方から彼らに近づくことはない。
装甲騎兵ボトムズというアニメが昔あって、その主人公のキリコというのがいましたね。誰にも心を許すことがなく、常に無口。殺人鬼部隊で、多くの惑星の人々を殲滅してきた過去を背負い、その過去を憎みながら、しかし、この傭兵くずれの、殺人稼業から、足を洗うことはできないでいる。なぜこんな、生き方をしているのか。なにを目的にして、なにを求めて、生きているのか。自分でも理解できず、自分で自分に戸惑いながら、街から街へ流れて行く。
今の日本人に、これだけ苦悩の多い(血なまぐさい)日常の中で、決して癒やされることのない心の傷をもって、誰にも心を閉ざすキリコ、同じような状況なのに、陽気に日々を楽しんでいるコブラ、さてどっちが比較的、理解されるんですかね。
これとまったく反対のことを思ったのが、比較的最近読んだ小説の、西尾維新の、戯言シリーズの最後の終り方ですね。自意識の塊のような主人公は、最後に自分の周りに自分を常に、心配して慕って寄ってきてくれる多くの仲間がいることを再認識することで、自分は孤独じゃない、という満たされるものを感じる。彼が大学を卒業して始める仕事は、自分が最も尊敬する人と同じ職業。身近でこれからも、尊敬しながら、見習いながら。自分が最も愛する人との幸福な日常をこれから送れることを再確認。自分を構成し自分を自分として成り立たしめている不可欠な多くの人たちの存在に気付くことで、この太宰治を意識したビルドゥグスロマンは終る。
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