掲題の本のタイトルの話に入る前に、著者は、ある問題提起をする。
まず一九九〇年代後半には、先進工業国の大半で、つぎのようなことが明らかになりつつあった。どんな政党が政権に就こうと、国の政策は富める者の利益になるよう一定の圧力が継続的にかけられる。規制なき資本主義経済からの保護を必要とする人々ではなく、むしろ恩恵を受ける人々の利益が優先されるのである。
つまり、その正体こそ、圧力団体、ということなわけだ。
日本は、戦後の焼け野原において、国民は、ある意味、「みんな」貧しかった。しかも、アメリカGHQ占領軍は、自分の国では、「死んでも」やれないような、農地解放のような、「社会主義的」政策を、占領政策の一環として、この日本で行った。そのことを、あの、坂口安吾は、評価するわけですね。このとき、日本は、「平等」になったのです。
しかし、アメリカは、そういった「洗礼」を受けていない。戦前から続く、「超」金持ち、は、さらに、資産を増やし続け、今では、まるで、天上人、を思わせるような、存在ですよ。
マルクスが言うように、この資本主義世界においては、金持ちは、どんどん金持ちになり、貧乏人は、さらに「どんどん」貧乏になるわけです。それはこの、グローバル社会においては、国家間の話ではなく、各国家を越えて、どこの国にも「最底辺」の貧乏人は、同じ「割合」で、等しく、偏在する、ということを意味する。
しかし、ギリシアの時代からそうであるように、民主主義は、「暇な」人のものである。日常の煩瑣な作業を奴隷にさせることによって、「頭脳労働」に没頭できる、なにもしない金持ちたちが、集まって、好き勝手なことを言い合うことが、民主主義の起源だったわけだ。
そういった、暇人を、現代の世界に合わせると、それは、つまり、「超」金持ち、圧力団体、のことを言っている、となる。
貧乏人は、日々の労働に疲れ、国策に関与する機会も持つことは、かなわない。そうなると、あとは、金持ちたちの、政治の仕放題、というわけだ。
それは、いくら、選挙によって、雌雄を決すと言っても同じだ。どんな理想をかかげて、当選しても、「圧力団体」によって、まるめこまれる。次第に、いつもと変わらない、主張を繰り返す政治家の、姿が目に見える、というものである。
この姿を、私たちは、多くの、タレント議員の中に見てきた、わけですね。あの、青島都知事の、「自分は、なんでも、正しいんだ」、と開き直った、へらへら笑いを、国民は、死んでも許せない、実例、として、末代まで、語り継ぐことであろう。
今回の、日本の民主党政権に対する、国民の違和感は、むしろその「大臣」たちの、シロートっぷり、にあるのだろう。民主党は、ネクスト・キャビネット、のまま、なぜ、内閣を構成しなかったのだろうか。これによって、民主党が、次に野党になったとき、どんなに、再度、ネクスト・キャビネット、を再度やろうと、信頼されないだろう。早晩、官僚に完全にまるめこまれ、あの、青島へらへら笑い、を口元に浮べる、民主党政権という、「もう一つの自民党」が、目に浮ぶようである。
しかし、もし、そういう事態になったとき、民主党は信じられず、自民党は、言わずもがな、一体、国民はどう思うであろうか。しかしそれは、柄谷さんも言っていたように、ボナパルティズムの問題なんですね。国民は、どこかしらの、政党は、自分を「代表」(リプレゼント)してくれている、と思っている。しかし、もし、国民の「全員」が、どの政党、政治家も、自分を「代表」していないと思ったとき(それこそ、民主主義の背理のようなものだ)、政治はどうなるか。
そしてそれは、あらゆるビジネス・モデルが、アカデミズムの「公開性」の名目のもとで、多くの他の外国企業に、安くまねされる現実の前に、すべてのビジネス・モデルが、もうからない、とどうしても国民にそう思えたとき。
その時こそ、だれをも「代表」しないが、だれをも「代表」する、そうした、ボナパルト、独裁者、の登場となる(それがあの、小泉純一郎、だった、ということだ)。
掲題の著者は、なぜ、「ポスト・デモクラシー」と言わざるをえなかったのか。それについては、こちらを読んでもらえばいい。著者は、イギリスの、第三の道、ニューレバー、ブレア政権、こういったものを意識していて、社会民主主義的な、なんらかの対抗軸の構築しかありえない、という立場である。解説として、山口二郎さんも言っているが、早い話、新自由主義の対抗軸と言っても、そう簡単じゃない、ということなわけだ。
私は、この暗澹たる未来を、特に、日本において、感じるをえないのは、早い話があの、「大企業」だけを、まるで、新時代の「貴族」のように、抱え、他の派遣社員などを、「徹底的」に物品費、として、扱う、
労働組合
である。
どんなに、政治がきれいごとを並べようとも、この、社会の「ガン」、社会の「ゴミ」たちが、今のまま、であるかぎり、この国は、滅びる「べき」であることが、間違いないことは、強調しすぎることはないだろう。
- 作者: コリンクラウチ,山口二郎,Colin Crouch,近藤隆文
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