お金をまきあげる構造

日本は、アメリカの飼い犬のように、アメリカには、まるで、頭が上がらない。
いつも、いつでも、いつまでも、アメリカの言うがまま、のようだ。
こう考えてみようではないか。
もしかしたら、このことこそが、日本のここ何十年の、泥沼の不況の原因なのではないか、と。その辺りについて、以前紹介した、水野さんの議論を、ここで改めて、検討してみよう。

水野 でも、アメリカが十数年間比較的うまくいったのは、集めたお金を海外投資していたからです。大雑把にいえば、年間八〇〇〇億ドルの経常赤字に対して、一兆二〇〇〇億ドルぐらいの資本流入がある。だから差し引いた四〇〇〇億ドルを海外投資にまわして、そこで高いリターンを上げる。米資本は集めたお金で新興国など成長期待が高い国の株式に投資するようになったのです。つまり、一兆二〇〇〇億ドルを海外から借りるコストよりも、四〇〇〇億ドルを海外に投資することで得られるリターンのほうが大きかったのです。
そのためには、まずアメリカにお金を集めなければいけないわけですが、そこで「強いドルは国益だ」というのが効いてきます。ルービン財務長官のいう「強いドルは国益だ」というのは、日本でいう元本保証みたいなもので、要するにこの一〇〇円のドルは将来かならず一二〇円になりますよということを国家が宣言したわけです。

水野 日本の国債は九五年のときは三〜四%、その後、一気に二%以下になりました。これに対して、アメリカの国債は四〜五%です。ドルベースの元本はルービンが下げないと言っていますから、そこではかならず三%ぐらいの利ざやが抜けるので、海外の投資家は安心してアメリカに投資できました。

水野 さらにアメリカは、外国に金融市場を開放しましょうといって、九〇年代半ば以降五〜六%という国債利回りや、一〜三%程度の株式利回りで外国からお金を引っ張ってきて、今度はそのお金を高利回りの新興国に投資して、高いリターンを上げる。日本でも、従業員の給料より株式配当をもっと上げろみたいなことになったでしょう。そうやって株価をつり上げてリターンを得ていったんですね。

水野 結局、ルービン財務長官がとった戦略というのは、アメリカのなかをバブルにして、それからアメリカが外国に投資するときは相手国をバブルにして、海外から調達したお金をつかって高いキャピタルゲインを得ていこうというものです。こうして、おたがいバブルに依存しあう構造が生まれていったんです。

超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)

超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)

株式の配当というのは、よく考えると不思議だ。あれは、
払っても払わなくても「いい」
んだよね。会社が、いくら儲かろうが、経営陣は、いろいろヘリクツ言って払わきゃいい。そんな紙っぺらを、だれがお金を払ってまで、集めようとすんのかな、と思わなくもない(国債のように利子が約束されてるわけじゃない)。しかし、別に、経営陣が「払わない」と決めたわけじゃない。なんかの気まぐれで払わないとも限らない。そう「世界中の人が」思っていると想像する「具体的な根拠」があるなら、その会社の株をコレクションすることには、合理性があるのかもしれない。しかし、その場合に重要なことは、
その根拠は「イマジナリー」でいい
ということである。つまり、
バブル
だ。だれかが買うと思うから、みんなが買う。そこに、空想以外の根拠は必要なくなる。
ところがどうだろう。ここに、もう一つ別のパラメータを導入してみようじゃないか。それが「外圧」だ。アメリカ国家が、日本国家に、こう圧力をかけるのだ。
もっと、株主配当を増やせよ。
まあ、チンピラの脅しみたいなものだが、それに日和る方も日和る方。ガタブルと震えあがっちゃって、そっからは、バブル以降、日本の従業員の給料は横這いのゼロ成長、どころか、マイナスっぷりが痛々しい今日このごろ。さにあらんや、株主配当だけは、
優秀な経営者の証
よろしく、上がることはあっても、下がることはない(そんなことになったら、株主総会で全会一致で、経営者総入れ替え。ハゲタカファンドの言い成りにされ、外部から社長が一本釣されてきて、まったく、別の会社に変えられるのがオチ)。こうして、労働者の給料が、
最低賃金横這いがデフォルト
の「構造」が完成する。なかなか、労働者が主役になれるような、共同組合型の経営は難しくなっていく、昨今のようです。そうはいっても、極端に、アメリカの外圧に弱い、我が国には、それ以前に「思考停止」がデフォルトってことなんですかね...。