カオスラウンジの裁判

少し前に、かなり話題になっていた、以下の裁判の判決がでて、完全な原告の安西彩乃の負け、黒瀬陽平らの勝利に終わっている。

現代アート集団「カオス*ラウンジ」を運営する合同会社カオスラに勤務していた安西彩乃氏が、同社と元代表黒瀬陽平氏らから不当解雇やパワーハラスメントを受けたとして、慰謝料の支払いなどを求めた訴訟の一審判決で、東京地方裁判所は11月17日、原告の請求の大部分を棄却した。「会議(*)においてなされた退職勧奨が任意の退職を求めるものとして許容される限度を超えるものではない」と原告の訴えを退け、未払いだった賃金2万円の支払いのみ命じた。
www.tokyoartbeat.com

そう聞くと、当時のショッキングな話題の取り上げられ方から、かなり深刻な不当判決じゃなんじゃないかと思うかもしれない。
まず、原告の安西さんが行ったパブリックな告発文として以下がある。

note.com

たしかにこれを読むと、黒瀬さん側が一方的に悪いと読めないこともない。
しかし、である。
上記の記事でリンクが貼られているように、この裁判の判決そのものがリンクされている。

bewithayanoanzai.cargo.site

その内容は見てもらえば分かるが(個人情報は黒塗りされているとはいえ)かなり詳細に記録されていることが驚きだ。
大まかにことの経緯を整理すると、黒瀬さんは自社に安西さんを採用したわけだが、そこから、不倫関係になる。黒瀬さんは結婚していて妻がいる。しかし、二人の不倫は、その妻にばれる。すると、彼女は二人に、不倫関係を止めることを弁護士を通して求めてくる。
これに対して、二人は自分たちが「悪い」ということは認めている。つまり、後はどういった「けじめ」をつけるかだけ、ということになる。
この時、会社としては、黒瀬さんは唯一無二の代えがたい芸術家なんだから、彼との契約を解消することはありえない。それに対して、安西さんはそういう存在とまでは言えない。だから、彼女が自主的に辞めてくれるなら、特に困るという話じゃない(ちゃんと、ひきつぎさえしてくれれば)。
この非対称性は、彼女としてはおもしろくない。だから、一度は会社を辞める話し合いを行ったきたが、後から考えて、なんか自分だけが損をしているように思われておもしろくなく感じてきて、それまでのやりとりを反故にして、ネット上で告発を始めた、という形だろうか。
原告の安西さんが不利な点は明らかで、会社と一連の退職のための話し合いをやってきていたという事実だろう。つまり、会社側としては、やっていたということは、それ相応の対応をしてきたことを意味しているわけだから、しかもその場で反論していたわけでもないのだから、これで「会社がちゃんとしていなかった」と言うことは弱い印象を受ける。
結局、裁判は形式的な手続きを判定する場にしかならないわけで、そもそもこういったトラブルを話す場として、原告にとって裁判で訴えることが得策だったのかは疑わしい印象を受ける。
普通に考えると、黒瀬さんはまず、この会社を解散して、また違った形で事業を始めるでよかったんじゃないのか、といった印象は受ける。なぜなら、上記のフレームでは、どう考えても、黒瀬さんはノーダメージで、女に全ての責任をおっかぶせた、という印象が残るからだ。
そう考えると、全体的に黒瀬さん側の一般社会に向けてのイメージコントロールに失敗している印象はいなめない。
しかし、そもそも、彼ら芸術家集団が今までだって、そういった社会的なイメージコントロールに成功してきたのかは疑わしく思わなくもない。ネット上では、彼らの芸術活動に批判的なコメントは多く見かけるが、彼らはそれらを一切、無視してきた。
そして、それを助長し、幇助する関係にあったのが、ゲンロンの東浩紀先生なわけだろう。今回の件で二人は、袂を分かれたのかもしれないが、外から見るに、明らかに「共犯」的に、あらゆることをやってきたわけで、なんで今さらまるで無関係のように振る舞っているのかが理解できないわけだ...。