日本でのオミクロン株の流行の可能性

新型コロナのワクチンの評価については、やはり、今年の夏の東京の大流行を考える必要があると思うわけだが、そうやって考えてみると、あれだけのデルタ株の大流行の第5波の中でも、60歳以上の人の死者は、それまでと比べても少なかったわけですね。
そう考えれば、間違いなく、ワクチンの効果はあった。これは否定できないんじゃないんですかね。
まず、なぜ彼ら高齢者はワクチンを積極的に打ったのだろう? こういった疑問は、ある意味で、ジェネレーション・ギャップと関係している。そもそも、ワクチンとは、一般的には子どもに打つものだ。そして、今の子どもについては、ワクチンを打つかどうかは、「個人の選択」なしには行われないわけだが、ある年齢以上の人には、そもそも

  • 集団接種

の世代だったわけで、つまり「全員」を一度に体育館とかに集めて、並ばせて打ったんですね。つまり、そういった過去の記憶があったから、今回もまた、同じように行ったんですね。
ところで、日本の新型コロナについては、早い段階から、「ファクターX」の話が続いてきていた。欧米と比べて、なぜ、これほどまでに被害(死者数、重症者数)が少ないのか、という形で。しかし、これについては、つい最近、ある仮説がニュースになっていた。

日本人の約6割にある白血球の型「HLA―A24」を持つ人は、風邪の原因となる季節性コロナウイルスに対する免疫細胞が、新型コロナウイルスの感染細胞も攻撃するという実験結果を、理化学研究所のチームが発表した。英科学誌コミュニケーションズ・バイオロジーに論文が掲載された。
「ファクターX」は日本人6割にある白血球の型か…防御力の解明につながる可能性も : 医療・健康 : ニュース : 読売新聞オンライン

テレグラフ紙は「A24」型は欧米人では1~2割程度しか持たないとした上で、理研の藤井真一郎チームリーダーの「“ファクターX”の一つであるといえるだろう」とする談話を伝えた。
英メディアが日本人の新型コロナ死者数が少ない理由〝Xファクター〟を特集(東スポWeb) - Yahoo!ニュース

まあ、今までさんざん言われてきた「交差免疫」の話ですよね。日本人は、「普通の風邪」に昔からずっとかかってきたから、その

  • 免疫

が、今回の新型コロナに対しても、変異株の壁を超えて、効いているんじゃないか、と。
そして、これもさんざん言われてきたことだが、

  • 細胞性免疫

の問題ですね。
ただ、このHLA-A24って、少し前に、同じように、ニュースになっていたんだよね。

東京大学は2021年6月16日、懸念すべき新型コロナウイルスの変異株が、日本人に多く見られる細胞性免疫「HLA-A24」から逃れることを発見したと発表した。
新型コロナウイルスのデルタ株は、日本人の免疫から逃れる変異を持つ:医療技術ニュース - MONOist

そう。このHLA-A24は、デルタ株の流行の「原因」の話の文脈でも出てきていた。
つまり、この二つはリンクして考える必要があるわけで:

  • 日本人だからといって、新型コロナをなめて考えてはならない。なぜなら、デルタ株のときのように、HLA-A24の効果を「回避」してくるものが、これからも現れるかもしれないから。
  • そもそも、HLA-A24は、「日本人6割」、「欧米1、2割」というわけで、別に、日本人なら誰でも、「ファクターX」をもっているわけではないのだから、「この割合」において、日本人の中においても、「一定の割合」で重症化や死に至る人がいる。

もちろん、この6割と、1、2割を単純に「被害の大きさ」として、比例して考えることもできないだろう。なぜなら、そもそも「集団免疫」や「基本再生産数」というのは、統計的な割合に依存するわけで、そういった一定のパイの感染者(や重症者)にまで到達しにくい、ということは日本の場合は、その割合以上に言えるだろうからだ。
さて。そう考えてくると、改めて、

  • 第5波(=デルタ株)での「急激な減少」

の「原因」はなんだったのかが気になってくるわけである。上記にあるように、デルタ株に対しては、日本人の利点であるHLA-A24は使えなかった。だったら、なぜ減少したのか?
まあ、今のところ、ほとんどこれを説明する仮説は出てきていないんだよね。強いて挙げれば、以前も注目した以下だろう:

新型コロナウイルスの流行「第5波」の収束には、流行を引き起こしたデルタ株でゲノム(全遺伝情報)の変異を修復する酵素が変化し、働きが落ちたことが影響した可能性があるとの研究結果を国立遺伝学研究所と新潟大のチームが30日までにまとめた。
デルタ株 ゲノム修復困難で死滅か 酵素が変化、変異蓄積 | 山陰中央新報デジタル

まあ、エラーカタストロフ理論ですよね。これについては、多くの批判があるわけで、あまり多くを述べないが、いずれにしろ、世界中の、ほとんどの新型コロナの大流行は、ここまで劇的かはともかく、同じように、

  • 収束

しているんだよね。上記の記事にもあったように、第5波だけでなく、第3波でも同様の傾向が見られたと言っているわけで、なんらかの同じような、機序が働いているのかもしれない、とは想像するよね。
さて。今回のオミクロンについて考えたいんだけど、上記の文脈を考えると、やはり、HLA-A24がどこまで効くのか、が興味がありますよね。
あと、今のところ、南アフリカでは、そこまで重症化していないなんていう話もあったけど、そもそも、アフリカ大陸は、日本ほど、高齢化していないわけじゃん。そりゃ、重症化は少ないんじゃないのかっていう臨床的な指摘は、「年寄が少ない」ということから、割り引いて考えなければならない印象は受けるねw そして、いろいろと報道を見ている限りでは、だいたい、重症化の割合は、今までの新型コロナと同じ、という話もあるし、あまく考えることはできないと思うけど。
まあ、そうなんだよね。だって、この新型コロナって、感染拡大期には、みんな、ピンピンしているんだよね。だから、活発に行動している。ところが、そこから、何週間もかけて、重症化して、最終的に死ぬわけで、完全に感染拡大と重症化が

  • 分離

しているから、この二つに因果的な「淘汰圧」がかかっていないんだよ! つまり、これからも何十年もかけて、ほとんどランダムに、重症化と軽症化を繰り返すんじゃないか、と予想できる。
私の仮説としては、今年の夏が悲惨だった原因には、オリンピックがあったことは間違いない、と考えているんですね。あれで、大量の外国人を日本に入れたから、いっこうに、感染拡大が収まらなかった。そう考えると、オリンピックが終わって以降は、比較的に、日本の感染防御は、その前の年くらいまでには、成功するんじゃないか、と予想している。
結局さ。なんで、今年の夏が悲惨だったのかって、日本の医療体制が、完全に、あの程度の感染者をまかなうための

  • キャパ

がないからでしょ。つまり、大量の重症者や死者を出した原因は、

  • 十分の診察や治療

を、ほとんどの感染者に行わなかったから、なんだよね。つまり、死の原因は、「医療が放棄されたから」。つまり、こうなると、助かる命も助からないわけ。
これに対して、「なんで医療を拡大しないんだ」と、怒っていた保守派がいたけれど、いや、お前は普段はあんだけ

を語っておいて、それはないんじゃないか、と思ったわけだよね。医者だって、やりたくないことは、やりたくないんじゃないか。だって、診察したとしても、重症化したときの、集中治療室のパイが自分の病院に、全然足りないことを、よく分かっているのだから。へたに、助けますって言って、やっぱり、助けられなかったときに、遺族から訴えられて、損害賠償を受けたくないからね。
そして、国民は「賢い」わけ。国民は、あれだけ、国家から「自宅放置」ということをやらされたら、

  • 急に

みんな、「良い子ちゃん」になったわけね。だって、死にたくないから。みんな、それからは気をつけて、行動するようになったわけだ。国民は、国家のことをよく見ているわけね。国家が、これについては、国民を助けないんだ、と分かったら、国民は、これ以上ないいくらいに、感染対策をするようになった。
さっきも言ったけど、第5波の急激な減少の原因として、これも、あなどれないと思っている。結局、基本再生産数が1を超えてるかどうかが全てなんだよね。超えてなかったら、いずれにしろ、収束するの。ところが、ちょっとでも超えていると、いかにそれが、少しのように見えても、いつまでも流行は続く。そうだとすると、そういった

  • 塵積(ちりつも)

の原因で、結果として、1を切りさえすれば、こういった結果になるんだよね...。

追記:
書き忘れたが、なぜ日本に上記の、HLA-A24が多いのかと、東アジアで、昔から、普通の風邪が多かったことは、関係なくはないわけだよね。つまり、もしかしたら、昔はここまでの割合じゃなかったのかもしれないけど、HLA-A24じゃない人は、風邪で早くに亡くなったから、淘汰圧がかかって、こうなったのかもしれない。