田岡俊次『北朝鮮・中国はどれだけ恐いのか』

あいかわらず、

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で紹介されていた本。この本ではあまり主題になっていないんだけど、上記インタビューの後半で、国家の話がある。軍事の面からみても、今後、国家の存在は、どんどん薄くなるのではないか、と。
もともと、国家があって、軍隊が他国を侵略するのは、農地の拡張が目的であったが、これだけ、グローバル経済で各国が相手の借金をかかえこんで、各国の企業がそれぞれの国で、あらゆる活動を行っている。こんな状態で、戦争なんてできないでしょう。ちょっと、あまり覚えてないけど、そんな話だったように思う。
中国について、こんな話が書いてある。

中国の伝統的体制では選挙はなかったから、民衆の声を反映できず、王朝末期には不満が蓄積して全国的暴動に発展し、政府が転覆することを繰り返してきた。それでも一つの王朝が300年近く続いた期間が長い理由は、民衆が行政に不満を持つと集団で役所に押しかけ、役人はそれを鎮めるため妥協案を示す、という慣行があったためらしい。これは「民変」と呼ばれ、明代末期には蘇州の職工が暴動を起こし商税の廃止を勝ち取った例もある。好意的に言えば「押しかけ形直接民主主義」だ。旧ソ連、東欧、北朝鮮など全体主義国の民衆暴動は一大事で隠すべきものだが、今の中国では日本の労働争議のように一つの社会現象と見ているらしく、05年には約8万7000人の暴動が起きたことが公表されており、「その99%が庶民の権利侵害に対するものだった」、と公安当局者が公言している。まるで半ば、「公認の暴動」で、「民変」の伝統も復活した観がある。

日本人は、中国をいろいろ知っているつもりになっているけど、陸続きでもないから、中国で実際に生活していた日本人って少ないんですよね。単純に暗黒の大陸だとか言っていてもしょうがないんで、その土地の生活が長い歴史の中でされてきているんだから、まずそこを真摯に見ないとしょうがないんですね。分かったことを言っていてもしょうがないんじゃないですかね。
だから、中国をまず、ひとつのネーションと考えるには無理があるんですね。そう考えるにはでかすぎるんですね。いろいろな民族がいるし、自治区も多いですし。連合国家みたいなものですね。まず、この視点をとらないと。
あとは朝鮮半島ですね。なぜ、朝鮮半島は、冷戦もはるか昔に終わっているのに、統一しないのか。

  • 東西ドイツの人口比は西が約6036万人、東が1666万人で、3.6対1。約4人の西独人が一人の東独人を助ける形だったが、当時韓国は人口4376万人、北朝鮮が2279万人で、人口比は1.9対1。韓国人約2人で北朝鮮人1人を支えなければならず、それだけでも重荷はドイツの2倍。
  • 統一前東ドイツの1人当たりGNPは6000ドルないし1万ドルと推定され、91年当時の韓国の1人当たりGDP約6300ドルと少なくとも同等だったが、北朝鮮は飢餓の淵に立つ極貧困で、吸収合併する側の負担は大きい。
  • 統一前の西独は対外純債権3584億ドル(90年)を持つ世界最大の債権国だったが、韓国は当時まだ債務国だった。統一のコストは韓国経済企画院の92年の研究では280兆ウォン(今日の為替レートで36兆円)、94年の大統領諮問機関「21世紀委員会」の見積もりでは「4480億ドルないし2兆2000億ドル(約53兆円ないし260兆円)」とされる。2005年の韓国GDPは約93兆円だから、統一で韓国経済が共倒れになる危険がある。

最近、韓国のニュースを見ていて驚いたことがあるんですが、ハンドボールの中東の審判があまりにひどいということで、日本と韓国が国際組織に提訴したら、アジア組織が制裁をかけてきた。それで、国際組織は、日本と韓国の訴えを認めて、予選の遣り直しの結果、韓国はオリンピックに行けるようになった。そしたら、韓国がなにをやったかというと、アジア連盟の制裁を受け入れる(罰金を払う)と言い始めたんでね(最終的に払わなかったようですけど)。なんか、こういうところがあるんですよね。そのときの理由としては、あまり中東の国々ともめるのは得策じゃないとかだったけど、なに言ってんだ、でしょう。オリンピック行けるとなったら掌返して。アジア連盟が間違っていると思ったから、その上の組織に訴えたわけでしょう。しかし、アジア連盟はそれを認めていないから、日本と韓国に制裁すると言っているわけで、そんなことやってたら、正義もなにもないでしょう。日本の関係者も開いた口がふさがらなかったようですけど。
韓国っていうのは、そういうところがありますよね。韓流ドラマ見ててもそうですが。なんか高尚な「理」がどうとか言ってるかと思うと、俗世のことは低級なんだから他人騙しても自分が幸せになっとけばいいんだみたいな、一種の合理主義ですね。
私も、それほど歴史は知らないけど、韓国の近代化が比較的成功してきたのも、最近なんですよね。あいかわらず、徴兵の義務。兵役拒否すると、兵役と同じだけ、牢屋に入れられるんだそうだ。あげくのはてが、こうだ。

米国は本来、「2012年に戦時の軍の指揮権を韓国に渡す」としていたのを「2009年にする」と突如前倒しして韓国を困惑させた。米軍が韓国軍の指揮下に入ることはまず考えられない以上、これは韓国からの米陸軍部隊の全面撤退、もしくは一部残るとしても朝鮮半島での戦闘には加わらない、ということを意味する。12年にそうなると考えて準備してきた韓国にとっては、3年早まるのは青天の霹靂だったろう。韓国はベトナム戦争でも5万人もの大兵力を派遣し、4400人余の死者を出したが、アメリカが失敗すると「やりすぎて住民の反感を招いた」と米メディアに非難された。「国際関係では感謝は意味のない言葉」と言われるが、それを証明したような形となった。

日本と韓国は、アメリカにとって、ポジとネガのようなところはあるから、なんとも言えないけど。やっぱり、韓国は国が安定してきてまだ日が浅いんで余裕がないんだと思うんですね。民族がどうこうというのはつまらないけど、まず、韓国の人たちが、自分のふところのお金の計算ばっかりやってんじゃなく、なにが正義かという原点に返ってものを考えるようにならないと、さらにその後の歴史に長い禍根を残すんじゃないですかね。今のままじゃ、もうほとんど言ってることが分裂症でしょう。
まあ、ほかの国のことなんで口出しすることじゃないけど、今、日本に多くの韓国の方たちが働きに来ていますよね。話してても、ちょっとなさけないですよね。今、統一されたら、北朝鮮の貧乏人の世話をしなきゃなんなくて大変だから、今は、やめてほしい。そんなこと言っている間に、北朝鮮の経済は悪化の一途でしょう。そりゃ好きなだけ日本に働きに来てもらってくれてありがたいけど(逆に幾つかの分野では、日本より韓国の方は国際競争力のある分野も多いみたいですが)、稼いだお金を統一のために使えばいいんじゃないですかね(朝鮮半島の統一には、日本も歴史的な経緯があるから、いくらでも経済支援はするでしょう)。別に統一だけじゃない、中国なみに北朝鮮を経済発展させる戦略でもいい。韓国には、確か、かなりの高校で選択で、日本語の授業があるそうじゃないですか(中国語と日本語とドイツ語の選択だったかな)。過去のしがらみを乗り越えて、日本語を選んでもらい、日本に来てもらえるなんて、ありがたいの一言だけど、それが、日本と一緒にアメリカに尻振って、ってだけじゃね。

北朝鮮・中国はどれだけ恐いか (朝日新書 36)

北朝鮮・中国はどれだけ恐いか (朝日新書 36)