澁谷かのんとウィーン・マルガレーテの関係

少ししつこいが、前回の話の続きを少しやっておきたいと思う。
アニメ「ラブライブスーパースター」2期は、そもそもラブライブシリーズが今まで、

  • 学年が上がる

物語を描いてこなかったために、多くの違和感を視聴者に与えている。それを「チャレンジ」と考えるなら、その意図に一定の理解を示さなければならない。
そう考えたとき、明らかに大きな違和感を与えているのが、

  • ウィーン・マルガレーテの登場

だったわけだ。なぜ彼女は登場したのか? というのは、思い出してもらいたいのは、無印におけるアライズ、サンシャインのセイントスノーは「ライバル」として、作品の大きな屋台骨になっていた。ところが、スパスタのサニパは、なんと、2期で、マルガレーテちゃんに「負ける」という展開になっている。この「事実」だけを見ると、なにか

を破壊している印象を受けるわけである。
もちろん、少し考えてみれば、サニパは先輩なんだから、少ししたら「卒業」するんだから、いつまでも「ライバル」も、おかしいわけだけど、視聴者からすると、そもそもこれが、

  • 3年間

を描かれる、今までとはまったく違う作品なんだ、ということが公に宣言されているわけでもないのだから、そう突然言われても困るわけだ。
視聴者は、「きっと見ている人を楽しませる作品にしてくれるはずだ」という安心感がある。これは、これまでのラブライブシリーズが積み上げてきた信頼だと言ってもいい。しかし、だからといって、なにもかもを視聴者の「不安」を抱かせさせないストーリーにできるはずもないわけでw、そこはバランスでやらざるをえない。
しかし、だったらだったで、なぜウィーン・マルガレーテは「登場」したのかは、はっきりさせないといけない。
しかし、それはほぼ自明なわけだ。つまり、2期最終回での、かのんの留学問題を見れば、彼女が「かのんの子どもの頃の夢」と関係して登場してきていることが分かる。
つまり、作品の制作サイドとしては、2期以降で、かのんの「子どもの頃の夢」を、もう一度、ちゃんと取り上げようと考えた。かのんがその夢を「あきらめた=忘れた」のは、彼女が人前で歌えなくなったからだ。よって、それがリエラでの活動を通じて克服された過程の次に来るものとして、もう一度この「子どもの頃の夢」と向き合わなければならなくなった事情がある。
しかし、だとしてもそれは、どのようにしていけば、そうなるのかは自明ではない。そこで、ウィーン・マルガレーテは、2期の役割として、なんというか

  • かませ犬

のような形で登場する。それを、プロレスにおける「ヒール」と呼んでもいい。ヒールが必要とされるのは、ヒーローが活躍する場面を視聴者が待っているからだ。この役割は、よって、人を不快にさせる側面をもっていることになるが、だからといって、そういった存在が物語の進行上必要ない、ということにならない。
マルガレーテちゃんは、かのんから見ると、

  • 過去の自分がもっていた「子どもの頃の夢」をあきらめていない「可能性の中の存在」

として見えている。つまり、「ありえた、もう一人の自分」として。
つまり、マルガレーテは、かのんに「それ」を気付かせるために、どうしても、必要だったのだ!
少し考えてみよう。もしも、マルガレーテの歌である、「Butterfly Wing」と「エーデルシュタイン」を、澁谷かのんが歌ったら、と。
違和感があるかもしれないが、「翼などなくても飛べるの」「選ばれるのは/強く願う者だけ」「その弱さ/砕いてあげる」「今この願い叶えてみせる/涙だって情熱に代えて」とあるように、これは

  • 「過去の夢」を棄てなかった<もう一人の澁谷かのん>

が歌っていると考えても、少しも不思議じゃなく思えてくるわけである。
そしてそれは、嵐千砂都にとっての澁谷かのんについても言える。千砂都にとって、実際にかのんが、海外の学校に行くか行かないかんてどうでもいい。そうじゃなくて、彼女がまるで、子どもの頃の夢を忘れているかのように振る舞っていることに、ずっと

  • いらだち

があったわけでしょう。もちろん、「世界中の人を歌で幸せにする」なんていう、子どもが考えそうな、馬鹿馬鹿しい夢だろうけど(「ぼっち・ざ・ろっく」でぼっちちゃんが自分の夢を「世界平和」と言うようなものだ)、それを聞いていた、子どもの頃の千砂都にとっては、少しも馬鹿馬鹿しくなかった。真剣だった。つまり、千砂都も、マルガレーテちゃんの存在を知ることで、もう一度、澁谷かのんの中にある、その夢の問題に直面させられた、という形になっている。
こう考えると、ウィーン・マルガレーテの2期での扱いは、(かませ犬と言ったけど)少し、かわいそうな、役割を演じさせられている、というか、何かの目的のためにやらされている、というような手段的、非主体的な扱いになっている、と言ってもいい。ということは、

  • 3期で、ウィーン・マルガレーテは間違いなく、リエラの3期メンバーになる

ことを意味する。つまり、ウィーン・マルガレーテの本当の

  • キャラ

が描かれるのは、3期になる。ここで、ラブライブ視聴者が「納得」する彼女のキャラ設定が再提示されることになるだろう...。