田中辰雄・山口真一『ネット炎上の研究』

そもそも、「ストーカー」という言葉は、いつごろから使われるようになったのだろうか。なんらかの固定的な関係を迫り、相手につきまとう行為は、非常に「危険」であるだけでなく、泣き寝入りを招きやすい。
しかし、だからといって「おかみ=国家」に全ての自分の安全を守ってほしいということになると、いや、国家だって十分に恐しいであろう。つまり、国家であろうと、個人であろうと、怖い奴は怖い、というわけである。
これと似たような状況を思わせるものが、いわゆる、「ネット炎上」と呼ばれている事態で、掲題の本はでは、明確に

  • 問題

だと書かれている。それは、実際に「自殺者」がでているという意味において、実害がでているから、ということらしい。
こういった事態は、どこか「ストーカー」に似ているが、私は少し違和感を覚える。それは、ここで言っている

  • ネット

というものが、ほとんど

  • SNS

と同値で使われているところにある。ようするに、ここで言っている「ネット」とは、SNSの特徴である

  • フォロワーからの直接のユーザーに向けられた「ツイート」

が、それを読ませられる側にとって、一つの「ストーカー行為」になっている、というところに特徴がある。現代人のメンヘラ体質となってしまった、豆腐並みに軟弱な精神では、ちょっと、批判的な意見を見かけるだけで、ノイローゼ状態になる。これを読んで、明日から、俺の本が一冊も売れなくなったらどうしよう、みたいな。
ここで、なぜネット炎上は、それを受けるユーザーに深刻なダメージを与えるかというと、ようするに、これは「いじめ」だと、受ける側が解釈するからなのだ。
つまりどういうことかというと、ネットをSNSとして利用することを決めた時点で、こういった

  • 現実社会の人間関係

と同じ問題が、ここにおいても再現されることは、まったく同値だということなのである。

SNSにおける炎上抑制の方法として、一番簡単なのは、SNSにメンバーシップ制を採用して閉じてしまうことである。LINEとFacebookがその好例で、LINEは完全に閉じているので炎上とは無縁であるし、FaebookもFacebookを利用していない人は書き込めないので、比較的平穏が保たれる。いずれもSNSの外側にいる個人からの情報発信(侵入)を遮断するのがミソで、外部の個人の情報発信力を抑えることで炎上を抑制する。これはこれで1つの解である。
しかしながら、その代償として今度はそのSNS自体の情報発信力が著しく低くなるという問題がある。LINEはまったく外部に発信しないし、Facebookの情報発信力は低い。Facebookは一応外部に発信する機能もあるが、あまり使われていない。ネット世論をリードするのはブログであり、Twitterであって、Facebookではない。Facebookの日本のユーザ数は2線万人に迫り、Twitterの2倍になろうとしているにもかかわらず、ネット世論への影響力がほとんどないのは驚くべきことである。Facebookは利用者数から比べるとその情報発信力は不釣り合いに小さい。このようにメンバーシップ制をとると、外部の個人の情報発信力(侵入)をブロックできる反面、SNS自体の情報発信力が失われるという欠点がある。

掲題の本は、ネット炎上は「問題」だ、というところから、メンバーシップ型のSNSを推奨するわけであるが、上記の引用にあるように、そういう意味では、すでに今でも、LINEやFacebookがあるわけである。
そこからなぜか、受信と発信の分離という話に行くわけであるが、私には、そもそも、この辺りで言っていることの意味が分からない。
例えば、ステルスマーケティングの例を考えてみよう。掲題の本では、ネット炎上は

  • 問題

だと言っているが、ステマにおいては、その炎上を「あえて」起こそうとする。なぜなら、そうすることで、

  • 話題

にすることで、人々の関心を引くことが目的だからだ。つまり、ステマにおいては、

  • ユーザがあえて「ネット炎上」を招くような「不謹慎」なことを行って、人々の「抵抗」を誘発している

わけである。さて。こんなステマ野郎が、ネット炎上したからといって、自殺しますかねw
ネット上の有名人たちは、あえて、刺激的な発言をネットですることで、ネット炎上を「誘発」する。そして、

  • 期待通り

の不謹慎反応が返ってきたら、それを「ネタ」にして、吊るし上げて、「公開処刑」にする。そして、さらに、ネット炎上を煽る。彼らの目的は話題作りである。そもそも、商品はその「存在」がユーザーに知られなければ、買われることさえない、というわけであるw
実際に、ツイッター上の有名人のアカウントを見てみればいい。自分の本の宣伝しかないからw
そういう意味では、掲題の本は、ネットの「生態学」を分かっていないんじゃないのか、と思われる。確かに、ナイーブな一般ユーザーが、ネット初心者とかいって、フルボッコにあって、ネット炎上して、しまいには「自殺」にまで追込まれた(その過程では、なんらかのプライバシーなどの実害も起きているのであろう)といったことは、悲惨ではあるが、それを、日頃、ツイッター上で、毎日の自分の本の宣伝活動で使っているような連中が

  • ネット炎上だめだよね

って、なんのギャグだ、と思うわけである。お前が率先して、ネット炎上やってんじゃねーか。他人のことを言えんのか、ってわけであろう。
例えば、近年、自民党によるネット工作が、さまざまに噂されている。ようするに、自民党ネット工作員

  • ネット炎上

をやってるんでしょ。なんで、この本にはそのことが書いてないの? そして、上記のツイッター上の有名人たちは、実質的に、こういった自民党ネット工作員の参加して、有名人待遇で、高額な報奨をもらっているんでしょ? まあ、そうでなかったら、ああいった、自民党よいしょとしか思えないようなことを言わないよね。1ツイートで、いくらもらっているんだろうね。まさに、ステマだよね。エア御用だよね。怖いね、ツイッター上の有名人って。
そうだよね。ツイッター上で有名人がつぶやけば、テレビのダイエット番組で、納豆で痩せられると言ったら次の日に、スーパーから納豆が売り切れるみたいなことが起こせるんだから、企業はいくらでも、こういった有名人に広告代と称して、お金を払うんじゃないのかな。恐しいね。
ようするに、さ。被害者づらして、えらそうにご高説を垂れている、ネット上に降臨されている有名人さんがたの方が立派に、

  • ストーカーと同等の行為

を、有名人特権でやっているのと変わらないんじゃないですかね。ようするにさ、なんだろうね。有名人さんたちの

  • 上級国民

っぷりってw 彼らの目から見れば、ネット炎上って、「一般国民」の下々が下界で騒いで「うるさい」と言っているだけなんだよね。だったら、さっさとFaebookの穴蔵に閉じ込もって、一生出てこなければいいんじゃないですかね。そうすれば、だれからもなにも言われない。もちろん、だれにもお前の存在を知られないし、お前が書いた本も売れないわけですけど...。

ネット炎上の研究

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