『論語』

私が読んだのは、以下である。どちらかというと、朱子学的な翻訳ではないもので、さまざまな翻訳の中で一番自然に思えるもの、また、場合によっては、新訳を提示してもいる。基本的に、一つ一つの節ごとに、その内容の解説があり、翻訳者の解釈を一つ一つ理解しながら進める。正統的な解釈というより、この翻訳者の現代的な最新の研究成果として、孔子やその時代を理解するテキストとしてみるのが正しいのだろう。
当時、どのように学問がなされていたかについて、以下の注がある。

書物は、木や竹の札をつづり合わせて、一般社会に普及しなかった。先生から「詩経」「書経」などの古典を読んでもらい暗唱する。礼・楽・射・御・書・数など、貴族社会の行事における正しい礼儀作法の口伝を受ける。

印刷技術がないだけでなく、紙もない。それだけに、文字をしるされたものも、ほとんどない。上記では、先生に読んでもらって、暗唱するのが、普通だったとある。まったく、想像を越える。また、論語において、音楽にふれている個所が実に多い。

子與人歌而善、必使反之、而後和之/子、人と歌いて善きときは、必ずこれを返(くりかえ)さしめて、而(しか)して後これに和す。/先生が他人といっしょに歌っていて、いい曲があるとかならずもう一度歌ってもらい、これに唱和された。(述而篇 第三十一)

論語〈1〉 (中公クラシックス)

論語〈1〉 (中公クラシックス)