「キャピタリズム」

マイケル・ムーアの「キャピタリズム」を見てきた。
この作品のクライマックスは、なんといっても、後半の、サブプライムローンで、ある家族が、銀行から、昔から住んでいる家を追い出され、トラック暮しをしていた家族が、地域の住民の助けを借りて、もう一度、家を奪い返す場面、ではないだろうか。
アメリカでは、サブプライムの破綻で、貧困層が、かたっぱしから、家を、ローン会社に、差し押さえられているのだそうである。どんどん、アメリカの村々で、家に住んでいた家族が家をローン会社に差し押さえられて、その村を追い出され(家なし、だ)、村に「だれもいなくなっている」。
映画では、その状況があまりに異常だったのだろう、なんと、地元の警察が、そのローン会社の差押えに反対するという声明をだしている、村まで紹介されていた。
上記の例では、その家に何十年も住んでいる年寄も、孫の小学校くらいの子供たちまで、全員、差し押さえの紙切れ一枚で、路上の放り出され、自動車野宿、をしていた。それがあまりに忍びなかったのであろう。近所の住民が協力して、差し押さえの、会社関係者が、この家に、入ろうとすると、さまざまに説得して、追い出した、というドキュメンタリー映像の画面であった。
さすがに、こうやって、映像で見せられると、この機械的な処置は、ちょっとやりすぎなんじゃないか、とは思わなくはない。実際、金融機関は、国から、大量の公的資金を投入されていて、そのお金で、経営者は多額のボーナスを、もらっていることが、さんざん報道されていた。もともと、サブプライムローンが、ネズミ講みたいなもので、こういったものが、規制緩和によって、許されていたことの方がちょっとどうなのかと思わなくもない(しかし、バブルとはいつも、こういうものとも言えるということでしたが)。もっと言えば、本当に、彼らその家の人たちに、これがどういうものだったかを、説明が十分尽された上で契約されたのか、それほど、教養のある家族ではなかっただけに、そこは検証されてもいい(もちろん、サブプライムローンが、お金のない人に夢のマイホームを、という国の「政策」によって、推進されていたことも、よくよく考える必要があります)。ですから、人権派弁護士は、(こんな企業イメージの悪いこと)もっとがんばれるんじゃないか、とは思うわけですね。
その辺りが、マイケル・ムーアが、オバマになっていく過程での、国民的熱狂や、オバマ自身による、後押しに期待している姿に関係してくる。
マイケル・ムーアが子供の頃の、父親がGMの労働者だった頃、まだアメリカが、裕福だった頃の、子供の彼の姿が、映像として何度も流れていた(実に、幸せそうな子供だ)。
では、これから、どうなればいい、と彼は考えているのだろう。アメリカの1%の人が、ほとんどのお金をもっているのは、おかしい、と彼は言う。しかし、プロスポーツの世界だって、そんなものだ。また、税金を払うのは、大企業なのだから、そういう実力のある会社に優遇すれば、税金も増える。もう一度、彼の言う、子供の頃に戻ると言っても、BRICs も成長してきているし、なにより、日本がそのアメリカの製造業を圧迫してきた面だって、ある。
彼は、日本には、国民健康保険がある、と言って、アメリカが見習うべき国の一つのように言っていたが、日本も状況は、(上記の意味では)アメリカと変わらない。
いずれにしろ、彼自身が、どういう解決策を考えているのか、そこが、よく分からなかったし、気になった(最後に、みんなの助けが必要とあったが、そういう、方向も含めて、知恵をくれ、というレベルの映画だったのか...)。