アニメ「ローリングガールズ」の世界

最近の沖縄の普天間基地に対する、沖縄知事と中央政府とのやりとりを見ていると、いよいよ沖縄の

  • 独立

といった事態が現実味を帯びてきているような印象を受ける。近年、沖縄は観光が好調という話もあって、もしも沖縄が、中央政府からのなんらかの資金の援助を必要としないような、経済的自立性を確立するめどが見えてきたとき、本当に沖縄が、日本国から離れて、以前の

へ戻ることが可能なのか、といったことを考え始めるわけである。
しかし、このことをより「過激」な形で物語の中で実現しているのが、アニメ「ローリングガールズ」の世界だと言える。
この世界は非常に興味深い構成をしている。
というのは、この世界の都道府県は、

  • 独立国家

になっている、ということなのである。つまり、沖縄一県にとどまらない。日本全国で独立国家が、ほぼ都道府県単位で成立している(細かく言うと、東京内でも、所沢市東村山市は、それぞれ独立した国家になっているし、愛知県と三重県は合併して一つの国家になっているなど、細かな差異はあるが)。ではなぜ、都道府県なのか。物語の展開としては、このような分裂国家になる前に、道州制を導入しようとした動きがあった、ということである。つまり、それに反対した

  • 各地域の「自警団」

が、それぞれの地域で独立自尊自治国家を宣言した、ということである。こういった各地域の状況を示しながら、特異な形態を示しているのが

  • 東京

だということになる。この世界の中の東京は、「東京・オールウェイズ・コミマ」と呼ばれているように、コミマが街の全風景を決定している、というほどの存在感を示すようになっており、

  • 東京=コミマ

といった状況を示している、というところにあるであろう(このことは、今の、この日本の状況をよく示しているように思われる。今の日本においては、あらゆることが東京に一極集中している。政治の中心であり、大企業の本社がほとんど集まる。しかし、もしも東京に、大地震が襲ってきたらどうなるか。東京は、徳川幕府が開墾した、基本的に地盤の弱い地域である。想像を絶する被害が及ぶ可能性がある。ところが、東京人たちはこのことについて考えない。東京の朝の満員電車は「当然」だと思っている。東京の繁栄のために、地方に原発を作って、東京に大量の電気を運んで、地方の原発が壊れたら、その被害は地方がかぶってくれ、というのは当然だと思っている。この「問題」の本質はどこにあるだろうか? そのことは、もしも東京が「コミマ」都市だったら、と考えてみるとうだろうか? 東京を

  • コミマ専門地域

にするわけである。このことは、非常に本質的なところを指摘しているように私には思われる。東京人は「コミマ」のことだけ考えて生きればいい。そうすれば、地方は「それ以外」のことを今の東京並みに、独立に発展させていく可能性が開けるかもしれない。東京人よ。頼むから、コミマのこと「だけ」を考えて生きてくれ。余計な「こと」に口出ししないでくれないだろうか orz)。
作品を構成する、基本的な「中心線」はどこにあるだろうか? それは、おそらく、主人公の森友望未(もりとものぞみ)が、彼女があこがれる宇徳真茶未(うとくまさみ)にいつまでも「守られる」存在ではなく、自分が誰かの役に立ちたい、といった「主体性」に関係して、作品は進んでいく。望未は真茶未とは違い、

  • モブ

でしかない(この作品においては、すべての人は、モサ(猛者)かモブの二つに分かれる)。つまり、「普通の人」である。しかし、たとえそうであっても、たとえ特殊な能力がなくても、自分は誰かの役に立ちたい、と彼女は考える。
これは一種の「地方自治」と端緒だと言えるのではないか。
東京中心主義やエリート中心主義や律令国家主義といったものは、基本的に

  • 頭の良い(モサである)中央が、「頭の悪い」地方の下々のために、いろいろ考えて「あげる」

というわけである。そうすれば、「頭が良い人」が考えたんだから、「頭が悪い」人が考えたものより、「良い」ものになっているに決まっている、というわけである。ようするに、田舎者は「邪魔」をするな、というわけである。能力がないんだから、考えるだけ無駄だ、と。つまり、彼らは民主主義を否定する。頭の悪い奴らが考えたり、政治に関与する

  • から

日本の政治は「悪く」なった、というわけである。極端に言えば、

  • 東京だけあればいい

というわけだ。それ以外の全ての地方ことは、東京が決定して「あげる」。その方が、すべて「頭の良い」人が決めたことになるんだから「今までの全ての<問題>が解決する」というわけである。しかし、こういった考えには、多くの問題点がある。

  1. 頭の良い人は、「正しい」計算をするだろうか? むしろ、自分の「エゴ」のために、あえて間違ったことを言うのではないか(誤用学者、エア御用、利益相反)。
  2. 頭の良い人が、「知らない」ことって、いっぱいあるのではないか。自分と関係ない地域に口を出すことで、各地域の「事情」を無視した「机上の空論」を「押しつける」ことにならないか(パターナリズム)。

このことは「頭の良い」人が「いらない」ということを意味しているわけではない。そうではなく、彼らには

  • モブ

が必要だ、ということである。彼らだけでは、なにも有意義なことは達成できない。作品の最後で、モサたちによって、望未は

  • 名なしタワー

に例えられる(名なしタワーとは、東京大決戦のとき、巨大ロボの足元を支えていた小型ロボである)。モサには「名なしタワー」が必要だ。いや、「名なしタワー」こそ、主人公、つまり、「地方」こそ主人公なのだ。私はこのアニメ「ローリングガールズ」の世界が実現することを歓迎して待ち望んでいる、と言っておこう...。