2011-01-01から1年間の記事一覧

ジグムント・バウマン『コラテラル・ダメージ』

NHKの「追跡!真相ファイル」は、なかなか、衝撃的な構成で、大衆に影響したのではないか。私には、意味の分かりにくい部分もあったが、それなりに、製作者側の意図は理解できた。 しかし、それ以上におもしろいのは、ネット上の御用学者たちの、ヒステリ…

Rie fu「あなたがここにいる理由」

私が東京で暮らし始めて、どれくらいになるのだろうか。 どうして東京で暮らしてるんだろう? なんで、私は「ここ」にいるんだろう? よく考えると不思議だ。 別にそうしなくても、よかったのだ。 もっと違った選択があったはずなのだ。 届かない そうじゃな…

宮台真司『愚民社会』

(大塚英志との対談。それにしても、クリスマスに私は何を書いてるんですかね orz。) 結局のところ、日本の「エリート」問題というのは、今後の「ユートピア」において、どのようになっていくことが望ましいのだろうか。 今までのように、日本を背負ってい…

「一般意志2.0」はユートピアか?

ここのところ、何回かこだわって書いてきたのだが、結局のところ、東さんという人の「一般意志2.0」という本が、なにが言いたいのか、または、どういった文脈でつぶやかれているのかが、今一歩分からなかった、というのが印象であった。 著者の論点のポイン…

ジェフ・ジャービス『パブリック』

この本を、どういった視点で読むか。この本は、一言で言えば、掲題の著者がディープなフェースブックやツイッターなどのSNSユーザーで、その有用さを理解するがゆえに、いわゆる「プライバシー規制」の法的な動きと、そういったものとの対立を、SNSユ…

千葉慶『アマテラスと天皇』

ここで、まったく逆に考えてみよう。徹底的にユートピアを実現しようとするなら、どういったものになるのか、と考えてみよう。 しかし、急にこんなことを言われても、ちょっと困ってしまう。毎日をギリギリで生きている私たちにとって、急に、ユートピアを考…

ジョン・グレイ『ユートピア政治の終焉』

掲題の著者のような、人が一般にどのように受け取られているのかを私は知らない。知らないんですけど、この掲題の本のようなものを、「哲学」と呼ぶべきなんじゃないか、と思うんですけどね。 どうも日本の哲学的な言論をする人たちって、いわゆる「哲学研究…

マンガ「進撃の巨人」の巨人

マンガ「進撃の巨人」の最新刊を読みながら、この巨人という存在がなんなのかについて、ここまで読み進めて、いったん考えてみた方がいいのかもしれないとは思った。 その鍵となるのは、今までの文脈から、間違いなく、エレンという自ら巨人となる能力をもつ…

BUMP OF CHICKEN「車輪の唄」

人は、超能力をもっていない。だから、だれかになにかを伝えたかったら、言葉で相手に自分の要望を伝えなければならない。なにも言わなければ、その人がなにかを言いたいと思っていても、だれにも分からない。 まあ、当たり前のことであるが、BUMP の歌にお…

日本社会の歴史の中でのヤクザという存在

この前まで、いろいろ、「一般意志2.0」という本について書いてきたが、最後に素朴にその本について思ったことを書いておきたい。 この本は、「政治の危機」と書き、たしかに、それらしき例(国の借金や税金)について、その名前は出てくる。しかし、全体と…

雇用と人事

videonews.com で毎週、無料でアップされている、原発の審議会が、ある意味、非常におもしろい。というのは、これが「一般意志2.0」の典型だと思うからだ。これほど分かりやすい例は、ないんじゃないかと思うのだ。 ところが、だれも注目しない。 新聞もテレ…

学問への疑問、大学への疑問、医学界への疑問

正直、日本全体をなんとかしなければならない、とか、日本の「中心」東京について語ることが、日本について語ることになる、とかには、うんざりきている。 日本全体がどうのこうのと語ることに、なにか意味があるのか。例えば、いい例が、福島第一の事故だろ…

民主主義は可能か?

この前ふれた 一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル作者: 東浩紀出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/11/22メディア: 新書購入: 14人 クリック: 581回この商品を含むブログ (164件) を見る という本についてですが、この本は多くのポイントや論点がある…

修正主義

日本の数学者で京大の先生だった森毅の本に、間違ったっていいじゃないか、というのがあったのを記憶している。 じゃあ聞こう。 本当に「間違っていい」のか? 森さんの頭のイメージにおいて、数学教育があったはずだ。そのように考えたとき、間違えることは…

福岡伸一『世界は分けてもわからない』

私があまり好きになれない考え方というのは、自分を俯瞰的な立場に置き、全体を見渡している「つもり」になって、発言するようなスタイルと言えばいいだろうか。 結局、一人一人が、なにを考えているのかなんて分からない。分かると思って、振る舞っても、な…

東浩紀『一般意志2.0』

今回読んでみて、特に、後半が非常によかったですね。この「そっけなさ」が。なんというか、この単行本化の直前のギリギリで、即興で、今、その場で思いついたことを、たんたんと書いたという感じで、むしろ、こういう「今」思ったことを「書く」というスタ…

原武史『滝山コミューン一九七四』

近年読んだ本の中では、一番じゃないだろうか。 あらゆる、現代の諸矛盾を一瞬で解決する方法がある。 全体主義 である。前回、私は法は守らなければならないものなのか、と問うた。しかし、これはどこか「自明」なことを語っているよう多くの人には思われた…

法を守れと最初に言った人は誰か?

もし法なるものを、その共同体に所属している構成員が、守らなければならないものであるとするなら、どういう事態になるだろう。 まず、最初に必要になることは、その法を守らなかった人を発見するシステムが必要になるだろう。守らなければならないと決めた…

津田倫男『日本のマイクロファイナンス』

みんな、だれでも思うことは、お金持ちになりたいなあ、ではないだろうか。ところが、これについては、実は、だれでも実現できる。つまり、お金を 借りる。 借金すれば、だれでもお金持ちになる。つまり、だれだって裕福な暮しができる。しかし、多くの人が…

デバッグ的生き方

私たちは、だめ、である。 私たちは、だめ連、である。なんちゃって。なにが言いたいかというと、私たち自身の能力には、限界がある、ということである。 熱力学第一法則によって、私たちは、どんなに体をフル回転させても、使えるエネルギーには限界がある…

なぜ近年の文学作品は「おもしろくない」のか

近年、文学なるものが、どうも、おもしろくない。じゃあ、過去において、おもしろかったのかと言われると、答えに困るが、とにかく、おもしろくないなー、という感じなのだが。 なぜなのかな、と考えてみると、逆に、この人は何が書きたいのだろう? と思う…

加賀考英「尾崎豊の「遺書」」

尾崎豊が自殺してから、20年が経つという。それだけの年月が流れてから、今、こうやって、冷静に彼について語ることは必要なことなのかもしれない。 尾崎豊はいわゆる、アイドルだったと言えるだろう。もちろん、そのありかたは、多少変則的だったとしても…

子安宣邦『思想史家が読む論語』

TPPの議論をどのように受け止めたのかで考えるなら、それは一言で、 世界市場 化といえるだろう。両雄相並び立たず。あらゆる「同一」性は、同一の「競争」によって、優勝劣敗を決せられる。一つのセービスを提供するのは、世界に一つでいい。 例えば、今…

売国奴が一番儲かる

私たちを驚かせたのは、TPPをめぐって、日本中から、「売国奴」があぶりだされたことではないだろうか。 まさに、踏み絵であり、橋頭堡になった。 経済とは「差異」のことである。自分は売りたい、相手は買いたい。またはその逆。こういったシチュエーシ…

本当の経済学者は計算(シュミレーション)する

さて。TPPによって、ある契約が結ばれたとき、日本国内はどうなるのか。 それは、少しも難しいことではない。 一個一個、シュミレーションをしてみればいい。 TPPによって、アメリカの、ある押し付けに屈したら、日本はどうなるか。 今の職業を止めな…

タイラー・コーエン『大停滞』

近年のTPP論議の不気味さは、いわゆる、経済学「優等生」たちの「模範的回答」が、アメリカ側の要求の丸飲み、だということだろう。 アメリカ側の、市場解放の要求に、優等生たちは、「原則論」から、言われるがままに行うことを、当然のこととしている。…

倫理的な通貨

福島第一原発の事故を契機にして、日本社会の ガン があぶりだされた。 つまり、「原発賛成派」という、とてつもなく、やっかいな「ガン」。 原発が日本を二分する。原発こそが、踏み絵。敵と味方を分ける、橋頭堡になる。 私は、福島第一原発の事故から、貨…

冨谷至『中国義士伝』

日本の敗戦を特徴づけたものとはなんだろう。間違いなく、それが、「義士」的な傾向を色濃くもったことであっただろう。 日本のある軍人が死ぬ。彼は、赤紙で徴兵されたのだろうか。なぜその人は死んだのか。なぜその戦場で死んだのか。しかし、その死に方は…

國分功一郎『暇と退屈の倫理学』

日本の歴史において、応仁の乱ほど、決定的に日本を変えたものはないと、たとえば歴史学者の内藤湖南は言う。この時代が100年近く続いたのだろうか。100年といえば、2、3世代をまたがって、続いたというのだから、なんとも、すごい時代だ。いろいろ…

専門家の専門化の時代

いったい、世の中に専門化なるものは、いるのだろうか? 私はそれは、非常に疑わしいと思っている。つまり、自分を「専門化」だと、自称している連中の、ばけの皮を剥がしてやりたいと思っている。 まず、専門家だというなら、どんな論文を書いたのかを提出…