広瀬隆さんという人

なぜ、東電の社長は一ヶ月雲隠れしてたのか。普通に考えたら、なんらかの政府からの言質をとったから、東電を潰さずにすむ保証を得たから、でしょう(日本の敗戦での、天皇の動きみたいなものでしょう)。そうやって、国民を人質にとって恫喝してたんでしょう。
たとえば、なぜ、東電はここまで自信たっぷりなのか。

このような原子力災害の賠償責任は、当然のことながら、原子炉を運転する電力会社にある。しかし先の秘密報告書は、原子力災害に対して保険会社がその被害額を支払えるかどうかを検討することが目的で書かれ、結局、それを支払えないことが明白になった。そのため電力会社は、日本国内の損害保険会社などがつくった「日本原子力保険プール」に加盟して、原発一基あたり一二〇〇憶円までしか保険で賠償金をまかなう義務がないということになっている。つまり賠償責任には上限があって、この保険を超える損害に対しては、政府が国民の税金で補償することになっている。

原子炉時限爆弾

原子炉時限爆弾

このように法で、東電を潰さない、と決めてるわけだ。だったら、東電はいくらでも、原発のリスクを考えないで好きなようにできる。どんなに、へたをうっても、国が最後には尻ぬぐいをさせていただきます、と言っているわけだから。
責任を免除しますと、法律で決められている限り、どんなに、今ごろになって、東電の社長が、福島の国民に土下座をしようが、心の中では、舌をぺろって出しているのと変わらないだろう。
おそらく、今回の災害で、日本の電気料金は、世界にまれにみる、空前絶後の、高額料金になるであろう。それと同時に、国策という名の下の、電力地域独占を、さらに強化されるのだろう。
そうでなければ、原発を維持できないなら、それが国策である限り、国家は一蓮托生で、国民を原発と心中させようとしてくるのだろう。それが、国策というものなのだから。
そして、その高額の電気料金がさらに、日本企業の競争力を低下させ、日本という国の急速な黄昏を加速する(たとえそうであっても、日本の個人資産はまだまだ潤沢で、しぼりとれるだけしぼりとるだけで、あと何年かはもちこたえるから、年寄りたちのワンダーランドは逃げ切れる、と)。
たとえば、いまだに、地球温暖化の原因のCO2の排出を抑えるために、原発推進やむなしとか言ってる連中がいるが、どこまで真面目なのだろうか。

無駄な排熱が大都市を中心にヒートアイランドと呼ばれる加熱現象を起こしていることを、多くの読者はご存知であろう。新聞・テレビは、CO2温暖化と、大都市ヒートアイランドをごちゃまぜにしている。気温が高くなると、底意を秘めた「温暖化」という言葉でくくって聞き手がCO2を連想するように誘導するが、まるで無関係の物理的現象である。メディアがこのような表現を使うのは、まったく地球を愛していないし、理科の基本ができていないからである。「CO2温暖化」はビニールハウスと同じ温室効果であるから、地球全体の気温上昇を指すのである。それに対して「ヒートアイランド」は、ストーブの前にいると暑いのと同じような、狭い地域の過熱を指すのである。

二酸化炭素温暖化説の崩壊 (集英社新書)

二酸化炭素温暖化説の崩壊 (集英社新書)

そりゃあ、東京の夏は暑いですよ。でもそれって、普通に考えたら、ヒートアイランドでしょう。東京の夏が暑いから、CO2 の排出が世界中をこれからも、どんどん高温にして、世界中が赤道直下のようになるって、それどんな因果関係ですかね?
以前、クライメートゲート事件というメールで「トリック」がどうのこうの、というニュースがあったが、その事実の真偽がどうのこうの以前に、この機関がどういったところなのかを理解しないと話にならない。

そもそもIPCCは政府間の組織で、参加している研究者はいわばボランティアであって、学術研究連合や国際学会とは性格が全く異なる。またIPCCは独自の調査研究は実施せず、既存の研究成果に基づいて合意を形成し、報告書を作成したということになっている。政策立案者に基づいて合意を形成し、報告書を作成したということになっている。政策立案者向けに作成された報告書にすぎず、学術論文のように厳密な審査を経たものではない。日本では、ともするとIPCC報告書は世界のトップレベルの研究者の意見の一致として受け取られる傾向にあるが、大きな間違いだ。
二酸化炭素温暖化説の崩壊 (集英社新書)

なぜ、放射性物質の危険性が言われるのか。原発は、不安定な原子が、ある刺激によって、他の幾つかの原子たちに「分裂」する現象で生まれる熱を利用する。しかし、原子とは、人間で言えば、インディビジュアル、つまり、もう分けられないから原子なわけだろう。その原子がくっついて、たんぱく質などの分子ができて、それらが人間を構成する。その原子が「壊れる」のだ。普通に考えて、あまり私たち人間が普通に接してきた自然では見られない
エキセントリック
な現象なんだろーな、というのは分かるだろう(だって、こんな現象をだれもが知っていたら、「原子」なんて名づけるわけないですからね)。いろいろ(中性子などの)「やっかいなもの」が一緒に飛び出してくる、ということらしい(ありそうなことだ)。もんじゅなんかになると、さらにそれらを分裂させよう、というのだから、さらに、いろいろと種類まで増えて大量の「やっかい」な中間生成物が、一緒に排出されてくる。これらの有象無象のなんかを、どんな手順で、どんなアプローチで、手当てしていきゃいーんですかねー。わけわっかんない、いろんな種類のが、ぼろぼろでてきて、それぞれ干渉しあって、わけの分かんない反応しっちゃってんでしょーね。

「体外被爆」と「体内被爆」の違いをもう少し説明すると、外から放射線を受ける場合は、放射能被爆量は距離の二乗に反比例する。分かりやすく言えば、近づくほど被曝量が大きくなるという原理がある。距離が半分に近づくと、二乗に反比例するので、二 * 二で被曝量が四倍になる。たとえばプルトニウムという放射性物質アルファ線を出すので、紙一重で止められるが、見えないくらいの一粒でも、それを吸い込んでしまえば、肺にパタッと貼りついて細胞組織に付着する。距離が一ミクロン(一〇〇〇分の一ミリ)単位になるので、二乗すれば二メートルの距離にあった時に比べて被曝量は一兆倍にもなる。したがって長期的な放射能でおそれるべきは、放射性物質が体内で濃縮することである。
原子炉時限爆弾

そういった中間生成物が、原子というインディヴィジュアルを壊して出てくるわけで、あまりに小さく、かつ、壊れたことによるエネルギーを長期に発するので、遺伝子レベルで、生物の破壊が進行するんじゃないか、と。これは、遺伝子操作農作物の議論と同じで、遺伝子が壊されたとき(遺伝子操作も一種の破壊作業ですが)、どういった影響が長期の人間の生殖・遺伝活動に影響がでてくるのか、という観点で、一固体内で収まる話ならまだいいわけですけど、
人間という種全体
の将来への影響(盛衰)を考えている、と。
広瀬隆さんについては、批判もあるようだが、読んでみると、基本的には、多くの有識者と言っていることと、そんなに違わないわけですよね。むしろ、彼の場合は、こればっかりを専門にやってきてるから、逆に、いろんなところへの目配せができてて、この問題の全体像が見える議論になっている。

私が心配なのは、図61に示される子供たちの喘息の増加である。中学生では、三二年間に二二倍にも増えているのだ。
二酸化炭素温暖化説の崩壊 (集英社新書)

タバコより何万倍も危険なものを人類が大気中に排出しているから、喫煙者が減っても肺癌が増加していることは、グラフを見れば一目瞭然である。それを批判せずに、禁煙だけをフステリックに叫ぶ人間こそ、子供たちの喘息を増やしている張本人だと批判しているのだ。その犯人はどこにいるのか。なぜ高速道路沿いの子供たちに喘息被害が多いのか。
二酸化炭素温暖化説の崩壊 (集英社新書)

車の交通事故の問題がよく言われるが、むしろ、排気ガスが子供に与える因果関係なのでしょう。花粉症だって、大きな影響があるんじゃないかとも言われてますよね。
あとは、そもそも、広瀬隆さん自身が、エネルギーやテクノロジーがどういったものであるべきと考えているのか。そういった観点でみると、たしかに特徴はあるようだ。
彼はすべてのエネルギーを否定しているわけじゃない。そもそも、原発が最初に生まれてから、他にさまざまなエネルギーが進歩してきている。

また、天然ガスは可採年数が六〇年とされてきたが、実は地球が内部から生み出すもので、無尽蔵に生産される、という科学的な説も有力になってきたので、業界内部では枯渇説はほとんど語られていない。日本は、天然ガス埋蔵量が二兆立方メートルを超えるとされるロシアのサハリン開発に参加し、大手のガス会社と電力会社が権益を確保してきた。それとは別に、純国産天然資源としてシャーベット状に眠っている純正な天然ガスメタンハイドレードは、日本近海に一〇〇年分も分布することが分かっている。
もうひとつ注目されるのが、クリーンコールと呼ばれる石炭火力の進歩で、石炭の発電効率を上げて、同時に、燃焼による大気汚染を減らすクリーン発電が、現実的に最も急がれている。石炭をガス化できれば、ほぼ一〇〇〇年分ある無尽蔵の資源からコンバインドサイクルができることになる。日本はクリーンコールで世界トップの技術を持ち、さらに開発中である。事実上、日本の発電所では、「CO2減少のための原発」という電力会社の宣伝文句に反して、電源別の発電実績を見ると、一九九〇年度には一〇%だった石炭火力が、二〇〇八年度には二・五倍の二五%にも増えて、天然ガスと並ぶ主力電源になっているとが、ほとんど知られていない。
二酸化炭素温暖化説の崩壊 (集英社新書)

広瀬隆さんの見立てでは、スマートグリッドには否定的になる。なぜなら、どっちみち電気は減衰するため、「無駄使い」が多いからだ。電気というのはそういうもので、むしろ、私たちが考えるべきは、できるだけ無駄なく発生したエネルギーを使いきれるかにかかっている、と(ですから、今のエネルギー問題のメインはここにはない、と)。
電気が向いてるのは、やはりパソコンのような、いろいろな操作がやりやすいものには向いている。というか、これだけの扱いやすさは、電気じゃないと無理。現代分明の便利さをあきらめるならまだしも、そうでないなら、こういった情報操作は、電気とつきあっていくのだろう。
しかし、たとえば、お湯を暖めるだけのことで、電気は、あまりに効率が悪い。問題はエネルギーをどれだけ「無駄」なく使いきれるか、なのだ。

たとえばすぐれたコンバインドサイクルであっても、まだ三分の一以上の熱エネルギーを捨てている。熱から電気を生み出すには、タービン翼が耐えられるかどうかという物理的な限界があるため、どうしても膨大な量の排熱を捨てなければならないのだ。そこで、排熱を捨てずに利用するコジェネの発想が生み出された。コージェネレーション(cogeneration)とは、電気と熱の両方を同時に生み出すシステムのことで、うまくやればこれによってエネルギーの利用効率を九〇%にも高められる。
二酸化炭素温暖化説の崩壊 (集英社新書)

さて、ここまでは家庭の話をしなかったが、家庭用コジェネの決定版と言える発電装置が生まれた。家庭で電気を使うたびにお湯ができる燃料電池である。この名称は、英語の fuel cell が、日本語で燃料電池と訳されてしまったため、電気をためる電池と誤解されるまったく不適切な言葉である。日本ではフュエル(fuel)を燃料、乾電池をセル(cell)と読んできたので、間違いが起こった。フュエルがエネルギー源、セルが小さな箱、という意味なので、実際には、「エネルギーを生み出す魔法の小箱」つまり小型発電機が燃料電池である。
そこでメーカーのトップが一堂に会して、業界用語を統一して、燃料電池を「エネファーム」(エネルギーを生み出す農場)と呼び変えるようにし、二〇〇九年一月に本格発売宣言をおこなった。
二酸化炭素温暖化説の崩壊 (集英社新書)

水素ガスでも、都市ガスのメタンでも、プロパンガスでも、メタノールのようなアルコールでも、家畜の糞尿でも、水素原子を含んでいるものであれば何でもエネルギー源になる。ここから水素を取り出して、陰極に送りこむと、水素原子のプラスの電荷を持った陽子が高分子膜に入ってゆき、マイナスの電荷を持った電子がとり残される。この電子が電線の中を走って、電流が流れるので、パソコンでも、自動車のモーターでも、冷蔵庫・洗濯機・テレビでも、電気製品が動き出す。電子が陽極に達すると、膜を通った陽子も陽極に達して、お互いにプラスとマイナスが再び引き合って、結合しようとする。そこに酸素(空気)を送りこむと、酸素が電子を取りこんでマイナスのイオンになる。その結果、水素と酸素が電気化学的に結合して、静かに発熱反応を起こす。
こうして電気と熱が同時に出るので、貯湯タンクに水を入れれば、電気を使うたびにどんどんお湯ができ、風呂に入り、台所の洗い物ができる。メカニズムは、これだけである。電気エネルギーを使って水を電気分解すると、水素と酸素ができるので、これを逆にした反応だと考えればよい。原理は二〇〇年ほど前の一八三九音という大昔に発見されていたが、その八年前にファラデーの発電法が発見されたため、人類が忘れていたのだ。これは、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物SOx)、放射性物質のような汚染物・危険物が一切出ない。出るのは、水だけ、という完全にクリーンなエネルギーである。
二酸化炭素温暖化説の崩壊 (集英社新書)

原発の原料だって、世界が利用するようになれば、原材料価格はどんどん高額になっていくだろうし、そういう意味で、他の原油となんら違う位相にあるわけがない。だから、問題は地震国日本で、これほどの大型原発が、しかも、地盤ゆるゆるかつ断層の真上で津波のリスクの大きいところに、
大量に
あることであって、日本の原発の技術がなくなったら、国防上どうのこうのって、だったら、原発一基で十分じゃねーのか、と。
広瀬隆さんは、テクノロジーを否定しているわけではない。というか、むしろ、以下のような企業を、ほぼ手放しで礼賛している。

家庭用として現在まで実用化されているのはいま述べたPEM型で、都市ガスタイプではパナソニック(旧松下電器産業)製を東京ガスが発売し、プロパンガスタイプでは三洋電機新日本石油(ENEOS)の合弁会社ENEOSセルテック製を新日本石油が発売している製品が代表的だが、新日赤は都市ガスタイプも発売している。ジャパンエナジーJOMO)、出光、コスモ石油昭和シェル石油なども燃料電池開発に参加している。これらの企業名は何ですか。無知をきわめる二酸化炭素温暖化論者に標的にされてきた化石燃料の会社群なのだ。エネルギー問題のすぐれた最先端の技術的解決に、最も真剣に取り組んで成果をあげたのは、悪者呼ばわりされてきた彼らなのだ。
二酸化炭素温暖化説の崩壊 (集英社新書)

(こんなにも、日本企業はすばらしい、って言い切っちゃってるわけですね。それをどう考えるか。)
このエネファーム燃料電池)ですけど、これを国民がどう考えるかですよね。こういった対抗勢力の台頭が、地域独占
国策電力会社
に危機感をもたらし、その危機感が、さらなる日本中への広告ばらまき、研究費ばらまき、要人接待、を強いる形になっていた。あとは、国民一人一人が決断するか。政治の「誰」が決断するのか。そういった話だけの気もしてきましたね...。