スパスタのメタ考察

あいかわらずの、アニメ「ラブライブ・スーパースター」第2期なのだが、今回は、少しメタな考察をして、そもそも、なぜこんなストーリーになったのか、という観点で考察してみたい。
まず「かのんの留学問題」だが、これは考えてみると、「ウィーン・マルガレーテ問題」と重なるように現れる。つまり、「かのんの留学問題」は「ウィーン・マルガレーテ問題」が存在したから現れたのであって、後者がなければ前者はなかった。
だとすると、そもそも、「ウィーン・マルガレーテ問題」とはなんだったのか、を考えないわけにはいかなくなる。
まず、ウィーン・マルガレーテは第2期から登場したスクールアイドルだ。ここがポイントだ。彼女は、なんらかの目的で、登場させられた。では、その目的とはなんなのか?
ウィーン・マルガレーテの立ち位置は、リエラのライバルである。しかし、リエラの第1期のライバルはサニパであった。
この二つの共通するのは、「どちらも関東のチーム」ということだ。つまり、両方とも、決勝の全国大会の前で雌雄を決する。なぜなのだろう?
まず、第1期では、関東大会でリエラは、サニパに負ける。つまり、ストーリーは「ここ」に向けて作られた関係で、サニパは関東のスクールアイドルでなければならなかった。
まず、2期で、リエラは全国優勝する。つまり、2期のストーリーは「ここ」に向けて作られた。その場合、リエラは関東大会に勝利しなければならない。ところが、サニパはリエラの

  • よき目指すべき目標

であり続けた。よって、1期のように、関東大会でガチンコで戦って、リエラがねじ伏せる、といったような展開にしたくなかった。
考えてみよう。ラブライブ優勝チームはレジェンドである。そういった前回優勝チームが今回優勝するチームにガチンコで負けると、前回と今回にまるで優劣があるように受け取られかねない。よって、こういった描写は、ラブライブブランドを維持する目的で避けられたのだろう。
そこで、ウィーン・マルガレーテが登場した、と考えよう。
つまり、リエラがサニパとガチンコをやらなくてすむように、ウィーン・マルガレーテがサニパに勝って、関東大会に出られないようにした。
つまり、ウィーン・マルガレーテ「かませ犬」仮説である。
ウィーン・マルガレーテは、まだ色がない。つまり、その段階で彼女に「負け役」をやらせて、リエラが関東大会を勝ち上がる展開を、無理矢理つくった。ウィーン・マルガレーテが負けるのには、なんらかの彼女の欠点があって、リエラが関東大会を勝ち抜いたのには、それ相応の理由があったんだ、というストーリーにして、リエラが極端に

  • 勝利至上主義

にならないように配慮した、と考えられないだろうか。
では、その後の展開はどういう意味があったか。
その後の展開において、まずやらなければならなかったのは、「なぜウィーン・マルガレーテはあのような行動をとったのか」を説明することだった。大事なことは、ラブライブには「悪人は登場しない」という大原則があることだ。つまり必ず、ストーリーの中で「実は彼女は悪人ではなかった(または、悪人から善人に変わった、成長した)」といった描写で必ず終わらなければならない。よって、ウィーン・マルガレーテはこのまま、ヒールのまま、ラブライブシリーズを終わらせることができない。よって、

  • ウィーン・マルガレーテの行動の理由

を説明する展開が、どうしても描かれなければならなかった。その理由とは、彼女がウィーンの音楽学校に入学を目指していたことが分かるわけだが、ちょっと考えてみてほしい。あなたが、これだけを聞かされて、

  • しょうがないな

と思えますか? 普通に考えて、そんなの関係ねえ、となるでしょう。じゃあ、どうやってそれを説得力あることにするか。おそらく、そこで「かのんの留学問題」が利用されたんだと思う。つまり、ウィーン・マルガレーテの行きたい学校が、かのんの留学先として招待された、世界一の音楽学校だったら、なんか、ウィーン・マルガレーテがそこまで手段を選ばずに、目的のために行動したのも、分かるかな、と視聴者に思わせたかったのだろう。
この「留学問題」は、廃校問題と同じように、無印の時にすでに、ラブライブの重要なファクターとして登場している。よって、シリーズのどこかで、このオマージュを考えてはいたんだと思う。
だから、その留学問題をやったこと自体は、そこまで批判されることじゃなかったのかもしれない。
しかし、この代償として、

  • ラブライブの全国大会そのものが「リエラが優勝したのに」、全然注目されなかった

という問題があるように思われるだろう。最終回の関東大会の回のはずなのに、全編、かのんの留学問題の話しかしていなくて、大会そのものは、リエラの新曲のお披露目だけで終わっている。
しかし、ふりかえってみると、ラブライブシリーズにおいて、ラブライブの全国大会はこれに似た描かれ方が多い。
つまり、まったく詳しく描かれない。このことの理由は、なかなか、奥深いのかもしれない。
まず、一番分かりやすい理由が、

  • ライバルが全員負けた

からだろう。つまり、リエラは関東大会までに、今までに登場したライバルを全員倒してしまった。だから、言わば

  • 他のチームは全員「知らない人たち」

なのだから、彼らが、たとえ描かれたとしても、あくまで

  • モブ

として登場してもらわざるをえなくなる。もしも、モブ以上の存在として描いたら、今度はそれがフラグとなって、そのスクールアイドルたちの物語を作品内で描かなければならなくなる。
しかし、そういったことより、もっと本質的な理由があるように思われる。それは、たとえリエラが全国大会で勝利しても、彼女たちを「勝利至上主義者」として描けない、という制限があるのだろう。
それは、1期最終話での、かのんがサニパに向けて告白した、「戦う理由」に関係する。なぜ勝ち負けを競わなければならないのか、という問いは、ある意味で、無印から続く、永遠のテーマになっている。
一方で、ラブライブという大会に出場しながら、他方で、音楽に対して、こういった勝ち負けを決めるやり方への疑問を述べることは矛盾しているわけで、常にこの緊張感があるんだと思う。だから、どうしても、勝って、やたらはしゃいで、負けた人をけなすような発言を、リエラのメンバーにやらせることを(または、そう受け取られる可能性のある描写を入れることを)極端に嫌がっているのだろう。
さて。ここまでの考察から、第3期のストーリーを予想していきたいのだが、見えてきたのは、

  • 3期を予想するためのフラグがない

というところに特徴があるんじゃないだろうか。おそらく、今のところフラグと思われる、

  • かのんの留学問題
  • ウィーン・マルガレーテ問題

の両方とも、3期で、ほとんどふれられさえしないんじゃないか。なぜなら、上記までのメタ考察で分かるように、どちらも、2期のストーリー上の都合で作られたフラグであることが分かったから、その

  • 目的=役割

を終えた時点で、たんに「いらなくなった」からだ。
かのんは理由はどうあれ、留学しない。ウィーン・マルガレーテも理由はどうあれ、結ヶ丘に入学して、リエラのメンバーになる。そして、その中で、彼女が「実は、いい子」といった描かれ方をすることで、2期のヒールイメージの毒消を3期全体を通して描く。
そう考えると、3期のストーリーは、ほとんど無からの出発になると思われる。ここで描かれるのは、誰も予想できない。
もちろん、スクールアイドル部を続けて、来年もラブライブに出場して、2連覇が目標になるのだろう。その基本線があった上で、何を描くのかは、まったく予想ができない。
一つ言えるのが、「かのんの夢」問題だろう。これを、2期の「かのんの留学問題」とは、まったく無関係に、新しく掘り下げていくストーリーが予想される。そこで、新しい登場人物が登場してくるだろう。つまり、その人が「かのんの夢」に関わって、重要な役割を担っていく。まあ、もしかしたらそれが、ウィーン・マルガレーテのお姉ちゃんなのかもしれない(ここまで、彼女の存在がフラグとして登場していますからね)。
まあ、いずれにしろ、この3期は、ラブライブシリーズにおいて、前人未踏の領域に入ってきているんだよね。だから、ここから何が描かれるのかが、さっぱり分からない。もしかしたら、今までとは、まったく違った何かを描こうとしてくるのかもしれない...。

追記:
1期でサニパがリエラのライバルでありながら、ラブライブでリエラがまける、という今までにない展開にした。しかし、サニパの二人は2年生だから、翌年が最後になる。もしも、リエラの成長を考えて、サニパに一度もかなわなかったで終われないとかんがえたなら、2期でリエラは全国優勝しなければならなかったことになるだろう。
おそらくここから逆算して、2期の脚本が書かれたのではないか。