小幡績『すべての経済はバブルに通じる』

今年の東証株式市場の下落率が、42パーセントだそうですよ。ほとんど、半額じゃないですか。ほんと、周りで、株やってた人たち、どうなっちゃってるんでしょうかね。今まで、汗水たらして稼いだ身銭を、すってんてんに、すり減らしていなけりゃいいですけどね。
掲題は、最近、videonews.com で紹介された本です。
この本を通読されて、多くの人は、どう思うでしょうか。
私はむしろ、こういう専門家が、経済現象としての、バブルなどについて、結局のところ、よくわかっていないで、書いているんだな、という印象を強くもった。
こんなに、はっきりと、日々のニュースでも、あらわれる、バブルという現象について、それを専門にして、勉強されてきたと思っている、経済学者が、どうも、最後のところでは、 よくわからない、という、手探りの感覚で、話されていることが、逆に新鮮に思えた。
この本を読むと、なんだろう。たんに、今回の、サブプライム・バブル、だけじゃないんですね。これからも、同じこの、金融システムが続く限り、このばかげた茶番劇は、何度でも、何度でも、何度でも、起きる、というわけです。

しかし、このようなしたたかなヘッジファンドも、その多くが、バブル崩壊で大きな損失を出した。なぜ、プロ中のプロであるヘッジファンドが、バブル崩壊から逃げ切れなかったのだろうか。バブルと分かっていて投資し、逃げようともしなかったのはなぜだろうか。
それは、プロであればこそ、ぎりぎりまでバブルに乗らなくてはいけなかったからだ。ライバルである他のプロがバブルに乗っているときに、自分だけ降りてしまえば、利益が減り、ライバルに負けてしまう。プロとして、出資者からの資金獲得競争に勝つためには、バブルの間だけのことであっても、ライバルより多くの利益を上げなければならなかったのである。
ここにプロの深い悩みがある。彼らがバブルからぎりぎりまで逃げようとしないのは、プロの評価基準が、ライバルに比べてどれだけ勝ったかということにあって、絶対に何パーセント資産を増やしたかということにはないからだ。

しかし、こういった、かなり大きなお金のこげつきは、決して、「それだけ」では、終わりません。当然です。「あらゆる」、バブルの暴落。つまり、「恐慌」です。

しかし、2007年12月末からの怒涛の大暴落においては、彼らにそんな余裕はなかった。含み益はとうに底を突き、一直線に損失が増え続けていった。そして、全ての資産が値下がりしていった。したがって、含み損の拡大を防止するためには、資産は全て国債か現金にするしかなかった。損失を拡大していたファンドや金融機関は、サブプライム関連証券など全く取引の成立しない証券以外の、流動性が少しでもあり、売れる資産であれば何でも、現金確保のために投げ売った。その結果、投げ売られた資産の価格は、全て暴落した。

しかしですね。
結局、これは、なにを、あらわしているのでしょうかね。
つまり、プロのヘッジファンドも、出資者も、お互い、全然、「本気」、じゃないんですね。「ゲーム」なんです。
出資者は、数いるヘッジファンドの中で、最も、成績のいい、一番の所を探し、そこに、お金を預けます。しかし、そこの成績が一番を維持できなければ、すぐにひきあげ、次の一番にお金を預けます。そうやって、常に一番に乗り換えていくゲームをやります。そうすれば、まず、へたをうつことはないでしょう。
ヘッジファンドの方は、自分がこの世界で食っていきたいと思う間は、この、チキンレースに、つきあうしかありません。しかし、よく考えてください。いやなら、このチキンレースから降りればいいのです。お金はすべて、出資者の出資金、つまり、他人のお金です。いくら損をしようが、失うのはこの世界での、一時的な信用だけで、そんだけです。それが、株式会社の、有限責任、ってわけだ。
プロは、別に、出資者に、人間として、信頼されて、出資されている、わけではないんですね。「この人は信頼できる人だから、この人に預ければ、きっと、自分の資産を、間違いのないようにしてくれるはずだ」ではないのです。
プロも別に、自分の人生をかけて、自分のもっている一切を担保にして、出資者のために、尽してなんかいない。
これが、ビジネス・ライク。仕事の間は、仕事の関係、ひとたび、仕事を離れれば、仕事の人間関係とはなんの関係もない、プライベートな個人的な人間関係の世界が存在している、ってわけだ。
だって、なんですこの、茶番劇。プロとか言って、本当に、出資者のことを考えているなら、たとえ、この後、自分のお客さんになってもらえないとしても、お客さんのために、これ以上続けてはいけないと、身命を賭して、諫言するでしょ。
お前たちが、動かしてる、そのお金があれば、どれだけの人が、救われると思ってんですかね。(ちょっと言いすぎですけど、)この人たち、なんのために、生きてるんですかね。
実は、小幡さんは、videonews.com の番組で、この本のさらにその先ということで、上記のようなことに言及しています(まるで、私の、右的論に、シンクロするような、内容ですね。勝手に手前ミソで、すみませんが)。
掲題の本の最後でも書いてありますが、今後、長期のトレンドとしては、全世界的なインフレ、つまり、お金そのものの価値の低下、信用の低下が続くことだけは、間違いないようですね。

すべての経済はバブルに通じる (光文社新書 363)

すべての経済はバブルに通じる (光文社新書 363)