この前、進化論と、経済学者のハイエクの「自生的秩序」は、まったく違った概念だ、ということを書かせてもらったのだが、世の中には、このことを「混同」させるような、いわゆる
を標榜しているような、哲学者のみなさんの言説が溢れているわけで、なんなのかな、と思わなくはない。ようするに、「行動経済学」というわけで、いや、「進化心理学」と言ってもいいのだろうが、正直よく分からないのは、
- 自由競争による「合理性」の実現
といった「イデオロギー」と、進化論という、言わば
- 結果論
を、なぜ
させたがるのかな、といったことが、疑わしいわけである。
例えば、次の例を考えてみよう:
A:あのトンボたちも 冬が来る前に 死んじゃうんだな
B:なんか儚いねぇ 赤とんぼ儚い
A:でも 成虫は死ぬけど 卵が冬を越して 春にはヤゴになるんですよね
C:普通はそうだけど ウスバキトンボは 例外でね
A:あ あれも成虫で 越冬するんですか?
C:逆逆 寒さに弱くてね 成虫だろうと 卵だろうと 冬には全滅
A:ちょっと待ってください 全滅って... 次の都市には一匹もいなくなっているんじゃ...
C:いや 南の方からまた飛んで来るんだよ 毎年たくさん飛んで来て 日本中でさらに数を増やして 冬に全滅を繰り返しているんだ
A:ええ? 日本に飛んで来る理由は?
C:知らない
A:ええ? なんか無駄死にじゃないですか
C:まあ こういう行動は 無効分散って呼ばれてるし そうかもね
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ようするに、どういうことか? 終戦以降、世界はアメリカ陣営とソ連陣営に分けられた。いわゆる「冷戦」である。そこにおいて、日本はアメリカ陣営となったことで、対ソ連の
が、さまざまに国内向けに「宣伝」された。そこにおいて、ことさらに強烈だったのが、
- 反左翼=反平等
であり、
- 自由競争の「聖性」化
であった。彼ら右側陣営は、とにかく、なんとしてでも「左翼」を dis らなければならなかった。そこから、いかに左翼が言う「平等」が社会を「悪魔」化するか、ようするに、「専制政治」化するのか、ということを強調した。それは、オウム真理教を「悪魔」化したのと、まったく同型なわけであって、とにかく、この社会における、あらゆる「右側体制批判」は、「専制政治」化するという形で、批判をイデオロギー的にすりこんできた。
そして、このレトリックの半面が、自由競争の「聖域」化であった。とにかく、なんでも「自由競争」に任せれば、あらゆることは
- 良くなる
というイデオロギーが強調された。なぜ社会が効率化されないのか? それは、そこに「自由競争」がないから、といった形で、彼らはいかに「自由競争」が、左翼の「正義」に対抗するという意味で、重要だったのかを強調したわけである。
しかし、よく考えてみると、このロジックは、おかしいわけである。つまり、それは
- 自由じゃない
わけである。ようするに、これは「進化じゃない」わけである。そもそも「自由競争」とは自己矛盾だ。なぜなら、それは、そもそもの最初から
- コントロール
されているから。この「競争」は、ある国家権力による「監視」の下で行われる。そして、その舵取りにおいては、国家は、いちいち、
- 介入
してくるわけである。当たり前である。そうでなければ、なぜ「競争」などということが成立しようか? その「競争」は、国家が「そうさせたい」と考えて、想定している範囲の中で、
- 一定の方向を向かせられている
ことによって起きている「競争」であって、そういう意味では、そもそも「競争」ではないのだ。
上記の引用の例にある、「ウスバキトンボ」の場合を考えてみよう。毎年、多くのウスバキトンボが日本を目指して飛んできて、多くが日本に住みつく。ところが、その
- 全て
が「絶滅」する。なぜなら、日本の冬は寒いから。これが「進化」なのである。
なんて、非合理的なんだ、と思うかもしれない。しかし、逆に考えてみよう。ウスバキトンボは、どうやったら、日本に向かうことを止める、なんていう「選択」を行えるだろう?
大事なポイントは、このトンボは、別に、日本に来たものが絶滅しているだけで、日本に来ないで温かい地域にそのまま居座ったものは、繁殖して、生き残っているわけであろう。
なぜ、そんなに大量に日本に来て、ことごとく絶滅しながら、種として生き残っているのかといえば、その他の地域に向かった種の、それなりの一定の生存率が確保できたから、と言うしかない。
つまり、本質的に「進化」とは、その概念から「絶滅」を内包している。それは、「自由競争」による「合理性の増大」のような「イデオロギー」とは、まったく違ったものであることを理解しなければならないのだ...。