保守派のパラドックス

西部邁(にしべすすむ)が最近、入水自殺をしたことがニュースになっていたが、このことが衝撃的だったというより、ツイッターなどで、多くの人がこの「自殺」を、まるで

  • 良い

ことのように語っていることが私にはどこか、恐しいことに思われた。
私がなぜそのように考えるのかといえば、言うまでもなく、個人によって実行される「自殺」は「安楽な死」ではないからだ。また、こうやって多くの人が、自ら「自殺」をすれば、言うまでもなく、その「コスト」を社会は負担しなければならなくなる。死体の処理から始まり、電車のホームからの飛び降り自殺なら、それによる、電車遅延などの「社会的コスト」も馬鹿にならない。というか、そもそも、なんら人間がそんな「苦しみ」が極大化する可能性のある手段を選ばねばならないのか、の合理的な説明はないからだ。
もしも、社会が人々の「安楽死」を認めるべきだ、と考えるなら、社会は、各個人が安楽死を選択できるような「社会制度」を作るべきだろう。それを作らないでおいて、西部邁の自殺を、まるで「良い」ことのように語るのは、欺瞞なんじゃないのか?
正直に言って、私には、西部邁の印象はほとんどない。それは、結局のところ、いわゆる

  • 保守派

の連中の言っていることが、まったく理論的な強度を欠いた「自家撞着」なようにしか思えないからなのだ。
保守派は、エドモント・バーグを礼賛する。彼らは、伝統という形で、過去からその社会に引き継がれたものには、なんらかの

  • それが残ってきた理由

があるのだ、と考える。つまり、それが失くなってしまっては、その社会自体が壊れてしまうような、まだ、だれも気付いていないような理由がある「のかもしれない」と言う。そういう意味で、彼らは「伝統」の保守を重視する。
しかし、ね。
そうなのだろうか?
私が言いたいのは、これが正しいのか間違っているのか、といった所にポイントはない。そうではなくて、

  • なぜ保守派は<それ>を、わざわざ、他の問題に優先してまで「言挙げ」するのか?

が恣意的だからなのだ。
つまり、ここで問われているのは、そういった保守派を名乗る連中の行動の、属人的な「恣意性」にあるわけである。
保守派の言うことがなぜ、後世に人々に影響を与えるような「普遍性」をもちえないのか? それは、そもそも彼らのその「選択」が、さまざまな「世俗的な動機」に関係した、御用学者的な行動だからなのだ。

後藤弘子:今の日本の刑法のたてつけというのが、みんなよく言われてますけど、1907年の帝国議会の人たちって、どんな人だったか。普通選挙さえ行われていないわけですよ。
宮台真司:お金持ちの男の人たちで、めかけもいて、みたいな。
後藤弘子:そうです。よく言われるのが、日本の刑法というのが、財産犯を、財産に対する保護がとても厚いんですよ。それは当たり前ですよね。、自分が、もてる人たちが集まって、じゃあ、この社会で何を犯罪としましょうか、って言ったら、自分たちが、嫌なものを、自分たちが失いたくないものを、守ろうとするわけですね。保護法益と言うわけですけど。なにを刑法で守ろうかといったときに、立法者たちが男の人で、もてる人だったら、自分たちが加害者になることも嫌ですよね。
VIDEO NEWS性暴力被害者に寄り添う社会を作るために

ようするに、「伝統」と言って、過去を振り返ると、多くの「制度」はそもそも、女性や貧乏人に「差別的」なわけだが、それもそのはずで、つまりは、過去の日本国家は、階級社会だったから、こういった法律を作ることができた階層は、上流階級が独占していたわけで、そんな彼らだけで話し合って決めたルールなんだから、必然的に差別的になっているにきまっているんだよね。
そういった「周辺」的な「事情」が、まさに自明なまでに存在しているのに、こういった状況において、「伝統には前人の知恵」が隠されている、って、どう考えても、恣意的なわけじゃないw
まあ、お金持ちのブルジョアプロレタリアートに対する「支配」の永続化を正当化するために、とってつけたような「屁理屈」なわけだよね。だれがどう見てもw
多くの場合、保守派の「主張」なるものは、彼らの「人間関係」における、ある

  • ボス

が逆ギレして、回りに、当たりちらしている、「脅し」とほとんど同値である。大抵、西部邁の対談は「逆ギレ」して終わるわけで、つまりは、この「キレた」場面の言説が、弟子たちによって「聖典」化されていくわけだが、言うまでもなく、そういった弟子たちも、なぜ師匠がここで「キレた」のか、なぜ、この問題が他に優先して、重要視されたのかを、説明できない。ただただ、

  • 師匠

という「伝説」を、ひたすら「継承」していくことにしか、価値がないわけで、結局、保守派の言説は未来に残っていくような、普遍的な「強度」において弱い印象をどうしてもしてしまうわけですよね...。