燐舞曲について

燐舞曲(ろんど)について知らない人もいるだろう。スマホゲー「D4DJ」内で登場するDJグループの一つで、ブシロード系の、ラブライブと同様に声優が、平行してパフォーマンス活動を行っている(2.5次元「的」とでも言うのか)。
ただ、D4DJそのものはアニメ化されていて、その最初のときは、高校生バンドのハピアラであり、愛本りんくが主人公となっていて、実際はスマホゲーの方もハピアラ中心ではあるのだろうが、いずれにしろ、最初のアニメでは、燐舞曲は登場していない。
ゲームのストーリーということでは、燐舞曲は大学生が中心となっていて、DJが三宅葵依(みやけあおい)、ボーカルが青柳椿(あおやぎつばき)で、全部で4人で構成されている。まあ、この二人の(女同士ではあるが)「恋愛?」が描かれていくストーリーということになるんだろうか。
この燐舞曲が、少し

  • 異才

を放っているのは、どちらかというと「歌詞」であり、曲の「イメージ」が他のグループとあまりにも違っているところにある。つまり、他のグループが普通に明るくて前向きで

なのに対して、こっちはずっとダウナーで「死にたい」「死にたい」って、ずっと言っているような

のパワーを放っているw なんていうか、この「陽と陰」の二つの

  • 対立

が、あまりに対照的に際立っている、と言っていいと思う。
古くは、80年代の松田聖子に対する中森明菜だったように、また、エヴァンゲリオンでいえば、アスカに対する綾波レイのように、妙な

  • 陰のパワー

を放ち続けているという形になっている(おそらく、この「後者」の「系譜」に魅きつけられた過去のある男性なら、ボーカルの加藤里保菜さんの歌声をすぐに好きになるだろう)。
つまり、私の解釈では、ボーカルが青柳椿(あおやぎつばき)役の加藤里保菜さんという「アイドル」が歌う、アイドル・ソングというカテゴリーだと言っていいんだと思うけど、アイドルが常にそうだったように、彼女は徹底して「プロデュース」された存在として、「作られ」ていて、話し方から歌い方から、まさに「声優」がその役を演じるように歌っている、ということになる(まあ当たり前だが、彼女そのものは歌っている姿からは想像できないくらいに、普通に明るい女性だ)。
私がこの燐舞曲が気になったのは、言わば、こういった、こっちの方向に「極振り」されたアイドルというのは、ほとんど見かけないということと同時に、他方で、こういった何かを描こうといった需要はずっとあったんじゃないか、と思うからだ。
例えば、ラブライブにおける、ミューズのライバルは、アライズだったわけだが、この二人組のグループは、ミューズの「王道」の元気・明るいソングに対して、少し、「クール」「詩は少し孤独を匂わせる」ものだったわけで、やはりここに、

  • 陰陽の対立

を際立たせようとした意図があったのだろうと思うわけだし、特に、ラブライブ・スーパースターの2期で登場した、ウィーン・マルガレーテは、リエラの「ライバル」として、やっぱり「陰キャのパワー」のようなものを、この

  • 対称性

として見せたかったんじゃないか、と思うところもあるわけだ(まあ、ほとんどの人が思っていることだろうけど、ラブライブの主人公グループの歌はみんな、元気・明るいの「前向き」ソングばかりなんで、明らかに、「そっち方面」のスパイスがもの足りない印象が、長くやっていると強くなっていくんだよね)。
その燐舞曲の音楽がどのように作られているのかについては、以下のインタビューが分かりやすい。

spice.eplus.jp

これを見ると、D4DJの全体統括のプロデューサーが、「兼任」という形で燐舞曲の音楽プロデューサーをやっているとなっている、ここで、「なるほど」と思うわけであるw なぜなら、燐舞曲はあまりにD4DJの中で「異色」な方向にぶっちぎってふりきれているから、なぜこのような存在が許されるようになったのか、どういった合意形成でそうなったのか疑問に思っていたのだが、言わば

で強引に押し込んでいるわけねw おもしろいわけだw
ここまで書いてきても、どこが燐舞曲が変わっているんだ、と思う人がいると思うが、早い話「カレンデュラ」という歌が一番、このグループの色を示している(なぜ、アルバムの最初の曲がこれじゃなかったのか、私には今だに理解できない。これを最初にもってくれば、もっと分かりやすかったんじゃないか)。

生まれ堕ちた 最初からそうみんなと違う
出来損ない そんな言葉 着飾って

みんなどうして 楽勝にさ 生きてるんだろう
出来損ない そんな言葉 聞き飽きたよ

優しい君のその手振り払ったの

これ以上生きる事が嫌になるのなら
誰とももう話さなくてもいい

(燐舞曲「カレンデュラ」)

この「カレンデュラ」という曲は、ゲームのストーリーでも特別の曲として扱われていて、まさに、このグループを象徴する曲として位置づけられている(上記のインタビューでは、ボーカルの青柳椿の生涯を描いている、とされている)。

この手に触らないでよ
この影を踏まないでよ
心を覗かないでよ
頭が割れそう

この目を覗かないでよ
この声を聴かないでよ
心を侵さないでよ
理性が壊れそう

「私を嗤わないでよ」
「私を嗤わないでよ」
「私を嗤わないでよ」
頭が割れそう

(燐舞曲「ReTINA」)

燐舞曲の歌詞は、一方で、こういった、かなり強烈な言葉の連発で、他方に、日常のささやかな出来事に明日を生きる、希望の「かけら」を必死で見つけようとする、その、

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