マックと情報公開

今週の videonews.com で、食の問題をとりあげているが、早い話が、食料に何か入っているよ、と言って、ゴキブリだとか、歯だとか、金属だとかなんとか言っているけど、そもそも、

  • なんか入っている

ところに、なんかが入っただけ、という話で、その「そもそも」なんか入っている、といったところを抜きにして語っても、まったく本質をついていないよな、というわけであった。
現代社会の農業は「工業」である。オートメーションで、できるだけ効率的に、機械的に食品を作るとなると、欠品は避けられないし、それと同時に、確かにスケールメリットで、一定の売り上げが達成できている間は、マージンが大きく、儲けを確保しやすい傾向があるが、諸刃の剣で、ちょっとでも売れなくなると、さまざまな費用が払えなくなって、その脆弱な基盤が目立つようになる。

誰が見たって弱り目に祟(たた)り目という状況である。これに加えて、サラ・カサノバCEOのキャラクターもマスコミの攻撃を誘発している。謝罪会見にはなかなか出てこない、出たら出たで自分たちの正当性を訴え強気な態度を貫く「外国人社長」というのはマスコミにとって格好の餌食だからだ。
そんなマックの弱体化は、本国の米国でも変わらない。ファストフード全体の消費量は増えているにもかかわらず、同社の売り上げは激減しているのだ。この背景には、2年前に失敗した情報公開キャンペーンがある。
「マック=健康に悪い」という万国共通のイメージをどうにか払拭するために透明性をアピールしようと、消費者の疑問にバンバン答えますという主旨で製法や成分などを積極的に公開したのだが、それがかえって逆効果になってしまったのである。
例えば、マックフライポテト。これまで「何カ月放置をしても腐らない」などとまことしやかに囁(ささや)かれていたこのポテトは「17の成分」からできているらしい。
さすがに切ったジャガイモを揚げただけではないことは薄々勘づいていたが、改めて「酸性ピロリン酸ナトリウム」(色の保持)、「クエン酸」(保存料)、「ポリジメチルシロキサン」(消泡剤)などの化合物を羅列されても、「いやあ、これで安心して食べれますよ」となるわけもなく、かえってエグい印象を与えてしまったのだ。
マックが異常に叩かれている、もうひとつの理由:イザ!

マクドナルドが目指した「情報公開」の戦略は、完全に裏目に出てしまった。彼らが、自分たちの商品を自慢しようと、なにかを言えば言うほど、それのどこが「食品」なんだ、といった、まるで

  • 工業製品

ではないかと見間違えるほどの、意味不明の薬品のオンパレードで作られていたことが、白日の下にさらけだされることによって、そもそも、マックの商品は「食品」なのか、といった「素朴」な感情が、大衆に芽生えてしまった。
おそらく、マックは勘違いをしたのではないか。
彼らの「感覚」が、おそらくは「麻痺」してしまっていたのではないか。彼らが何も言わない間に、多くの国民が食したこれらは、なんだかは分からないけど、それなりに奇妙な味ではあったけど、独特のうまみがあったことは確かであった。
ところが、その姿を見て、マックの社長は、この合成物質まみれが

  • 国民に喜ばれる

と思ってしまった。だから、これがどうできているのかを「もっと宣伝」すればするほど、国民の賞賛が集まると思えた。しかし、国民はマックがこれをやればやるほど

  • どん引き

の状態になってしまった。あまりにも「過激」であった。国民もまさか、ここまでとは思っていなかった。これは何か。
つまりはこれが、「工業化」だったわけである。工業製品を「食料」としてもってこられたとき、この「食品」と呼ばれる「工業製品」が最終製品になるまでに、どれほどの、例えば、江戸時代には絶対に行っていなかったような、

  • 農薬

  • 添加物

をてんこ盛りにして、これを「食料」と呼ばれる「工業製品」にしていくことで、国民は目を背けずに見ていられないような

  • グロテスク

さに

  • 吐き気

を抑えられなくなった。しかし、「これ」がお前たちが子どもの頃から、うれしそうに食べていたものの「正体」だったわけだ。まあ、これからもどんな、大衆運動的な「爆発」が生まれてもおかしくない、ということなのであろう...。