お盆

アニメ「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」の第6話において、孤児のミシオ、7歳は、市場が出るたびに、ある箱を探しに出かける。それは、亡くなった、母親が大事にしていたものであった。父親を早くに戦争で亡くし、母親はある村の疫病で亡くなる。そのとき、家財と一緒にもって行かれたという。
ミシオは、教会の修道女のユミナに、髪結いをされるのを嫌がる。髪結いは彼女のお母さんがいつもやってくれていた行為だったからだ。ユミナはミシオの母親になりたいと思っているし、ミシオもユミナを気になっているのだが、素直になれない。
(このアニメの主人公の)カナタと一緒にいるとき、ミシオは母親が大事にしていたその箱を、たまたま見つける。ミシオは、それを、ユミナにもっていてほしいとお願いする。ミシオは、病が進み、ミシオの髪結いができなくなった母が、これからは、ミシオのことを一番大事にしてくれる人に髪結いをしてもらいなさい、と言っていたことを思い出し、ユミナに髪結いをお願いする。
このアニメは、近未来でありながら、さらに、軍隊、さらに、戦災、戦争の悲惨さを描く。戦争は、多くの人々に深刻な認識を強いる。ついさっきまで、一緒に力を合わせて、がんばっていた、他人思いの、なんの罪もない優しい同僚が、「なんの意味もない」流れ弾にあたり、自らの血にまみれ、どんどん青い顔になって、亡くなっていく。
特に悲惨なのは、その子供たちであろう。物心のつきはじめて、これから、一杯甘えたい子供にとっての、突然の親の死は、なかなか受け入れられないものがあるだろう。ミシオにとって、唯一の救いは、母親が、疫病にかかってから、亡くなるまで時間があったことだろう。その間、母親は、ミシオに多くのことを語ったはずだ。人間は時間的存在である。時間こそ人に多くのことを気付かせる。
第7話が、精霊流しの話だったのは、そういう意味でも、うなづける。お盆、の時期になると、祖先の霊は、私たちの元へ帰ってくる。もちろん、ミシオの父親も母親も「ミシオの元に帰ってくる」。送り火の一種である、燈篭流しにおいて、燈篭を作り、火を灯し、海に流すことで、帰ってきた、先祖の霊が無事元いた所に戻れるように、送り返すのだ。
ミシオは、手を合わせて、お祈りする。まだ幼く、なにも分からない、ミシオ。彼女は生きなければならない。彼女にとって、両親が大事な存在であればあるほど、ミシオは生き続けて、祈らなければ「ならない」。