小林鉄郎・西浦博「新型コロナウイルスの数理」

さて。今、問題となっている新型コロナについて「危険」だと言うのはいいが、

  • どのくらい危険なのか?

については、「定量化」されない限り、なにも言っていないと変わらない。しかし、「新型」なんだから、始めてなんだから、そんなこと分かるわけないじゃん、と、

  • 無限

に怖がっていたら、今後、新たな新型ウイルスが現れる度に

  • マックス

の対策をしなければならない、ということになり、人間生活が成り立たなくなる。
つまり、「危険」「危険」と言う人は、なんらかの「規準」を提示しなければ、他者を説得できない(おそらく、そういった「不安」でふきあがっている人にとっては、そんなことはどうでもいいのだろう)。
この「危険」がどれくらいなのかを計る一つの指標が

  • 致死率

である。さて。今回の新型コロナの場合、それをどのように計算したらいいのだろう?

まず、致死率の計算において大切なことは何を分母にするか(確率論的に言えば、どのような状態に条件付けした死亡リスクなのか)である。すなわち、コロナウイルスに感染したところで、全員が発症するわけではなく、不顕性感染が多く含まれる。仮に発症をしても(発熱や咳嗽などの症状を有していても)、軽度な症状であれば病院を受診せず自然治癒してしまうことがある。結局、報告数として上がるのは医師による診察を受け、診断がついた者のみである。まとめると、図1のようになり、感染者をI、発症者をS、確定診断例をCとすると、報告された数のみから計算した致死率(confirmed case fatality risk:cCFR)および真の感染者全体における致死率(infection fatality risk:IFR)は

  • cCFR = D/C
  • IFR = D/I
  • cCFR > IFR

cCFR と異なり、IFR は未報告者を分母に含んでいるため、一般的には測定は不可能である。IFR を計算するためには、全感染者Iに占める確定例の人数Cを表す確定率 q = C/I を cCFR に掛けることによって推定することもできる。

  • q * cCFR = IFR

さて、掲題の論文というか、エッセイは、この計算を行っているのだが、そちらについては、まあ、当たり前だが、細かい計算になるし、そこでもその概要した載っていないわけだが、いずれにしろ、その結果としては、

  • cCFR ≒ 1%
  • IFR ≒ 0.1%

と計算されている。
さて。
私がここで、考えてみたかったのは、いよいよ、世界的に「抗体検査」の結果が、ちらほらと出始めている、ということなのだ。

@ano_ano 米国NY州の推定感染者数が確認済感染者数の10倍の270万人で、人口の約14%に達するというニュース。一方で死亡者数は15740人だから致死率は0.58%にまで低下。これ、朗報なのでは?

NY州民、約14%が感染か-抗体検査、推定270万人
NY州民、約14%が感染か 抗体検査、推定270万人 | 共同通信
@kyodo_official 2020/04/24 05:09

@ano_ano_ano 2020/04/24 08:53

抗体反応が陽性であるということは、必ずしも「免疫」が働いて、もう「感染」しない、ということを意味しない、と考えたとしても、つまり、「一人一人」にとって、そのことが自らの「安全」を意味しないとしても、その

  • 統計

としての数字には一定の全体像を反映している可能性がある。
また、抗体陽性とは、上記の議論から考えれば、IFRの方だと考えられるわけで、掲題のエッセイでの「0・1%」という推測と、今回の「0・58%」が、かなり近いという印象を受けるわけで、やはり計算は正確なんだなあ、と勝手に思ったわけだが、どうなのだろう...。
(この多少の差異が、「医療崩壊」によってもたらせられる「誤差」ということ?)

数学セミナー2020年5月号

数学セミナー2020年5月号

  • 発売日: 2020/04/11
  • メディア: 雑誌