広島地獄

普段、まったくテレビを見ない私も、ここのところのJ1のサッカーは、なんとなく見ていた。そこにおいて、私を興味深くさせたのは、サンフレッチェ広島というチームであった。
今シーズンの広島のサッカーは驚くべき成績である。得点はリーグ最大であり、失点もリーグ最小の、ぶっちぎりの勝ち点で優勝した。
そして、さらに興味深かったのは、ガンバ大阪との最後の二戦であった。ガンバは多くの選手が日本代表に選ばれているのに対して、広島は、そういった「タレント」が少ない。それに対して、日本代表のハリルホジッチは「選手が疲れていた」と言った。
むしろ、私にとって興味深かったのは、この「疲れていた」という言葉であった。
そりゃあ、シーズンを戦ってきて、さらに、日本代表でも戦って、選手は疲れているであろう。別に、そのことを否定したいとは思わない。しかし、いずれにしろ、広島はガンバ大阪に勝った。そして、私は思ったわけである。なるほね、と。
広島は今シーズンだけではない。ここ四年の間、三度もリーグ優勝している。そして、今日のアフリカ代表との「戦い方」は、2CHユーザに言わせれば、

  • いつもの広島地獄

だと言うわけである。広島は確かに「守備的」である。そういう意味において、近年の欧州サッカーの「流行」ではない。しかし、実際に、彼らはそういった「流行」を追うことなく、非常に興味深い、独自の変則的な攻守の切換えのフォーメーションで、J1をここ何年間、好成績を残してきた。いわば、今年の広島というチームは、その「総決算」といった強さがある。
広島というチームの特徴を一言で言うなら「お金がない」に尽きている。しかし、今シーズンを戦う選手たちは、実に充実している。それは、今年は今年であり、来年は来年だから。プロの選手としては、それでいいわけである。
考えてみれば、W杯の本戦で日本代表が結果を残した年というのは、トルシエ監督であり、岡田監督であり、基本的に、3バック、つまり、5バックで、守備的に戦った、つまり、「チーム」として、一人を二人でカバーして「守る」スタイルを選択したときであり、そういう意味では、広島の戦い方は、むしろ

  • 日本人の特性に合っているのではないか?

といった疑問がわいてくる。そのことは、もしかしたら、日本人の体幹の「弱さ」を、補う意味において、日本人の「疲れやすさ」に対する、一つの「答え」だったのかもしれない。
さて。広島のぽうな弱小チームが、このような戦闘スタイルを選択することは正しいのだろうか? しかし、私は正直を言って、その答えに興味はない。そうではなく、私は多くのJ1チームが、広島を「広島地獄」と呼び、今シーズンの彼らを恐れてきた事実を、私は興味深く考えたいだけである...。