海外古典文学

カール・マルクス『ルイ・ボナパルトのブリュメール一八日』

マルクスの共産党宣言は、今、読みかえすと、最後の何行かは、たしかに、ブルジョア階級の消滅を予言しているという意味では過激であるが、全体のトーンは非常に抑制的で常識の範囲の話しかしていないように思える。例えば、 諸君は、われわれが私的所有を廃…

ウィリアム・モリス「民衆の芸術」

東京で仕事をしていると、なんというか、時々、変な気持ちになることがある。 たとえば、それは、西武池袋線を利用することのある人なら、理解されるであろう、あの、銀河鉄道999、のペイントについてである。もちろん、「広告」ということであるなら、他…

フォークナー『八月の光』

久しぶりに、掲題の本を読んでみた。再読であるが、以前読んだのは、果して、いつだったのだろうか。忘れてしまった。まだ、社会人になっていなかっただろう。その頃の記憶もあまり残っていない。ただ、印象的だったことは間違いない。 (そもそも、フォーク…

トゥキュディデス『歴史』

また今年も、終戦記念日の8月になろうとしている。そして、8月は、お盆の時期でもある(ミシオちゃんの両親が「彼女の元に」帰ってくる時期だ)。なぜ、日本は8月に降伏したのだろう。もしかしたら、こんなお盆の先祖の意志がそこにはあったのかもしれな…

クライスト『ミヒャエル・コールハースの運命』

自分は、世の中に興味をもっているのだろうか。人間をおもしろいと思っているのだろうか。この世界にワクワクしているのだろうか。そう問われると...、かなり疑問になる、ときがよくある。全然、前向きじゃない。全然、「肉食系」じゃない。 本当に、そうい…

アナイス・ニン『アナイス・ニンの日記 1931-34』

人類が生まれてから、最大に「重要な」女性を、一人だけあげるとするなら、間違いなく、アナイス・ニン、であろう。 ボーヴォワールは、ある年代の女性に、ショックを与えたが、こちらは、むしろ、たかだか、「時代的な存在」にすぎない。まったく「足元にも…

『バガヴァッド・ギーター』

岩波文庫の、上村勝彦の翻訳。 最近、以下のような新刊を読んだこともあって、いろいろ考えさせられた。 『バガヴァッド・ギーター』―神に人の苦悩は理解できるのか? (書物誕生―あたらしい古典入門)作者: 赤松明彦出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/12/…

ウィリアム・モリス『ユートピアだより』

ウィリアム・モリスというと、芸術の分野で、アールヌーボーだったかな、いろいろ有名な人のようでね。 彼が、社会主義的な、ユートピア社会を描いたのが、この小説である。 作品としては、やっぱり、ユートピアなので、素朴な描写が多い。小説としては、深…

毛沢東『毛沢東語録』

60年代前半から、70年代前半までは、日本は、学生運動の時代であった。大学生や、一部の高校生が、毎日のようにデモを行い、校舎にたてこもって、紛争を続けていた。授業などろくになく、新入生も入らなかったところもあるのではないか。 しかし、同じよ…

『論語』

私が読んだのは、以下である。どちらかというと、朱子学的な翻訳ではないもので、さまざまな翻訳の中で一番自然に思えるもの、また、場合によっては、新訳を提示してもいる。基本的に、一つ一つの節ごとに、その内容の解説があり、翻訳者の解釈を一つ一つ理…

エミリ・ブロンテ詩集

エミリ・ブロンテとは誰か?私もなにか知っているわけではないが、あの「嵐が丘」 嵐が丘 (集英社文庫)作者: E・ブロンテ,永川玲二出版社/メーカー: 集英社発売日: 1979/01/01メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る を書いた女性で…

レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』

ごぞんじ、探偵フィリップ・マーロウのハードボイルドの中の、代表作。中学の頃に読んで、内容は忘れた。長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))作者: レイモンド・チャンドラー,清水俊二出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1976/04/01メディア: 文庫…

C.ディケンズ『骨董屋』

ディケンズ作品の中の、異色作であり、傑作である。確か、最後の、少女が亡くなる場面は、感動的であるのと同時に、興味深くある。 朝になり、悲しみの対象についてもっと冷静に話せるようになったたとき、彼らは、彼女の生命が終ったときの姿を伝えられた。…

姜ハン『看羊録』

豊臣秀吉が、朝鮮侵略をしたとき、捕虜として捕えられ、日本に連れてこられた、儒者の、その時の記したもの。その頃の日本人、また、その頃の日本を朝鮮がどういった知識があったか、こういったことがよく分かる。なによりも、姜ハンが、日本の侵略に対して…

フランツ・カフカ『アメリカ』

カフカといえば、『城』であるが、この作品も、かなり前であるが、おもしろく読んだ。 失業していたか、という質問にたいして、カールは、あっさり一言のもとに、「そうです」と答えただけだ。「最後に君が勤めていたのは、どこでしたか」すると、紳士はそう…

ドストエフスキー『罪と罰』

ドストエフスキーの、『罪と罰』を、最後まで、読み終えたのは、比較的最近だったと思います(『ナニワ金融道』の青木雄二などが、絶賛しているのは、知っていましたが)。今、思うのは、やはり、今までの、世界の文学の中で、一冊を選ぶとしたら、私は、こ…

『墨子』

まだ、読んでいる途中。53編の内の16編を収録。儒教では、「正統と異端」で、他の諸子百家を、異端として無視するが、内容は、儒家を補うものなのでしょう。白川静『孔子伝』、では、墨家は、家内制手工業の労働階級の、プロレタリアートを代表する階級を反…

『荘子』

まだ、読んでいる途中だけど、以下に引用したところなどから、まず、プライバシーということを考えた。 君は、あのカマキリというものを知っているかね。車が通りかかると、そのヒジを怒らせて、その車輪めがけて立ち向かおうとする。(中略)君はまた、あの…