シンプルな「感情」

大阪の橋下市長の今日の会見の前に提出されたレジュメは、ちょっと読むに耐えない痛々しいものであった。
まず、最初に、

から始まる。

このような歴史的文脈において、「戦時においては」「世界各国の軍が」女性を必要としていたのではないかと発言したところ、「私自身が」必要と考える、「私が」容認していると誤報されてしまいました。
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まず、何度も、引用している彼の発言を、再度、書いておこう。

「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命をかけて走っていくときに、精神的にも高ぶっている猛者集団をどこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」
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つまり、もう少し前者の橋下市長の発言に使づけるならば、

  • (どんな時代にも上記の条件が満たされるならば)「軍隊(というもの)には慰安婦精度が必要」なことは誰だってわかる(橋下自身だって当然容認する)

ということであろう。「軍が必要だと思っているんじゃないか(軍に対する推測)」じゃなくて、「必要なことは(軍じゃなくたって)だれだって<(その必要性が)分かる>(つまり、自分だって当然分かる)」と言っているわけである。
今回の、橋下市長の顛末について、もっとも、まともな反応をしていたのは、むしろ、きっこのブログの人なんじゃないか。

本当に「誤報」だと言うのなら、まずは日本の新聞各紙に訂正記事と謝罪を掲載させて、それを日本外国特派員協会での記者会見で海外プレスたちに見せた上で「誤報だった」と説明するのが筋。ただの一紙も記事を訂正していないのに、橋下が1人で「誤報だ!」「誤報だ!」と騒いでも説得力ゼロ。
kikko_no_blog 5月27日 16:43

さすが、きっこ姉さんだ。彼が外国人記者に話すのは、これから、そうそうないであろうから、彼なりに一芝居うったつもりなのだろう。

今日の日本外国特派員協会での会見に出席した海外メディアの特派員「橋下さんが問題発言をしたのは2週間も前です。それから彼は言い訳に言い訳を重ねて火消を続けてきましたが、日本維新の会の支持率は下がる一方、それで今日の会見を行なったと我々は見ています」
kikko_no_blog 5月27日 17:17

今回、外国人記者の前で、上記の「嘘」をついたのだから、彼は死ぬまで、上記の「嘘」をつき続けるのでしょうね orz。
正直、私は上記のレジュメを読んでいるとき、気持ちが悪くなった。
ここ最近、私は橋下市長の「顔」をネットの画像やテレビで見るのが耐えられない。あの童顔の顔が目の片隅をかすめるだけで、気持ち悪い。彼の子供っぽい、舌ったらずな「僕」言葉が耳をかすめるだけで、気持ち悪い。その声が、「従軍慰安婦」「必要」と言った言葉と、重なり合い、多くの日本中で男性による強姦犯罪のトラウマに苦しんでいる女性たちに、おぞましい感情を喚起させているのではないか。
私は、もっと、世間は「シンプル」に考えている、と考える。大衆とは、非常に「シンプル」な「生理的」な人たちであることを、多くのインテリは理解した方がいいんじゃないのか、と思っている。
例えば、この騒動の間、乙武という、身障者の話題を、多く見かけた。そして、その中でも、岡田斗司夫さんがこの話題を動画で話しているのを見たが、その反応は、一定の見識を示していたのだとは思う。しかし、

  • どうして「大衆」がそんなに複雑に考えなければいけないのか?

と言いたいのである。この「構造」を、シンプルに見れば、

  • 両手両足のない人が、たまたま、銀座の料理店に行くときの予約で、自分が車椅子であることを告げるのを忘れて、店の前まで言ったら、店側にすげない態度をとられたと「感じ」てツイッターで「毒づいた」

ということであろう。しかし、私たちは、今まで、どれだけ身障者など弱い立場の人が、世の中からすげない態度をとられて、傷つかれているのを見てきているか。この状況を素直に聞けば、身障者の方に同情するのは当然ではなのか。
そりゃあ、小さいながら店をきりもりしている店側に、自分の今の苦しさを投影したくなる気持ちも分からなくはない。ほとんどの人が中小企業で、狭い人間関係の中の利益相反で生きているのであって、福島の農家のように、へんな風評被害をたてられたら、そりゃあ、店側に「感情移入」をしたくなるのでしょう。
でも、まずもって、この話を、一般の「大衆」が最初に聞いたら、どう思うか。いつもの、身障者の方たちが毎日、苦労されていることに同情している延長で、今回のことも聞くのは、当然ではないのか。
朝日新聞のサイトで、以下の記事が載っていて、話題になっているが、

大阪市北区天満2丁目のマンションの一室で24日、この部屋に住む母子の遺体が見つかった事件で、室内に「最後におなかいっぱい食べさせられなくて、ごめんね」という内容のメモが残っていたことが、捜査関係者への取材でわかった。預金口座の残金は十数円だけで、府警は生活に困窮していたとみている。
親子は職業不詳の井上充代さん(28)と瑠海(るい)君(3)。捜査関係者によると、メモはガス料金の請求書の封筒に手書きされ、充代さんが書いたとみられる。2人は昨年10月ごろ、知人の紹介でマンションに入居した。室内に冷蔵庫はなかった。食べ物もなく、食塩があっただけだった。部屋の電気とガスは止められていたという。
2人は2月ごろ死亡したとみられ、府警は瑠海君が先に亡くなった後、充代さんも間もなく死亡したとみている。
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もっと、素直に、世の中の苦しんでいる人たちになんとかできないかと考えることの方が、ずっと、人間的だと思わないだろうか。
なんというかな。
自分はどう思うじゃなくて、

  • 世の中の「ほとんど」の人たちは、非常に「素朴」に、素直な感情を生きている

ということを認めたうえで、そして、そういった「ほとんど」の人たちの視線から、世の中が

  • どう見えているのか

を、まず第一に考える人生を送らないか。そういった世の中を「ほとんど」の人が、シンプルに、素直に見ていて、そういった「共通認識」を前提に、この社会が回っていることを

  • 前提

にして、そういった方々の感情に素直に「合わせ」て、大衆のことを考えようとする姿勢が、インテリの基本的な倫理じゃないんですかね...。
(なんていうかな。自分がどう考えるかとかって、ある意味、どうでもよくないですかね。そんなに自分って大切ですかね。まず、大衆がどんなことを考えているのか、それに素直に耳を傾けて、大衆の感情の反応に合わせて考えようと、まずはやってみるのが、インテリなんじゃないですかね。そうやって、大衆によりそおうとするのが。)