サッカーと暴力

さて。ACLでの浦和と済州の試合での厳罰がAFC側から下された。
AFC REITERATES ZERO TOLERANCE POLICY ON ABUSE TOWARDS MATCH OFFICIALS
ということで、以下で少し、その内容について分析してみたい。
一応、整理すると、制裁内容としては以下となる。

  • 済州DFのチョ・ヨンヒョン ... 6カ月間の資格停止&罰金2万ドル(約220万円)
  • 済州DFのペク・ドンギュ ... 3カ月間の資格停止と罰金1万5000ドル(約165万円)
  • 済州DFのクォン・ハンジン ... 2試合の出場停止と罰金1000ドル(約11万円)
  • 済州 ... 罰金4万ドル(約440万円)
  • 浦和 ... 罰金2万ドル(約220万円)

それぞれの制裁の理由についてのコメントは以下。

  • 済州DFのチョ・ヨンヒョン

試合で2度の警告を受け、81分に退場していたにもかかわらず、試合終了後に彼は再びピッチに立ち入り、審判を突くなどの行為によって試合の権威に深刻な影響を与えた。
アジアサッカー連盟、浦和レッズ戦のトラブルで済州ユナイテッドの3選手に出場停止6か月含む厳罰処分 両クラブにも罰金 : ドメサカブログ

一番重い罪となっているが、なによりも、審判に手を出していることの重大性が強調されている。

  • 済州DFのペク・ドンギュ

試合に出場していなかった同選手は、119分にピッチに立ち入り、意図的に相手のプレーヤーの顔を肘打ちし、その暴力行為が理由で主審から退場を言い渡された。
アジアサッカー連盟、浦和レッズ戦のトラブルで済州ユナイテッドの3選手に出場停止6か月含む厳罰処分 両クラブにも罰金 : ドメサカブログ

まあ、エルボーというサッカーではありえない「暴力」方法の悪質性が指摘されている。

同選手は試合後の混乱の中で、相手のプレーヤーの顔面をたたく暴力行為を起こして主審から退場を言い渡された。
アジアサッカー連盟、浦和レッズ戦のトラブルで済州ユナイテッドの3選手に出場停止6か月含む厳罰処分 両クラブにも罰金 : ドメサカブログ

槙野を追い回したこと以上に、これも相手への平手打ちという、サッカーの動作と関係ない暴力が明示的に問題視されている。

  • 済州
  • 浦和

この試合終了後のトラブルにチームスタッフが加わっていた
アジアサッカー連盟、浦和レッズ戦のトラブルで済州ユナイテッドの3選手に出場停止6か月含む厳罰処分 両クラブにも罰金 : ドメサカブログ

ここの部分をどう評価するのか、というところだけど、例えば、試合中のピッチの中での問題であれば、それは審判による「選手」のコントロールの範囲であるが、そこでのもめごとに「チームスタッフ」が「一緒」になって、まあ、試合後にもなだれこんで、関係していたことが、騒動を実質的に「拡大」している、という解釈なのであろう。ここの部分は、少し「喧嘩両成敗」を思わせる感じもする。
確かに、上記の制裁内容を見ると、非常に大きな制裁に思われるが、なぜそうなったのかの理由を見ると、サッカーというスポーツでは通常ありえないような、

  • 非スポーツ的な「暴力」

の実質的な「加害者」に行われていることが分かるわけで、特に、審判に対して行った「行為」を非常に重く見ていることからも、基本的なそのポリシーについては、理解できる内容に思われる。
私はこの試合を見たわけではないし、現場にいたわけでもないし、通常のこういう場合における、「制裁」がどれくらいなのかと比較して語ることはできないが、少なくとも、それぞれの加害者の量刑の違いを見ると、そのポリシーは一貫しているようには思われる。
私が気になっていたのは、済州側がしきりに「浦和の選手による挑発があった」と言っていたことだ。
しかし、それは変ではないか。
つまり、実際にそれが「挑発」だったというなら、なぜその場で、審判に抗議をしなかったのか。確か、Jリーグでは、審判に抗議を行えるのは、チームのリーダーだけとなったように覚えているが、少なくともそうやって、チームのリーダーが責任をもって、意見をとりまとめて、審判に「抗議」をしているなら、そういった「挑発」などの、個々具体的な問題をフレームアップできていたわけであろう。
なぜ、それを行わないのか?
そういった理性的な対応を、一貫して行わないで、「相手が悪いから、自分の罪を小さくしてくれ」というのは、おかしいのではないか?
サッカーはルールのあるゲームである。その中で、相手が「挑発」というような、問題のある行為を行ったなら、その場で、審判に訴えればいいし、試合後に協会に抗議をすればいい。上記を見れば分かるように、ここで問題になっているのは、具体的な

  • 暴力

がサッカーというスポーツの権威を落としめた、というところにあるのであって、当たり前であるが、上記のような試合中の審判への抗議や、試合後の協会への抗議などによって、いくらでも、暴力以外での

  • 名誉回復

の方法があるのに、なぜそれを行わないのか、が問われているわけであろう。
なぜそれができないのか。
もしもサッカーが済州の選手が行った暴力を「しょうがない」とするなら、これから、何度でも同じことが再現するであろう。そして、サッカーというスポーツ自体が、この社会から認知されなくなり、社会的に抹殺されるであろう。済州はまるで、弁護士を介して、裁判で争っているかのように、枝葉末節の条件闘争に耽溺しているようで、自分たちが生き残るためには、サッカー界全体を道づれにしようかという勢いで、自己正当化にこだわっているように見える。むしろこの済州の選手による

  • 暴力

が、今のサッカー界の繁栄を「危なく」しているというAFC側がもっている深刻な問題意識を共有することなしには、この制裁の拡大さえ危ぶまれるように思われる。済州は「サッカー界のあるべき姿とは何なのか」という、大所高所からの視点が必要とされているのではないか...。