サッカー日本代表の総括

今回のW杯は、アルゼンチンが優勝したわけだが、決勝トーナメントのほとんどの試合が、

  • 延長&PK戦

で決着した試合ばかりになったこともあって、これで「アルゼンチンが一番強かった」みたいなことを言うのは、少し違和感はあるわけだ。決着のつけ方として、PKがいいのかということでいえば、

  • 誰がどう考えたって、いいわけがない

わけだけれど、それに代わる、代替案として、今までいろいろと取り組まれてきたけど(ゴールデン方式なんていうのもあったが)、結局、残ったのはこの形だったということで、それに対して、なにかを言ってみても、しょうがない、というのは正直なところなのだろう。
(これについては、例えば、日本の高校サッカーさえが、トーナメントはこの形なわけで、W杯の延長で日本の選手でPK戦でPKを決めたのが全て、高校サッカー出身者だったというのは、偶然ではないのかもしれない。)
(普通に考えれば、ソフトボールが、延長になると、最初に2塁にランナーを置いた所から各回を始めるということをやっていて、おそらく、サッカーもそういった「工夫」が行われるんじゃないか、と思っている。)
私はそういう意味では、そもそも、トーナメントに興味がなかった、に近い。昔から、グループリーグを突破するかどうかにしか興味をもったことがないので、今一歩、ぴんとこないわけだ。
実際、今回の大会が始まるまでの報道の色調は、

  • 日本は、ドイツ・スペインがいる、このグループを突破できない

という論調が、ほとんどだった。つまり、日本はドイツ・スペインに負ける。たまたま、引き分けくらいにはなることがあったとしても、まさか、勝つなんてありえない、と。
そういった論調の大会前だったし、森保が選ぶ選手が、全体的に守備的な選手が多くで、派手さがないことも関係して、まったく「盛り上がっていなかった」わけである。
これが、実体だった!
ユニホームも売れてなかったし、報道も少なかったし、こんなことで大会前がこんなで、本当によかったのか、といった状態が正直な話だった。
じゃあ、結果について話していくわけだけど、初戦のドイツに勝った。これによって、日本国内の、特に「にわか層」の注目が、ぐんと上がった。
でもさ。よく考えてみてもらいたいんだけど、もしもあなたが、日本代表のビジネス的なマネージメントをやる立場だったら、

  • ドイツに勝ったから、日本国内が盛り上がった

じゃなくて、もっといろいろな手を打って、当たり前のように、初戦が「盛り上がって」ほしかったわけじゃない。もっと、初戦が始まる前から、ユニホームが売れてほしかったわけだよね。
そう考えると、なぜ、田嶋は森保を監督にしたのかって、不思議なんだよね。
田嶋は、二回連続で日本人監督にしたときに、相当なプレッシャーだったんじゃないか、と思うんだよね。だから、西野から、森保に代えたときに、相当な覚悟でそうしたんじゃないか、と思っている。
だって、日本人監督といったって、いろいろいるわけでしょ。その中で、なぜ森保だったのかっていうのは、やっぱり、それなりの「基準」があったんだ、と思うわけです。

金子逹仁:[金子さんが森保さんを支持していた理由と聞かれて](森保さんが)サンフレッチャ時代にやっていたサッカーですよね。あの予算。だいたい、10位から14位くらいのチーム予算で、3回優勝させてる。これは、森保さん無能だ、という声が、僕のところにも来ましたけど、無能な人にはできないよ、これ、っていうのが僕の一番の根拠でしたね。
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これを聞くと、なぜ田嶋が、数ある日本人監督の中で、森保にしたのかの理由が、彼の「勝つ能力」だけを、ほぼほぼ、評価して決めた、ということになっているわけ。
これって、すごい話なわけだよね。だって、そう簡単に、その人の「勝つ能力」だけで人事を決めるかって考えてみればいいと思うよ。もっと、いろいろな諸事情で人事って決まるのものじゃない?
つまり、田嶋は「次のW杯」も、日本人監督にすると決めたときに、

  • その日本人監督は「優秀な成績」をおさめてもらわなければならない

ということを、かなり強い意志で考えていたんだ、ということになるわけ。
もはや、

  • 勝利至上主義

と変わらないくらいに。
日本人監督が、W杯で、そんな成績をおさめられるのか? 国民だけじゃない。世界中の人が「びっくり」するくらいの成績をおさめられるのか? そんなことが「日本人監督」にできるのか? 田嶋が考えていたことは、これしかなかった、というのは、すごい話なわけだ。
はっきり言って、森保は「相当なタマだった」わけだw 金子さんが言ったことは伊達じゃなかった。彼は「勝負師」だったし、すごかった。
でもこれって、今まで私たちが見てきたサッカーとは似ても似つかぬものだったわけ。森保さんがやったことは、

  • W杯本戦前まで、まったく3バックをやっていない
  • とにかく「奇策」が成功した

わけだw 選手も代表に招集されて、3バックの練習を、まずしたことがないw つまり、森保は自分のチームの選手を「だます」ことから始めた。まさか、本戦で3バックをやると思っていないわけ。選手自身が。だから、練習していない。
でも、そういった視点で見ると、クラブチームで3バックでレギュラーをやっている選手を選んでいないかというと、そんなことはないんだよね。そこまで露骨にはやらかっただけで。
あと、三苫や伊東をサイドバックをさせた、あの「超攻撃的布陣」が、一瞬で「5−4ブロック」になるというのも、典型的な奇策だったし、それで、ドイツに勝ったんだから、森保は賭けに勝ったわけだ。
もちろんそう言うと、語弊があるわけで、クロアチアに負けた試合など、伊東の所から失点している試合が何回かあったわけで、この急造の奇策がギャンブルだったことは間違いない。そして、それゆえの失点がありながら、点もとって、この成績となった。
結局、なんなんだろう、とは思うわけね。
例えば、今回の森保ジャパンを若い子どもたちが見て、「日本のサッカー」ってなんだと思っただろう? どういうプレーをすれば、日本代表に選ばれるだろう? ハリルの時なら、それは「デュエル」「前からのプレス」など、分かりやすかった。ところが今回の森保さんは、すべてが「奇策」すぎて、よく分からないわけであるw
変な言い方に聞こえるかもしれないけど、日本サッカー協会は、森保監督なら、こういった試合結果になることを、ある程度予想していたんじゃないか、とすら思っている。それくらいに、森保という人は

  • 日本の最終兵器

だったんじゃないか。平気で、これくらいの成績は残す監督なんだ。もう、能力が桁違いだった。
そして、当然、日本国内の「にわか層」の意見は、森保さんの監督継続となっている。
しかし、本当にそれは、日本のサッカーにとって望ましいのか?
森保は、本番のW杯で手の内を見せないために、一切、3バックをやらなかった人ですよ。なにも練習しないで、ぶっつけ本番をやっちゃう人。
それって、つまりは、もしも森保さんを次の監督にすると、

  • 次のW杯本番までの全ての試合を「手抜き」する

と言っていることと変わらないわけですよ。考えてみてよ。そんな試合を見たいですか? 森保は、W杯以外の全ての試合を、本気でやらない。全部、本番のW杯で、相手を「だます」ための、フェイク試合をやる。このギャップが大きければ大きいほど、本番のW杯で「ギャップ」になって、勝てる確率が高くなる。
森保さんが、たぐいまれな能力の監督であることが分かった上で、でも、こういう特徴の森保さんが、なにも、今から4年間、日本代表監督である必要があるのか、が疑問なわけだ。
彼の「戦い方」を考えれば、W杯本戦の1年前に監督就任で、十分に間に合う。だって、彼はW杯本戦にならない間はずっと、

  • 本気でやらない

というのと変わらないのだから。
じゃあ、日本代表の試合は、W杯本戦以外について、

  • そこで何をやるのか?

を、協会は具体的な、そこでの「目標」を決めるべきだろう。そして、それに見当った、育成なり、なんなりのプランを決めるべきだ。そして、それに見当った監督を、

  • いつでも、森保に代えられる

状態にしておいて、試してみる、ということになるのではないか。そして、それによって森保に自由を与えることで、彼に、いろいろな「勉強」や「経験」をつませる、というのが両方がウィンウィンになる、一番うれしい落としどころなんじゃないか...。