映画「ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝」について

まあ、あまり不謹慎なことを書くのもどうかと思うわけだが、金曜日に公開され、土日なんとか見たいなと思っていて、ネットで席の予約をしようとホームページを眺めていたら、土曜から日曜の夕方までびっしりで、前列のスクリーンの目の前しか空いていない。ところがなぜか、日曜のナイトショーだけは、やたらと空いていて、むっ、っとなったわけだが、とくに深く考えずに、席を買った。まあ、ネットを見れば、台風が来ているとかで、山手線はすでに止まってるとかどうとかで、さもありなんと思ったわけだがw
映画は大変に、素晴しかった。まあ、テレビ・シリーズもよかったわけだが、こういった「小品」にこそ、この作品の素晴しい要素が現れているように思われるわけで、テレビシリーズを知らない人にもぜひ見てもらいたいと、一人のこの作品を見た人間として、推薦させてもらいたい。
大事なことは、この作品が、手紙配達人や、口述筆記人といったような、必ずしも高尚な(作家や哲学者wのような)、身分の仕事でなくても、決っして馬鹿にしないで、尊い仕事として、リスペクトして描かれていることに、共感するわけである。
私は今回の京アニの事件に対して、大して何もできていないけれど、こうやって作品を鑑賞することで、チケットを買って、少しでも被害に会われた方々に貢献できたかなと思うと、今回見てよかったと思っている。この素晴しい作品を、多くの人にぜひ劇場で見てもらいたい。
(帰りは少し雨に濡れたが、私鉄は動いているわけで、問題なく家に帰れた。そんだけ。)

司馬遼太郎史観

そもそも、司馬遼太郎に「史観」なんてあるのだろうか? これはもっともな主張であるが、ここで、そう呼んでいるのは、実際の司馬遼太郎のことというより、

  • 日露戦争までの日本は「素晴しい」が、それ以降(つまり、WW2で)日本は堕落した

といった、ふわっとした主張のことを言っていると考えていい。
そう考えたとき、いわゆる「韓国植民地論争」というのは、典型的な司馬史観に関係した問題なんじゃないのかと思えてくる。
ここでまず、村山談話を振り返っておこう。

わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。
村山総理大臣談話

こうやって見たとき、この文章が間違いなく、

  • 韓国を日本が植民地にした(侵略した)

と言っていると解釈できるだろう。つまり、そもそも韓国だろうが、東南アジアの諸国だろうが、日本の「態度」を区別していないわけである。
では、次に河野談話を見てみよう。

今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話

これは、日韓基本合意の後に、従軍慰安婦の事実がさまざまに発見されたことを受けて、日韓基本合意のときにはまだ知られていなかったがゆえに、この合意時にこの問題が話し合われなかったがゆえに、改めて行われた声明で、まあ、基本的に日本政府がこの事実を認めている、ということを言っていることが分かる。
対して、安倍首相が発表した声明では何が違っているのかを確認したい。

百年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていました。圧倒的な技術優位を背景に、植民地支配の波は、十九世紀、アジアにも押し寄せました。その危機感が、日本にとって、近代化の原動力となったことは、間違いありません。アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました。日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました。
平成27年8月14日 内閣総理大臣談話 | 平成27年 | 総理の指示・談話など | ニュース | 首相官邸ホームページ

この安倍談話が、どこまでも、

に近くなっていることが、村山談話河野談話と違っていることが分かるだろう。ここには、少なくとも、「日露戦争まで」の日本に対して、なんらの道義的な責任を認めていません。つまり、そこまでの日本の

  • 抵抗

には正当化されうる、と言いたいというのが、よく分かるわけであろう。

宮台:日韓併合に関する条約は、合法だ不法だっていう論争がずっと行われていて、国際的にはね。韓国と北朝鮮の学者あるいは政府以外は日韓併合に関する条約は合法。したがって、日韓条約は合法。従って、合法なので、植民地ではないと。国際的な学者さん、歴史学者の集まりでも、自らの自立があやうくなった国が隣国の強いところと併合するという戦略は、昔からよくあることで、それが違法だということは聞いたことがない、という。僕も、その説に立ちますので、私の師匠である小室直樹もずっとそう言ってましたが、韓国の併合は合法なので、韓国が日本の植民地だったことはないです。
VIDEO NEWS 日韓のいがみ合いで崩れる東アジアのパワーバランス

一般に、宮台はリベラルな社会学者だと思われている。しかし、韓国併合の問題はそれが、国際社会において、受け入れられたか、そうでないかが問われているわけではない。その日本の行為が

  • 暴力的

に行われたことを「正当」と言うことの倫理的な地平が問われていたわけであろう。

特派大使の伊藤博文(初代首相、後に韓国統監)は「もし拒否するのであれば、帝国政府はすでに決心している。その結果はどのようなことになるか」(「伊藤特派大使内謁見始末」)と韓国の国王を脅迫。韓国政府の閣議の場に憲兵を連れて乗り込み、協約締結をためらう韓国の大臣を「あまり駄々をこねるようだったらやってしまえ」とどう喝しました。
いま振りかえる 植民地支配 歴史と実態(1)/脅迫と強圧で実現した「韓国併合」

あのさ。暴力で「脅し」ておいて、不平等条約を結ばされたことに対して、それを

  • 合法

と言って済ませられるんだったら、あらゆる暴力が正当化されるわけであろう。あんた、それでいいの?
そもそも、世界的に旧植民地の問題や、アメリカ・インディアンの問題などは、その侵略が

  • 暴力的

なものであったことの倫理的な地平が、近年さかんに議論されているわけで、そういった文脈をふまえないで、「世界の歴史学者が、日韓併合は合法と言っている」と言ったって、昔からそうなっているから、問題ない、と繰り返しているに過ぎないw
こうやって見ると、宮台の主張が、村山談話をすら後退していることが分かるだろう。
こんな宮台真司を、韓国の方々は、一緒に商売をやれるのかな? 彼と一緒に仕事をしたっていうだけで「恥かしい」ことなんじゃないのかな。末代まで、責められてもしょうがないんじゃないんですかね。
しかし、まあ、宮台先生は、さまざまにトンデモ扱いをされているとしても、学者であることは学者なわけで、一定の線までは超えていないのだろう。
対して、東浩紀先生は、今は、大学教授の職を離れているわけで、恐しい発言を繰り返している。

日本には安を犯罪者として扱った100年の歴史があり、韓国には安を義士として称えた100年の歴史がある。その溝はいくら事実を積み上げても早々には埋まらない。
東浩紀「韓国には韓国の歴史があり韓国の神がいる」 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

こんな「問題」が、日本のどこで行われているって? 安重根の行為が、日本においてあまり褒められたものでないと考えられているのは確かだとしても、そもそもの歴史的な文脈として

  • 東学農民運動

の問題があるわけでしょう。

当時、朝鮮では官吏の腐敗と重税に反対して東学農民運動が起こっていました。運動は朝鮮半島の南西部の中心都市・全州を実質的に統治するほど力を持ちました。
そのとき日本は、朝鮮王朝の要請もないのに、東学農民運動への対応を口実に大軍を朝鮮に派兵し、ソウルを制圧。開戦直前の朝鮮王宮を軍事占拠し、国王と王妃を拘禁しました。そして、軍事的脅迫のもとで朝鮮に日本への協力を約束させたのでした。同時に、日本軍は農民軍の大量虐殺を行いました。その犠牲者は3万人、あるいは5万人に迫ると言われています。
いま振りかえる 植民地支配 歴史と実態(1)/脅迫と強圧で実現した「韓国併合」

東浩紀先生の頭の中では、「農民軍の大量虐殺」がきれいさっぱり忘れられているのかな? 戦争ってなんなの? お互いが、殺し殺される場所なんでしょ? 「3万人、あるいは5万人」の殺害をしておいて、その指導者である伊藤博文が一人の青年に殺されたことを

  • その溝はいくら事実を積み上げても早々には埋まらない

と本気で考えてるの? ちょっと、信じられないんだけれど、この人は、一体どこで議論されている内容のことを語っているのだろう?

たしかにそれはある。でもそういう意味では、外国からは日本の教育もたいがい自国に都合が良いものに見えていると思うよ。自虐史観とかべつに、戦前の日本はやっぱやばいって。

@hazuma 反日教育をしているので、大多数が批判対象になっている。一刻も早く反日教育はやめべき。
@bose_husband 2019/08/10 10:55

@hazuma 2019/08/10 10:59

付け加えるとね、ぼくは靖国遊就館はいったことあって、なかなかよくできた歴史博物館だと思ったのよ。明治維新から日清日露までは、日本の苦難をよく描いている。でも第二次大戦に入るとすごく歯切れ悪くなっていると感じたよ。そこはぼくは保守も認めていいと思うな。ぼくたちは失敗したんだよ。
@hazuma 2019/08/10 11:02

いまのツイートで、おれは左翼としては終わった感。まあいいや。どうせぼくのこと批判ばっかしてるし・・
@hazuma 2019/08/10 11:03

すみませんでしたw 東浩紀先生は、どうも

だったようです。おそらく、安重根伊藤博文の「その溝はいくら事実を積み上げても早々には埋まらない」っていうのは、東先生は

から学んだようですね。東浩紀ファンクラブの別名、ゲンロン友の会の人たちって、こういう東先生の「遊就館主義者」の側面も「応援」しているのかな。

あと従軍慰安婦問題だけど、これは調べれば調べるほど込み入っている問題でして、ぼくはぶっちゃけ不可知論というか「専門家でもないしよくわからん」という立場です。それは無責任と思われるかもしれないけど、ぼくからすればよくまあみなさん断言できるなという感じ。
@hazuma 2013/05/13 11:07

@hazuma おやおや、片山さつきみたいなことをおっしゃる。では当然、「JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C01001469500」という文書の存在やそれが意味するところについてもご存知なんですよね?
@nogawam 2013/05/14 19:30

知ってますよ。というか調べられますよ。ほらいまはネットがありますからね…… RT @nogawam @hazuma おやおや、片山さつきみたいなことをおっしゃる。では当然、「JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C01001469500」という文書の存在やそれが意味するとこ
@hazuma 2013/05/14 21:00

で、そうした文書群について具体的に「解釈の争い」をシミュレートしてみせるという芸を披露するなら、まあ感心しないこともないけれど、そしてそれが自分の正当性を明らかにする唯一の方法であるわけだが、絶対にそうはしないだろう。
@nogawam 2013/05/14 22:49

呪文のごとく「デリダ」「不可知論」と唱えてみせたところで、無知への居直りとの区別などつくはずがない。
@nogawam 2013/05/14 22:51

メンションがなかったので気づかなかったが、いつもの能書きを垂れていたのか。そんな抽象水準の話なんていまはまるで訳に立たないんだってば。
@nogawam 2013/05/15 12:30

例えば「JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C01001469500」のようなテクストに具体的に即して、調停不可能な複数の「解釈」が現に生じていることを示してみせてこそ、始めて何か意味のあることを言ったことになるんだよ。
@nogawam 2013/05/15 12:37

それなしに、ただただ「解釈の複数性が〜」と言い募ってみたところで、そんなの中学生にもできることでしかない。
@nogawam 2013/05/15 12:39

デリダを読みこむとれっかの有無も決定不能になるらしい、ということを知ったのが昨晩からの一番の収穫であった。
@nogawam 2013/05/15 12:42

東浩紀氏の従軍慰安婦問題に対する態度について - Togetter

確か、大塚英志との対談の『リアルのゆくえ』で東先生が主張していたのは、南京事件についての

  • 不可知論

だったと思うけれど、ここではその「東大話法」を、従軍慰安婦にまで敷衍しているんだね。
能川元一が言っているのは、今学会で、どういった文脈で、どこが議論されているのかっていう話をしているわけで、そういった文脈に合わせた議論ができなければ、何も言っていないのと変わらないっていう、しごく「まっとう」な

  • 科学

の話をしているだけですよね。
対して、東先生はなにがしたいんだろう? 新しい「学説」を打ち立てたいのかな? 新しい「学説」をひっさげて、学会に発表して、今までの、さまざまな学説に

  • 反論

がしたいのかな?

とにかく、人間は放っておくと、無駄な組織をつくり無駄な問題を生み出し無駄な解決に力を注いでしまう。人文系といっても広いけど、少なくともぼくの領域である哲学とか文学なんて世界は、歴史文献使った研究以外は学会すら存在しなくていいと思うね。好きに読んで、好きに発表すればいいんです・・・
@hazuma 2019/08/31 01:48

そもそも、人文系は「学会すら存在しなくていい」んだってさ。すごいね。人文系は

  • 科学

じゃないんだ。じゃあ、なんなんだろうね。というか、東浩紀先生の南京事件論、従軍慰安婦論を

  • まともに相手にしている

学者って、一人でもいるのかな? 誰も相手にしていないのに、こうやって何年も何年も、同じ持論を繰り返しているのか。すごいね、「人文系」って...。
(まあ、宮台真司先生にしても、東浩紀先生にしても、二人に共通するのは「日本維新の会」を支持していて、彼らの「応援」をずっと何十年も繰り返してきたことですよね。だから、それと上記の文脈って、とても近いわけでしょう...。)