政治とカネ

今回の、videonews.com は、この問題について、現在の状況をよく整理したものだったと思います。
国民は、政治とカネの話が好きだ。あの政治家は、金に汚い。きっと、いろいろワルサをしてるに違いない。国民は、勧善懲悪の時代劇の見すぎなのだ。
しかし、このことは、逆のことを意味する。もし、その存在が自分にとって、縁遠い話なら、これほどの関心をもたない。つまり、こう言いたいのだ。
おれだって、カネさえあれば、お前にみついで、いろいろ、口ききしてもらえるのに。それをコネにして、いろいろ有利なオプションにして、生きてこれたのに。つくづく、金のある奴が、憎い=うらやましい。
ワイロをつめば、この政治家は、国に手を回して、なんとでもしてくれる。
小さいことでは、交通事故のもみけしから、就職先の、口きき。もし、市井の市民が想定するような、たいていの夢、「自己実現」が、なんのことはない、ちょっと地元の政治家に、金をつめば、かなうなら、どうして、その手段をためらうことなどありえよう。
公務員は、完全に、コネが全ての世界だ(とだれもが思っている)。これほどの多くの人が、公務員になりたがっている中で、ある一部の人が選ばれる。たいして、差などあるわけないのだ。本当に、スキルを問われる、一部エリート官僚になる国家公務員は、そりゃあ、いいとこの大学の人をとるんで(そのために、大学入試は、それなりに、筆記試験はフェアなのだが(面接や学校推薦で入ってくる奴らは、うさんくさいもんだが))、そんなにひどい、コネ入社は、逆に、入った後、その人を苦しめるだけだろうが、その辺の、一般の公務員は違う。
私たち、この資本主義に生きる日本人は、戦後、そういう意味で、西側が自由主義、資本主義、ですばらしい、東側は牢獄国家だ、とかさんざん言われても、しらけていたのは、こういう実体をいつも見ているからだ。
ようするに、コネでしょ。お金をいくら積めるか、でしょ。人生、しあわせになれるかどうかなんて。
こういう社会では、だれも、人をリスペクトしなくなる。あんたも、コネなんでしょ。コネで、今の、地位を手に入れて、将来にわたる、小金も安泰ってわけですね。そこまで、ショーライアンタイなら、そりゃ、ずいぶん、かわいい、奥さんも、プロポーズを拒む理由もみつからないってわけですか。そりゃあ、幸せにもなるでしょうよ。
しかしこれは、東アジア政治の、はるか昔から、延々と続いてきた伝統、アポリアであったわけだ。中国、朝鮮の政治は、ずっと、官僚たちの、不正との戦いの歴史だったと言ってもいい。なぜ、多くの人が、科挙に受かるためにあれほど勉学にはげんだのか。ひとえに、官僚になれれば、ものすごい量の「わいろ」が約束されるから、ですね。両国は、このために、多くの力を消費させられる。外国からの脅威、国防がどうのこうの考える余裕がないくらい、こっちに力を使い果しきっていた、ということなんですね。
多くのこの社会で行われてきた、この「コネ慣行」が、当然のように、続く限り、国民の民度がどうのというお説教は、虚しい空念仏に終わるだけだろう。
しかし、そういったこととは別に、この日本の政治システムを、どのようなものに構築するかは、ある。
特に、今問題になっているのは、政治家の企業からの献金、についてである(直接の企業からの献金は禁止されているが、という話ですね)。企業とは、利益団体なんだから、企業が献金をするということは、見返りを要求しているはずだ、というわけですね。しかし、最近の企業がもし、自社の利益追求のことしか考えないなら、その会社は「滅ぶ」。その周辺地域との関わりは重要なわけだ。また、積極的に、ボランティア、NGOに資金提供する企業も増えてきているようだ。当然である。企業は、なによりも、企業イメージが重要である。その企業が社会に貢献している企業であるからこそ、多くの人は、その企業の商品を買うことを誇らしく思うのだろう。社会貢献こそ、企業の最も大きなCM、なのだ。
また、個人だってそうだろう。個人だって、なんらかの見返りを求めて、献金することには変わらない。問題は、その見返りが、なんなのか、なのでしょう。ブッシュの侵略戦争を止めてもらうための、献金だってあるかもしれない。その意図ですよね。
今回の小沢さんの問題は、まず、一義的には、彼が法律を犯したのかどうか、でしょう。そう考えると、今の法律にさまざまな抜け道がある状況で、いろいろな抜け道が、「許されている」なら、その中で、政治家が行動するのは当然だろう。
問題があるとするなら、その、理念のない、玉虫色の、今の法律の方であろう。そういう意味では、小沢さんに責任がないわけではない。
じゃあ、どういうものにするべきなのだろう。
一つだけ言えることは、これだけマニフェスト政治が言われる状況で、あいかわらず、自民党民主党、が、個人経営に頼っている現実ですね。共産党のように、党が面倒をみるようにしないと、そんな、お金なんて、いくらあっても、きりがないだろう。効率が悪すぎる。まあ、完全に、それで、政党中心になるのもどうかと思うが、基本は、これですよね。だって、そうであれば、あとは、各政党の、マニフェストの内容こそ、全て、になるわけでしょう。口きき、といったって、それを反映した、マニフェストを、最後は国民が判定をするということなんですから。
あと、二つ、ポイントがありますね。
一つは、地方分権。少なくとも、国の政治は、国防とか、外交とか、そういうことが主な仕事にならないと、おかしい。しかし、そういうことは、国民は興味ないんですね。つまり、本来は、国の政治家なんて、それくらいの興味の存在であるべきなんですね。基本的に、国防、外交以外のたいていを、地方に判断させれば、今の、国の政治家の負担はかなり減る(もちろんこれは、地方に問題を移すことでしかないが、どんどん、身近な地域で解決するようにならないと。それこそ、直接民主制、でしょう。もともと、代表民主制なんて、自己矛盾なんですからね)。
もう一つは、世襲議員問題ですね。世襲議員が問題なのは、親の後援会を引き継ぐから、ですよね。そういうものがあれば、どうしても、多くの人が、選挙に立候補する、公平性をそこなう(特に、選挙に金がかかる、とこれだけ言っておいて、このままでいいのか、というのはあるのだろう)。そもそも、世襲議員には、そういう意味で、彼らには、著しく、その存在自体が、「正当性」が疑わしい、わけだ。