くだらない価値観を破壊せよ

アニメ「ガールズバンドクライ」は、今、第6話まで放送が進んでいる。ちょうど、第6話で結成されるバンドの残りの二人のメンバーが加入する流れが描かれたことで、私なりに、この辺りで一つの作品全体の見通しが描かれたんじゃないか、といった印象があって、今回、その評価を書いてみようと思った。
この作品をどのように評価するのだろう? おそらく、それは第5話で描かれた

  • ライブシーン

への評価が重要なんだと思っている。ここは、作品前半のクライマックスだ。ここで、このバンドがどういったものを示すのかが描かれる。つまり、ここに全てがある。
第1話はこうだ。主人公の井芹仁菜(いせりにな)は熊本出身で高校を中退して、東京に上京してくる。そこで、たまたま、彼女ににとって「命の次に大事」な、ダイアモンドダストというガールズバンドのメンバーの河原木桃香(かわらぎももか)と出会う。彼女は、ダイアモンドダストがメジャーデビューを行うに際して、「方向性の転換(アイドル路線への転換)」を行うことに反発して、バンドを脱退しており、今日。東京でのこれ以上の活動をあきらめて、地元の仙台に帰る予定だった。その話を聞いて、仁菜はどうしても、桃香をひきとめずにいられなかった。
第2話は、ひとまず桃香の帰郷の引き止めに成功した仁菜だったが、彼女は東京で大学進学をするための一人暮しを始める。しかし、その日常はひたすら孤独だった。桃香に自分のバンドにボーカルにならないかと誘われた仁菜だったが、自分には無理と断る。孤独に耐えられず、桃香の家を訪れたとき、彼女は桃香のバンドのドラムだという安和すばると顔を合わせる。しかし、どうしても仁菜は彼女を避けてしまう。もともと、人見知りだったからと理由を答えるが、仁菜は人間関係にどうしても積極的になれない。高校時代の、自分を隠して生きていた日々からの慣習が彼女にそう強いてくる。
おそらく、この第2話が一番、文学的だったんじゃないか。仁菜は熊本から東京に出てきた、地方出身者だ。そして、桃香も地方出身者だ。仁菜は東京に出てきて、始めて自分が

  • 孤独

だということに気付く。ここには自分を知っている人は誰もいない。その中で生きていくことがどんなに大変なことなのかを身をもって知ることになる。
ところで、彼女のこの性格について、少し過去の出来事が分かるのが第5話だ。ここで、ダイアモンドダストがメジャーデビューを行うに際して、桃香が脱退したことに代わって、新しいボーカルが採用され、その正体について仁菜が知ることになる。それは、彼女の高校時代の同級生だった。しかし、その描写は微妙だ。仁菜が学校の靴箱の前で自分の箱を開けると、そこには彼女の内履きの靴がない。すると、その後をそのボーカルの子が通りすぎて、「仁菜が悪いんだからね」と言う。このシーンは、仁菜が学校で「いじめ」られていたことを示唆する。おそらく、そのボーカルの子を含めた数人が、仁菜を「いじめ」ていたのだろう。
しかし、仁菜は彼女を「かつての友だち」と言う。他方で「絶交した」と言う。
第5話の居酒屋の場面は感動的だ。ここで、仁菜と桃香は喧嘩をする。今のダイアモンドダストを認められるかで、絶対に仁菜は許せない。大人気(おとなげ)ないとたしなめる桃香を、どうしても仁菜は受け入れられない。
この居酒屋での対立の中間で、仁菜の回想がさしこまれる。高校の放送室を内側からロックアウトして、彼女は桃香が歌うダイアモンドダストの歌を全校中に大音量で流す。その閉鎖された放送室の部屋の中で、一人踊り狂う仁菜。おそらく彼女はこの事件のすぐ後に、高校を辞めている。
ところで、その居酒屋での帰り道。いつもはここまで酔わない桃香は、ぐてんぐてんに酔っぱらって仁菜に抱えられて帰る。小さな声で桃香は仁菜の耳元で小さな声で「ごめん」と言う。ここまで自分を守ってくれた仁菜の言葉がうれしかったのかもしれない...。
第5話の最後のライブ場面は象徴的だ。このライブが始まる前に楽屋で、他の男性のライフに参加するミュージシャンが「ガールズバンドのノリが嫌いだから、雰囲気をぶちこわしてもいいか」と彼女たちに聞いてくる。それに対して、仁菜は「私たちがぶちこわす」と答える。
つまり、このライブは彼女たちの「反逆」の第一歩だ。
ところで、この作品の脚本は、あの花田十輝だ。彼の祖父が文芸評論家の花田清輝であることは知られているが、花田清輝が日本の現代思想において、今だに、重要な存在であることは言うまでもない。
花田十輝の脚本ということもあって、この「ガールズバンドクライ」は、アニメ「宇宙よりも遠い場所」と比較されることが多い。というか、花田十輝ラブライブの脚本家だ。

追記∶
第2話で、仁菜が高校時代の回想がフラッシュバックするんだけど、クラスで自分の机で、かなりイジメでひどく壊された感じだったね。また、第2話で高校時代にイジメられていたことを話しているね。あと、ガールズバンドクライのタイトルの理由として、第2話の涙がそれだね。