2009-01-01から1年間の記事一覧

ジョン・グレイ『わらの犬』

はじめに 欧米においては、ユダヤ・キリスト教の考え方というのは、抜きがたいまでの、根深さをもっている。 なんてったって、アメリカ議会では、大統領は、聖書に手を当てて、宣誓をするくらいなのだ。 神がどーしたこーした。 日常会話からして、こんな、…

城戸久枝『あの戦争から遠く離れて』

(12/29、12/30、と、これを原作としたドラマ「遥かなる絆」が、再放送されるそうですね。以下は、そーとー、ネタばれ、だと思いますんで、気をつけて下さい。) 私は、この 500 ページ近くもある、ノンフィクションを読んで、ずいぶんと考えさせられた。 も…

病者の光学

戦前の作家、堀辰雄の小説に「風立ちぬ」 風立ちぬ・美しい村 (岩波文庫 緑 89-1)作者: 堀辰雄出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1981/02メディア: 文庫 クリック: 24回この商品を含むブログ (10件) を見る というのがあります。この小説を、あれ、っと思っ…

清水美和『「中国問題」の核心』

(そういえば、初公判だそうですね、NHKニュースでやってた。) どうでもいいですけど、BS世界のドキュメンタリー「よみがえる第二次世界大戦」の、白黒のカラー化は、すごいですね。死体まで、赤いですよ。あれは、白黒だからまだ、見れたのであって、カラ…

劉暁波(リュウシャオボ)「一人一言の真実が独裁権力を突き崩す〜言論の自由こそ民主化の出発点」

この年末もおし迫ったこの時期に、一年を振り返り、あらためて、「最も重要なこと」について考えておくことは、意味があるのかもしれません。 この論文の著者は、言論の自由の「一点突破」こそ、あらゆる問題の解決の「全て」であることを強調します。 まさ…

COP15

今回の国際会議は、世界が、新たな時代に入った、と思われないだろうか。 なぜ、今回の会議が合意しなかったか。それは、一言で言えば、中国であった。しかし、それは、中国をコミットメントに含めなければならないと考えたから、であった。それは、どういう…

吉岡吉典『「韓国併合」100年と日本』

ときどき思うことは、「日本の戦後とは何だったのだろう」ということです。日本はポツダム宣言を受諾します。しかしこれに対して、以下の指摘を、十分に考察してみた人というのは、少ないのではないでしょうか。 このいわゆる玉音放送は、しかし、戦争の遂行…

柴田ヨクサル『ハチワンダイバー』

主人公、菅田(すがた)は、子供の頃から、ずっと、将棋だけをしてきた。 将棋だけに、毎日の時間を捧げてきた。奨励会と呼ばれる、プロ棋士育成組織で、三段まで、登りつめるが、プロにはなれなかった。しかし、一般に、そのレベルまで、行ったものたちは、…

佐藤忠男『草の根の軍国主義』

前回、ヘーゲルについて、とりあげました。 彼の主張の後半を、ずいぶん、乱暴に省略しました。ではそこには、どんなことが書かれていたと考えればいいのであろうか。 いわば、人が人と関わっていく、さまざまな「型」が列挙されていたんだと思います。 ヘー…

岡本裕一朗『ヘーゲルと現代思想の臨界』

ヘーゲルと言えば、18、19世紀、つまり、江戸時代の、ドイツの哲学者、である(高校の倫理の教科書にでてくる)。ちょうど、フランス革命やナポレオンと同時代の人になる。 こんな昔の人がなんだと言うんだ、というのが正直なところであるが、早い話、い…

佐藤嘉幸『新自由主義と権力』

この本では、まず、フーコーの『監視と処罰』の権力論を、新自由主義、とのからみで『生政治の誕生』に準拠して整理する。その後、ドゥルーズ=ガタリの『千のプラトー』にある、その新自由主義において、課題となった、主体、の対抗手段の問題、を検討する。…

ジェームズ・スロウィッキー『「みんなの意見」は案外正しい』

この本は、タイトルにもあるように、「みんな」、についての本です。 つまり、人間が集団となったときに、どういう傾向をみせるのか、そういう本です。しかし、この本がおもしろいのは、その集団が、非常に広い範囲まで含んで、扱われていることです。たとえ…

「キャピタリズム」

マイケル・ムーアの「キャピタリズム」を見てきた。 この作品のクライマックスは、なんといっても、後半の、サブプライムローンで、ある家族が、銀行から、昔から住んでいる家を追い出され、トラック暮しをしていた家族が、地域の住民の助けを借りて、もう一…

仲正昌樹「「構成」の想像力」

著者は、オバマの、大統領就任演説で、アメリカの建国の精神が語られたことに、注目する。 アメリカはこれまで何度か暗雲立ち込め、嵐荒れ狂う時をすごしてきたが、それらの時に耐えることができたのは、「単に指導者たちの手腕やヴィジョンのゆえではなく、…

加藤さん「それでも」本後記

今回は、前回書いた、加藤さん、の本の、論点を補足するような内容にしようと思います。 ちょっと本屋に行ったら、前回紹介した、加藤さんのこの本が、某保守系の雑誌で、「徹底批判」と称して、座談会で、とりあげられていて、びっくりした。と同時に、ちょ…

加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』

昨日の、ニュースステーションで、アメリカのスマートグリッド戦略の、簡単な紹介があった。 とにかく、言えることは、自然発電は、発電が、極端に、天候に依存するため、それ相応の、電力網を構想しなければ、「効率」化しない、ということのようであった。…

このサイトについて

ここ、二三日続いていた、頭痛がやっと治まってきた。疲れていたのだろう。少し、のんびりできる。 このサイトに書く内容について、自分としては、すごく、抑制的にやってきた。 日記とは書いたが、絶対に身近な人に迷惑のかかることは書けない。もしそんな…

細貝俊夫『プログラマ主役型プロジェクトのススメ?』

今回が私の「礼」三部作の最後となる。 その前に、二つ、時事ネタ。 亀田、内藤、は、オンタイムでは見れなかった。やはり、内藤の早い段階での、鼻血が大きかったように見える。あれで、亀田は冷静になれた。内藤はくやしいだろうが、こういうリスクはあっ…

小島毅『父が子に語る近現代史』

私が「礼」という言葉が気になりだしたのは、この方の以下の本を読んだころからでした。 宋学の形成と展開 (中国学芸叢書)作者: 小島毅出版社/メーカー: 創文社発売日: 1999/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る この本自体は、宋の時代を…

金谷治『易の話』

この、昔に書かれた、易経の紹介本を読んでいて、ある、インスピレーションが浮かんできた。もちろん、世間の人には、ぴんとこない話をまた、してしまうのだろうが、どう思われようとかまわない。関係ない。 儒教に興味をもち始めてから、しきりに思ってきた…

小寺裕『和算書「算法少女」を読む』

掲題をみて、なんのことを言っているのかを分かる人は少ないだろう。それを説明するにはまた、少々、話が混み入ってくる。 算法少女、という本は、二つある、掲題の文庫が解説をしている、江戸時代の、和算書、と、1970年代に、発表された、児童向け文学…

Rie fu「君が浮かぶよ」

「DARKER THAN BLACK」も、だいたい今までの、ストーリーは分かった。最近のは、YouTube で、容易に見れましたね。 まあ、見ても、よーわからん感じでしたけど(インがヘイに「私を一人にしないで」で、どーなったんでしたっけ?)。 逆に、みょーに気になる…

平松伸二『ブラック・エンジェルズ』

西洋文明において、善と悪、という対立軸は、自明のものと、受け取られる。 アニメの、ポケモン、がアメリカにおいて、さまざまにストーリーを変えられて放送されたというのも、もっと、善悪が分かりやすいように「しなければならな」かったからと言われてい…

太田尚樹『東条英機』

東条英機といえば、戦中末期、ほとんどの、要職のトップに君臨した、他の国々の人々のだれもが、日本の「独裁者」と思っていた人である。しかし、この本を読むと、えんえんと書いてあるのが、いかに彼が「凡庸」であったか、である。 この違いはなんなのだろ…

米原謙「日本ナショナリズムにおける"アメリカの影"」

とうとう、アメリカの大統領、オバマ、が日本に来る。 その意味はなんだろう。 vvこれは、小泉ブッシュの蜜月関係の時期に、ブッシュが来るというのとは、まったく意味が違う。こんなものと比較するな、というくらい違う。 それは、オバマ、という久しぶりに…

「紙屋悦子の青春」について

もちろん、この、戦中日本の「構造」については、多くのことが語られてきたし、実際そこには、重要な視点がある。 しかし、私は、そういうものに、ほとほと、あきてきたし、根本的に「違う」んじゃないかという思いが、どうしても、ふつふつと湧いてきてしま…

月の思想

私はここに、「月の思想」を立ち上げる。 月、とは何か。 月とは、太陽で「ない」ものである。 太陽神、としての、アマテラス、は、現前たる存在として、この日本を、かく、あらしめてきた。 雨の日も、風の日も、嵐の日も、いつも、その後には、太陽は、そ…

菊澤研宗『戦略の不条理』

「経営学」、というものが、長く、ビジネススクールなどで、教えられてきた。 (例えば、古典的なその思想を代表する人として、著者は、エリック・ウィンスロー・テーラーの名前をあげる。) この、アメリカや日本における、高度成長期に発展した、(工学的…

「DARKER THAN BLACK」

今、第二部が始まっていますね。 今回、ShowTime で、「第一部 黒の契約者」を見ている。 だいたい、第15話以降を、ちょっと見ようとしているところ。 ストーリーについては、wikipedia がよくまとまっているんじゃないか。 舞台は、ほぼ、現代の、東京(…

ご批判の応えにかえて

「ハウジングプア」という本の紹介のところで、一つ、コメントがありました。短かいものですが、それをみて考えたことだけを書いておきます。 まず、このコメントは、たいへんバランスのとれた、正確な記述をしてもらえたと思っています。正直に言いまして、…