東京の「中心」

東京の「中心」とはどこだろうか?
つまり、東京の中で「ここ」だけは押さえていないと、まったく東京の雰囲気が分からない、今の東京で暮らす人たちの感情を、皮膚感覚で感じられない、といった場所は。
私は間違いなく、「電車の中」だと思う。
東京は、目が眩むほど、電車、地下鉄が縦横無尽に走っている。歩いて、30分もかからない範囲に、いろんな線の駅があって、組み合わせて言うなら、自宅へ帰る方法は、いくらでもある、といったくらいだ。
そして、そのどの車両も、ほとんど「満員」である。もちろん、ぎゅうぎゅう詰めというのは、特定の場所ぐらいなのだろうが(そういった状況を失くすために、また、新たな線ができるくだいに)、基本的に、地方にあるようなガラガラというのは、まずない。
ところが、セレブな言論人は基本的に電車に乗らないから、あまり、マスコミを通じて、こういったところでの光景がパブリックな場で語られることはない(彼らは、東京の中心を知らない)。
そして、そこで出会う光景とはどんなものだろう。
みんな寝てる。

数年前にふと目にした雑誌『ニューズウィーク』がコラムで、日本人が電車の車中で居眠りをする流さと深さが世界一だと紹介していた。その上で、このコラムは、日本国民が助け合って生活しているという光景を、もう目にすることはないけれども、そう思わせる光景があるとすれば、通勤電車の車中の居眠りをしながら首と首とをもたれ合わせている光景だと指摘していた。

「分かち合い」の経済学 (岩波新書)

「分かち合い」の経済学 (岩波新書)

私はここに、日本の「コミュニズム」を見る。みんな、お仕事大変なんだな。ご苦労さん。あんたはえらいよ。こういった光景を見るたびに、日本はけっこう大丈夫なんじゃないかな、と思う。みんな、幸せそうに、すやすや寝てる。
首と首をもたれあって...。