コンピュータと「テロ」

さて、今週の videonews.com では、ニュースコメンタリーとして、6月6日に、ネットメディア「インターセプト」で発表された、NSA(米国家安全保障局)の内部資料、つまり、ロシアのアメリカ大統領選への関与について、詳しく紹介している。

神保哲生:まず、ロシアのGRUという General Staff Main Intelligence Directorate という機関があるらしんですよ。日本語でどう読むのかしらないですけど。そこがまず、ハッキングをしかけた。ハッキングの仕組みが詳しく書いてあります。簡単に言うと、この VRSystems っていうフロリダ州の業者の、職員に、まずグーグルをいつわって、グーグルの名を語ってメールを送って、その人たちにマルウェアを感染させる。これも遠隔操作なんです。で、遠隔操作して、その上で、今度は、その VRSystems の社員のアカウントを使って、ここはだから選挙システムを受注しているので、各州の選挙管理委員会の職員に、そのシステムの業者からメールが来れば、当然、反応しますよね。で、それでマルウェアに感染させて、各州の特に、有権者登録をする、投票システムのそこを担当しているところに、分かっているだけで120人、そのフィッシングメールを送りつけて、何人がそれに感染したかは分からない。それから、しかもそれが選挙にどう影響を与えたかについては、レポートはふれてない。
ロシアの米大統領選ハッキングの実態が見えてきた - YouTube

NSAの仕事を請け負っていた外部のコンピューター企業の25歳の契約社員リアリティ・ウイナーという女性が、極秘文書を漏洩させた疑いでFBIに逮捕されていたということで、おそらく、この女性がNSAの内部資料を、インターセプトにリークしたのだろう、と。
しかし、上記にあるように、興味深いのは、かなり

  • 巧妙

かつ、容易にハッキングに成功している、というところにあるように思われる。PCの遠隔操作を、

  • 二段階

で行っているところが特徴で、特に、二段階目は、VRSystems というこの電子投票システムを作成している「業者」からの「メール」

  • だから

安易にそのメールを開いて、おそらくはかなりの割合で感染したのではないか、というカラクリになっているところであろう(つまり、ここの「信頼」を突破口にして、膨大な「拡散」を意図した、というわけである。)
ここから分かることはなんだろう?
おそらく、ちょっとした「アイデア」で、ほとんどの世界中のコンピュータであり情報は、ハッキングに成功する、ということなんだと思っている。気をつけて見るべきは、ロシアの上記の機関はそれなりのリソースをもっているわけであろう。そうであるなら、いくらでも、この問題を解決するための「調査」を行えたはずなわけである。
そして、非常にダイレクトかつシンプルな上記の方法を見出した。
契約社員のリアリティ・ウイナーさんは、これがおそらく、アメリカという国家にとって、非常に重要な問題だと考えて、マスコミにリークしている。おそらく、アメリカ国家の根本的な正当性が怪しくなっている、と考えて。
もしかするなら、次の大統領選挙は、もう、電子投票は使えなくなるかもしれない。しかし、使えなくなるということは、その前のトランプ自身の当選も疑わしいと懐疑することと同じなのだから、果して、どこまでトランプが、そういった「改革」にまともに取り組むのか、ということにもなるわけであるが、少なくとも、コンピュータは、当分の間は、こういった

  • ハッキング

を前提にしたシステムなんだと考えることなしには、まともに使えないんじゃないのか、とは思っている。世界的な、さまざまな場面で、公的な「正当性」が重要視されるような場面では、もはや、コンピュータはその正当性を支える信頼を担保できないのだろう。
おそらく、安易な「コンピュータ社会」を薔薇色に描く未来は、根本的な懐疑にさらされているということを、なぜかほとんどの人がイメージできていない。その認識の齟齬が大きな社会のトラブルとなっていく予感を感じなくはない...。