NNNドキュメント「アリラン特攻兵の悲恋」

特攻隊員の中に、朝鮮人がいたことは、戦後、あまり知られていない。
女優の黒田福美さんが、そういった方々の慰霊碑を、韓国にたてようとしたが、除幕式で、急遽、反対にあい、中止になったという。反対派の理由は「特攻隊員は日本の戦争に協力した親日派」ということらしい。
こういう形で、韓国も中国も、戦後、国民は、二つに分けられた。日本に協力的だった人と、最後まで、抵抗運動を続けた人。そして、後者だけが、その正当性が与えられて、発言権をもちえたことは、日本において、日本共産党だけが、戦後、その正当性を主張していたことと似ている。
韓国は、歴史の見直しとして、戦中の、日本植民地時代に、日本に協力的だった人たちを、歴史をさかのぼっての処罰を、最近、さかんに行うようになっていると聞く。
この動きは、逆に、現在にこそ、そのパワーを発揮しているはずだ。今、韓国で、自国を売って日本に協力になるような言動、行動に対して著しく規制的にはたらいているはずだ。
韓国は、政権が変わるたびに、前の大統領が、逮捕され、牢獄に入れられるということをくりかえしてきた。その究極の形態が、戦中、日本協力者の糾弾である。これをやると、人気がでるから、政権政党は、人気が落ちてきたと思うと、何度でも、もちだしてきて、人気復活をはかる。
このドキュメンタリーでは、崔貞根(日本名・高山昇)について紹介している。
彼の弟さんが、日本側の特攻隊員慰霊の石碑に、彼の兄の名前があることを知り抗議をするところから始まる。
崔貞根は、特攻隊員として特攻を行い死んだとして、死後、中尉となっている。しかし、アメリカの記録にしても、日本の記録にしても、その日に特攻があったという記録がない。
番組としては、その当時、戦意高揚のために、特攻を行ったという報道をしたのではないか、という推測であった。
彼の弟さんが、番組で、とにかく、真実が知りたいのだ、と言っていた。
マルクスは、イギリスのブルジョア階級の資料を徹底して評価したというが(その面では、自国のドイツを評価することはなかった)、やっぱり、それはたいしたものだったんですね。どんなに自国に不利なことでも、なんでも書いてあった。だから、彼は資本論を書けたんですね。まず、こういったベースがない、まともなブルジョア革命すらないような国で、共産主義革命なんて、ありえるはずがないわけなんです。
とにかく、徹底的にダメなのは、事実を残そうとしない、歴史の真実がなんとかして、残されることに価値をおかない、こういったアジア的な「嘘」ですよね。
日本は、戦中、とにかく、大本営はウソばっかりだった。だから、それを聞かされ続けた当時の国民感情としての実感は、まったく真実に届いていないことが、あまりに多いんですね。そのことがどれだけの、感覚の違和を残し続けてきたか。
そしてもっとダメなのが、戦後、まったく事実が分明にならない。政府は徹底して都合の悪い資料を出さないし、あいかわらず、気に入らないことを、徹底的に隠す。
アメリカなどは、何十年か先には、なんでも、機密資料は公開になる。キリスト教的な考えで、死ぬ前には、すべての真実をうちあけて亡くなる、ということでしょう。
アメリカには司法取引というのもありますが、どれだけ、真実を知ることが重要と考えられているか、ということですね。
よく考えてみてください。実際になにが起きていたのかを知ることがどれだけ、残されて生きていかなければならない我々に、重要であるか。
本当に事実を残し解明するための努力がどれだけ、かけがえのない、けっして、止めることのできない重要なことなのか、ということですね。
あと、崔貞根とつきあっていた日本の女性についての紹介があった。とにかく、若すぎるのです、特攻隊員たちは。そういう若い身空が、天空に散ることが、日本軍の戦意の高揚になるという、その効果を分かった上で、あえて、意図的にやってるわけですね。
こういった、まだ、これからの人生の先のある子供たちを、戦意高揚に使う、日本軍のやり方。
いつもそうです。子供を純粋なものとして、権力者は使うわけです。(あいかわらず、保守派のプロパガンダはうるさいですけど、)まず、そのことの見識を疑うべきでしょう。
戦中の日本の、なにもかもが、ナチスと同じく、国民が人類史上始めて、ちょうど、新聞、ラジオなどの、科学文明の「マス宣伝」の洗礼を無防備に受け止めた時代ですね。ナイーブだったでしょう。
なにもかもが、宣伝。