資本主義の終焉

今回のイギリスのEU離脱の国民投票については、最初に日本の株式や円高が進んだこともあり、日本の世論がなぜか悲観的になった、というのが特徴に思う。
特に、非常に「はしゃいで」いたのが、日頃から、日本の「ポピュリズム」に警鐘を鳴らしている「エリート主義者」たちで、だから、民主主義は危険だ、エリートに政治を任せるべきなんだ、みたいな議論であったように思う。
しかし、冷静になってこれまでの「いきさつ」を振り返ってみるなら、むしろ、そういう一時の日本の株価が乱高下したから、世界が転覆した、みたいな感情的な議論は馴染まない、という印象を受ける。
ここに明らかに存在しているのは、ヨーロッパの「移民問題」なのだろう、というのは間違いなくあるし、それはアメリカのトランプ現象においても、見られている、と言わざるをえないんじゃないのか。先日、映画「帰ってきたヒトラー」を見たが、多くの右寄りの市民との「会話」が映像化されていて、興味深かったが、みんな言っているのが、移民が多すぎるんじゃないのか、ということであった。
今回のイギリスの選挙結果は、間違いなく、キャメロン首相の「信任投票」の色彩があった。明らかに、キャメロン首相は、国民をなめていた。非常に不快なのは、彼は、どうせ国民はEU離脱なんて選べるわけがないと、国民を

  • 試す

ような行為をしたことであろう。ものすごく「挑発的」であった。彼は国民を恫喝した。こんなことをしたら、イギリスの金融センターとしての地位が地に落ちて、国力を失う。しかし、よく考えてみてほしい。イギリスの金融センター、一体、国民に

  • トリクルダウン

していたのだろうかw ほとんどを、一部の「金融貴族」たちで、エンクロージャーしていて、ほとんどの労働者国民に還元などされていなかったのではないのか。
ようするに、キャメロン首相は、ふざけた話であるが、EU離脱の信任投票を行っておきながら、EU離脱が選ばれた場合の、それ以降の「プロセス」について考えていなかった。だから、彼は「辞任」をしたわけだが、むしろ問題なのはこの

  • なにも考えていなかった

という「無能」さが、今の世界的な「不安」を起こしている。なぜ彼が考えていなかったというなら、そもそも、この国民投票が、

  • 自分たちエリートが「優遇」されることは「しょうがない」

ということを、国民に「信任」させるためだった、ということが明確に透けて見えていたわけであろう。
キャメロン首相は、そういう意味で、史上最悪の「ゲス」な首相だった、ということになるであろう。
こういう、国民を「自分」の正当化のために使う政治家は、国家を滅ぼす。
しかし、なぜキャメロン首相は、そういった行為を行わざるをえないところまで追い詰められたのか?
そこには、EUのジレンマがある、と言わざるをえない。
ドイツなどが行っている、多くの難民受け入れは、それによって、国家が「安い労働力」を確保できる、という実益を意識している。おそらく、ドイツなどはそこに活路を見出そうとしている。
しかし、そういった方向をドイツが選ばざるをえなくなっている理由には、現代の

  • 移動の自由の獲得

が、つまり、テクノロジーの進化が間違いなく影響をしている。今、何が起きているのか? それは、アフリカ、中東の「貧困層」のヨーロッパへの「移動」である。彼らは、なんとかして、船なり、陸路なりで、ヨーロッパに一歩でも、入れたら

  • ヨーロッパ人に「なれる」

という「ユートピア幻想」をもっている。そして、それを実際に可能にする、船、車などが、比較的安価に入手可能となった今。これらは、ほとんど、やったかやらなかったか、の違いでしかなくなった。
そういう意味では、今。世界は、

の時代に入ってきた。これは、ある種の「共産主義革命」なのだ。
今、世界中で、発展途上国から、先進国への「移住」運動が起きている。なぜ起きているのか? それは、中東やアフリカが、まさに、イギリスの金融センターに代表されるような、先進国の「資本」とグルになっている独裁者によって、完全に囲い込まれているから。つまり、中東やアフリカでは、いくら「国家」の一部が儲かっていても、それが、国民に還元されない。国民の利益にならない。一部の冨を独占している

  • 1%

がイギリスの金融センターの「ハイエナ」たちとグルになって、国家の冨を国民に渡らないようにしている。
だったら、どうするか?
中東とアフリカの、国家に見捨てられている「全て」の人たちは、全員、ヨーロッパを目指せばいい、ということになった。まず、何よりも優先すべきことは、ヨーロッパに

  • 一歩踏み入れる

ということになった。何よりも優先されるべきことが、それになったのだ。
しかし、である。
ちょっと、立ち止まって考えてみてほしい。こういうことは、例えば、日本であれば、ほとんどの田舎の子どもたちが、就職先を求めて、東京に上京してきている今の状態と、どこが違うのか、と思わないだろうか?
こういった人の流動性を止める方法はないのではないか?
そういう意味では、これは一種の「世界同時革命」だと言っていいように思うわけである。
例えば、そもそもEUとは、なんなのか? そう考えてみると、EUは「国民主権」ではない。一部のエリートたちが「官僚的」に行っているに過ぎない。では、そういったEUの運営には、どこまで「正当性」があるのだろうか?
おそらく、同じようなことを「狙って」いるのが、TPPであろう。TPPは、アメリカと、EU以外の太平洋の国々が、なんらかの「経済圏」を作ることを目指している組織で、確かに、お互いの国々の関税の優先的な優遇を意図しているわけだが、おそらく。TPPの運営の一番のポイントは、このTPPが

ということを目指しているという意味で、著しくEU的な方向を意識した、エリート組織を構想しているのであろう(いずれ、ユーロに代わる、なんらかの通貨圏を構想してくるかもしれない)。
もしも、ドイツのように、安価な労働力の流入を、経済的な国力の源泉として、どこまでもウェルカムな政策を選択するなら、結果として、ヨーロッパは、ほとんど全ての、アフリカと中東の貧困層を、

  • 受け入れなければならない

ということを結果することになり、彼らを国民経済の「福祉」で支えなければならない、ということになるであろう。
つまり、ここには、二つの「対立」する<利害>があるわけである。

  • グローバル企業 ... 海外の安い労働力を使いたい。高い賃金ばかり要求する国民は、労働力としてコスパが悪い。
  • 地域共同体 ... 企業が安価に使った海外労働者の福祉を、なぜか多くの失業をしている、民族国民が今まで汗水たらして働いて払ってきたお金で賄う、ということになっているが、それによって割をくっているのは、地域共同体に昔から住んでいる人たちなんじゃないのか?

ようするに、グローバル企業は、税金を払わず、世界中から安い労働力を探して、かき集めることにしか興味がない。そうすると、何が起きているのかというと、

  • 企業 ... 公共部門に税金を払わない。どこまでも、内部留保を増やしているが、彼らが使う労働者は、低賃金でも文句を言わず働く、辺境の田舎の安い労働力なので、一切、地元の共同体にお金を落とさない。
  • 地元の共同体の住民 ... 消費税によって、骨の髄まで税金で絞られるけど、そのお金は、全て、企業が安価で雇うための労働者の「福祉」に使われて、自分たちに返ってこない。

まあ、そりゃそうですよね。

  • 1%対99%

なんですから。ようするに、これをイギリス国民は拒否したんでしょ。キャメロンに「不信任」をつきつけた、というのは、こういうことなんでしょうね。
イギリスの金融センターの「外」は、アナーキーな「自由」を保障することによって、イギリスの金融センターの大企業が、世界中の市場を「独占」することで、膨大な儲けを拡大する。しかし、そのためイギリスの金融センター以外の、中東やアフリカは、ぺんぺん草も生えないくらいに、国民は貧困のどん底に沈んでいながら、なぜか、国家の頂点にいる一部のエリート官僚は、儲かっている一切の利益を独占している。世界中の冨は、ほとんどの人には関係ない。イギリスの金融センターと独裁国家のエリート官僚の、一握りの連中によって、独占されてしまっていることによって、少しも、世界中に冨が還元されていかない。
まあ、そうである限り、アフリカと中東の全ての貧困層は、ヨーロッパに一歩でも踏み入るために、

  • 目指す

ことになるのでしょうから、まあ、彼らを食べさせなければならない、となるのは当然でしょうけど、一体だれのお金で彼らを食べさせるんですかね、
まあ、やっぱり、資本主義って、なにかを間違っている、ということなんじゃないですかね。どう考えても、なにかの矛盾があるというふうにしか思えない。このまま資本主義は続けられるのだろうか? なにか、資本主義の終焉が近づいているのが感じられますよね...。