中島みゆき賛歌

TUTAYA の、CD 5 枚 1000 円、につられて、大人借り、してしまった。昔のフォークなんかも聞いたりして。
中島みゆきといえば、最近で言えば、NHK の「プロジェクトX」だろう。この番組は、ちょっと特殊であった。日本の労働者の、武勇伝を、フューチャーしていく。ずっと、高視聴率をかせぎ、長期にわたり、妙な熱気のあった番組であった。
戦後、日本は、「経済」戦争を、世界に挑むことになる。特攻隊員は、武器から、お金に変えて、世界に挑戦してきた。その姿は、言わば、古き、なつかしき、成功譚、武勇伝でしかないだろうが、それを語る人たちの、その恥かしそうにしている姿は、実に歴史の移り変りを感じる。
ひと昔前では、それは、「敵を何人殺したか」であった。しかし、今はそれは、どんな苦難を超え、失敗を超えて、製品開発に成功したか、に変わっていた。しかし、現場でやっている人たちはその意味をよく知っている。成功とは、ひとつの、偶然にすぎない。こつこつ、続けていれば、たまにはこんなこともある、そのレベル。彼らが一律に、見せる、そのおそれいっているひかえめな姿は、どう見ても、英雄じゃない。
彼らは知っているのだろう。もっと「大事な」ことを。
中島みゆきが、番組の最終回に、でてきて、歌ったときの、この回の番組は、ちょっと、変な雰囲気であった。ほとんど、MCはなくて、恥かしそうに、番組の途中で、歌って、てれくさそうに、帰って行った。
しかし、彼女が、「番組に来た」というのは、本当に、大変な事態であった。ほんとうによく来てくれた。彼女が、来てくれたことこそ、この番組だったのだ。
みんな、しっているわけですね。
彼女が、ずっと、どんな存在であったか。彼女こそ「全て」なんですから。

雨が降る雨が降る
笑う声のかなたから
雨が降る雨が降る
あんたの顔がみえない
ドアに爪で書いてゆくわやさしくされて唯うれしかったと
中島みゆき「うらみ・ます」)

玲子 みちがえるようになって
あいつでも 本気で
惚れることが あるんだね
玲子 あいつは誰と居ても
淋しそうな男だった
おまえとならば あうんだね
ひとの不幸を 祈るようにだけは
なりたくないと願ってきたが
今夜 おまえの幸せぶりが
風に追われる 私の胸に痛すぎる
中島みゆき「玲子」)

女のつけぬ コロンを買って
深夜のサ店の鏡で うなじにつけたなら
夜明けを待って 一番電車
凍えて帰れば わざと捨てゼリフ
涙もすてて 情もすてて
あなたが早く私に 愛想をつかすまで
あなたのかくす あの娘のもとへ
あなたを早く 渡してしまうまで
悪女になるなら 月夜はおよしよ
素直になりすぎる 隠しておいた
言葉がほろり こぼれてしまう
『行かないで』 悪女になるなら
裸足で夜明けの 電車で泣いてから
涙ぽろぽろ 流れて涸れてから
中島みゆき「悪女」)

(ちょっと前に、BUMP の「ベル」っていう曲をフューチャーしたけど、彼は、中島みゆき、の「「元気ですか」」を知らなかったんでしょうね。この違いには、ちょっとビックリした。こういうのを、ヤヌスの相貌、と言うのやら、なんとやら...。)
どうも、日本の男たちっていうのは、あんまり、自分でやりたいことって、ないみたいですね。なんか、これが楽しいとか、ないんですよね。よく、こんなにやりたいこともなくて、なんで生きてるのか、わかんなくなる(男は、どうも、先に滅びるみたいですね)。
ただね。好きな女性が、幸せでいてくれたら、それでいいかな、みたいな...。
だから、中島みゆきが、悲しい歌を歌うと、ちょっと、変な気持ちになる。歌っている内容は悲しいんだけどね、ちょっとおかしい気持ちになる。なんか温かい気持ちになる。やさしい気持ちになる。
なんとかしてやりたいな...。
日本中の男性は、中島みゆきの歌を通して、自分の好きな女性をみてきた。そして、この経済戦争を、戦ってきた。
もうお分りであろう。彼女は、たんに、あそこにいたんじゃないんです。