原爆Tシャツは「反日」か?

ここのところ話題の、BTS(防弾少年団)の原爆Tシャツ問題に端を発した、ミュージックステーション出演キャンセル問題は、アニメ関係に詳しい人にとっては、アニメ「二度目の人生を異世界で」問題と非常に似た経緯を辿っていると思われるのではないだろうか。
まあ、いつものリテラ品質ではあるが、この左翼系の記事では、この問題は桜井誠などの「ネトウヨ」による「右翼街宣」の延長で考えられている:

件のTシャツには、〈PATRIOTISM OURHISTORY LIBERATION KOREA〉という文字がメインでデザインされており、長崎のきのこ雲の写真1枚と、解放を喜んでバンザイする人々の写真1枚が、それぞれ小さくプリントされている。
BTSの『Mステ』締め出しの裏!「原爆Tシャツ」はただの口実で実体はネトウヨの韓国ヘイト

戦時中、日本に植民地支配によって被害を受けた韓国人の視点に立って、原爆を「戦争を終わらせた」存在としてとらえたということなのだろう。
もちろん、だとしても、無慈悲な兵器で多くの人々が殺された悲劇を顧みず原爆を肯定するかのようなデザインは到底賛同できるものではない。
ただ、先に述べた通り、ジミンがTシャツを着ていたのは昔の話であり、さらに、問題を指摘されてからは着ているところは確認されていない。
ではなぜ、いまになってこの話が蒸し返されて炎上しているのか。
それは、ネトウヨによってBTSが「反韓」「嫌韓」を煽るための道具にされてしまっているからだ。
たとえば、元在特会会長桜井誠氏は、11月5日に更新したブログで『ミュージックステーション』のスポンサー企業に"電凸"する旨を告知。また、〈桜井は個人的にこれらの企業に11月9日(金)のテレビ朝日の番組について、「貴社は番組に出演する韓国人グループが原爆Tシャツを着て、日本への原爆投下を祝っていることを知っているのか?」「日韓基本条約破棄判決が出たばかりの現在、国民世論が日韓断交で湧き上がっている中で、こうした韓国人を出演させることを是とするのか?」「貴社は反日企業なのか?」など問い糺したいと思っています。恐らく、こうした問い合わせは、桜井だけではなく日本中の心ある皆さんが行っていることと思います。日本人であれば、誰でも自分の国が好き、そこには左右の思想は関係ないはずです〉と書いて、同様の抗議行動を煽っていた。
BTSの『Mステ』締め出しの裏!「原爆Tシャツ」はただの口実で実体はネトウヨの韓国ヘイト

おそらく、こういった「ネトウヨ」の宣伝工作的な行動はあるのだろう。また、実際に出演中止までに至る過程を考えると、こういった主張に一定の合理性があることは考えられるのだろう。
しかし、上記の引用でリテラも認めているように、このTシャツ自体の

  • 評価

をはっきりさせないことには、どうしようもないのではないか?
まず、この原爆Tシャツが、

  • どういった意図で

作られたものなのか、と、制作側が主張しているのかを確認するところから始めよう。
それについて、以下のサイトに、見やすいTシャツの画像と、そのホームページに書かれていた、作成の「意図」が示されている:

・BOMB長袖シャツの説明文
「国を奪われ、日本の植民地支配を受けた日本植民地時代という長い闇の時間を経て国を取り戻し、明るい光を取り戻した日がまさに光復節。1945年7月26日、米・英・中は「ポツダム宣言」で対日の処理方針を明示するとともに、無条件降伏を要求した。日本がこれを無視すると、米国は8月6日に広島、8月9日に長崎に原子爆弾を投下した。長崎への原爆投下から6日後の8月15日、日本は連合軍に無条件降伏を宣言し、9月2日降伏文書に署名し、正式に太平洋戦争と第二次世界大戦が終わった。そんな韓国の光復をTシャツに表現してみました。ルーズな感じで製作されたロングスリーブレスTシャツです」
【炎上】韓国アイドルBTSが着用した原爆シャツのブランド企業が「猛烈な反日意識」と判明 / 掲載されてる一文がヤバイ | バズプラスニュース Buzz+

(ちなみに、この記事では、問題の「Tシャツ」の詳細がかなり分かる画像が表示されている。これを見て、上記のリテラの引用にあるように、この画像が「小さい」と思うか、と聞かれたら、どう思うだろう? まあ、そんなには小さくない、というのは確かなんじゃないですかね。小さいから「たいしたことはない」と言うのは無理があるように私には思われるがw)
こうして見ると、この「説明文」は確かに、

  • 歴史の「順序」

の話がメインになっていることは確かなわけで、事実、この騒動を受けて、Tシャツの制作サイドは以下のような声明を発表している:

BTSの出演中止を受けて、デザイン事務所の代表が「原爆が投下され日本が無条件降伏したために韓国は解放されたという、歴史の順序を表現するものだった。反日感情と日本に対する報復などの意図はなかった」と謝罪する事態に(WoW!Koria・11月9日)。
BTSのMステ出演中止決まったのは「前日」。「反日制裁」「バカにされた」ファンたちは...

つまり、ここに日本の側が受ける感覚との違和感があるわけである。
日本側の大衆の反応を整理するなら、問題は、このTシャツで、きのこ雲と「バンザイ」を、「並べて」表示していることにあるわけであろう。現代の日本人の感覚からすれば、漫画「はだしのゲン」などの印象から、きのこ雲の

に、多くの「民間人」が焼けただれて、苦しんでいる姿が

  • 目に浮ぶように思い出される

わけである! ようするに、このTシャツは、

  • 多くの焼けただれて、苦しんでいる「民間人」を、周りで囲んで、韓国の人たちが嬉々として「バンザイ」をして、ざまーみろと嗤っている姿

に思われるわけである。ようするに、日本人の「現代の大衆の想像力」では、ここまで行くわけである!
ようするに、きのこ雲は

という「コンセンサス」が日本の文脈ではできているが、韓国では

  • すべての「悪」は、韓国独立に「優位」する

となっているから、まったく話が通じないのだ。
うーん。
これに対して、木村先生は以下のような注意を、ツイッターで行っている:

BTSの話。韓国の教科書では「最後に原爆が落とされて日本は戦争に負けました」という表記と共に、キノコ雲の写真が掲載されているのは、かなり前からなので、良くも悪くも彼らにすれば、「えっ、それあかんかったの?」という感じだろうと思う。
@kankimura 2018/11/10 06:35

因みに「原爆が落とされて日本は負けました」的な記述はワシントンでもロンドンでも見られるもので、そこでは「キノコ雲の下に誰がいたのか」はあまり考えられていない。
@kankimura 2018/11/10 06:39

ようするに韓国の「教科書」における、「歴史記述」が、まず「キノコ雲」から始まって、日本の無条件降伏が、その原因に対する「結果」として説明され、韓国独立が結果しているため、彼らにしてみれば、たんに

  • 教科書に書いてある通りに語った

というだけで

  • 怒られた

というふうに受けとられて、なにに怒っているのかが分からない、という感じなわけである。

韓国の歴史記述の1つの問題は「民族解放」が自らの独立運動ではなく、日本の太平洋戦争における敗北により実現された、という事実をどう「記述するか」。結果として、太平洋戦争に関わる記述は省略されがち。だからこそ「原爆が落とされて日本が負けた」という記述が採用される事になる。
@kankimura 2018/11/1 103:19

ようするに、韓国の「歴史」の教科書では、なぜ日本が無条件降伏を受け入れたのかの

  • 細かな経緯

が省略されがちだ、ということなのだ。日本の終戦までの経緯は複雑である。日本にとって最も重要視されていた、天皇制の維持(国体護持)を考えれば、そもそも、ここまでの戦争の継続が必要だったのかは昔から疑われていた。つまり、原爆の投下が行われる前に、降伏することは、ありえたシナリオだった(そもそも日本だって、「原爆」の開発を陰で進めていた事実があるわけで、エリートがかなりそれに、ひっぱられたのではないか、といった疑惑もある)。
対して、韓国側は、あまりこの経緯を「明示的」に書きたくないわけである。なぜなら、そうすると、韓国の「独立」の経緯に細かく言及しなければならなくなるから、あまり細かく、ここを、深掘りしたくないわけである。

BTSの話。キノコ雲の写真について、「日本人が死んだ事を喜んでいる」、と決めつけている人がいるけど、歴史上の戦争の話をする時に、いちいち勝った負けた、と一喜一憂しているのだろうか。
@kankimura 2018/11/11 14:55

木村先生のこの主張は、上記のTシャツ制作サイドのコメントが、ほとんど、「教科書」の口パクの印象であることに対応している。

1995年(原爆投下から50年目)のNHKの調査によれば、「原爆投下は正しい選択だった」と考える人の割合は、
日本 8.2%
アメリカ 62.3%
韓国 60.5%
ドイツ 4.3%
でした。
原爆に対する日米韓の意識:韓国「防弾少年団」原爆Tシャツ問題から

そもそも、こういった「事実」がある限り、まともな

  • 会話

が成立しうるのかが怪しいわけである。言うまでもなく、当時の広島にも長崎にも、多くの韓国人がいたわけだが、なぜか彼らは、そういった韓国人に「同情」や「共感」をあらわさない。そして、そうやって日本にいた韓国人を

と言って、同じ韓国人でありながら、党派的に糾弾し、差別してきた。そりゃあ、会話も成立しないわけだ、とは思うわけである。
例えば:

自由韓国党の尹永碩(ユン・ヨンソク)首席報道官は「日本の自己中心的な歴史認識と偏狭な文化相対主義に対して深い遺憾を表す。日本政府は放送の掌握を通した韓流殺しは世界的な嘲弄の対象になるだけだということを肝に銘じよ」とし「メンバーの1人が着たTシャツだけで出演を見送ったことは日本の文化的低級さを端的に示している」と論評した。正しい未来党キム・ジョンファ報道官は「日本の破廉恥には底がない。居直りも行き過ぎる」とし、民主平和党のパク・ジュヒョン首席報道官も「日本が戦犯国であることを世界にさらに広報するだけだ。日本は偏狭な過去隠しから抜け出せ」と明らかにした。
「韓日歴史教育のトリガー」になった防弾少年団の日本番組出演見送り(2)

とあるように、韓国においてはむしろ、今回のことは

になるんだからいいんだ、と言っているわけで、まったく話が通じない人たち、といった印象を受けるわけであろう。
上記までに記述してきたことをまとめるならば、Tシャツ制作サイドについては、こと、このTシャツに対しては、ある程度は

  • 反日の意図まではなかったの<かもしれない>

といった保留条件をつけることは可能なのかもしれない(まあ、当然ですが、他にもいろいろな製品を作っているわけですから、安易は判断は違うのでしょうが)。いずれにしろ、今後の彼らの対応次第、ということになるであろう。
対して、BTS(防弾少年団)については、どうだろう?
すでに、さらに追加して以下のようなネタがとりあげられているが。

防弾少年団、今度は原爆ブルゾン着用がバレる

【炎上】原爆シャツとナチスで炎上の韓国BTSがまた炎上 / 東日本大震災を揶揄か「3月11日に人が溺れる動画掲載」

確かに、こうやって次々とネタが湧いて出てくるところは、東京オリンピックのロゴ問題での、佐野研次郎や、ラノベ二度目の人生を異世界で」と似ていなくもない。私が気になっているのは、文政権にしてもそうなのだが、彼らが主張する

  • LOVE MYSELF

が、彼らをして、

  • 謝れない

人格形成をしてしまっているんじゃないのか、という疑いなのである。そもそも、物事など、是是非非でいいわけで、評価は世間が行うわけで、単純に「ファクト」を語り、そのことに卑屈になる必要もない。しかし、彼らの

  • 自己イメージ

が、他人に「マウント」をとられることを、どうしても許せないような性格に追い込んでいるのではないか。なにせ、国連で「演説(=説教)」までした人たち(=聖人)ですからね...。