戦前の亡霊

戦後、ドイツ、イタリア、日本は、敗戦国として、国連における「敵国」として、国際社会に復帰することになった。しかし、ドイツ、イタリアに対して、日本は、まったく「違った」形でそれが行われることになった。
なにかと言えば、イタリアはムッソリーニ政権であり、ドイツはヒットラー政権であり、いずれにしろ、彼らはこの政権を徹底して

と扱うことによって、国際社会に迎えられた。そして、今に至るまで、その姿勢をイタリア国民もドイツ国民も変えていないわけである。
他方において、日本はまず、戦前の「リーダー」である、天皇は処刑されなかった。あらゆる戦前の「正当性」の体系は、すべて天皇の命令に「従って」行われていたという形式をとっていたにもかかわらず、天皇が裁かれることはなかった。
その代わりに裁かれたのが、A級戦犯と呼ばれた、当時の政権のリーダーたちであった。
そして、この形式において、世界各国が日本を許した「理屈」において、

  • 悪かったのはA級戦犯たちであって、国民も彼らの「被害者」だった

という形によって「手打ち」をすることによって、戦後の日本の国際社会への復帰が始まったわけである。
しかし、自民党が結党以来、自主憲法を党是に掲げてきたことから分かるように、日本の政治の中枢を支配してきた勢力は、このA級戦犯悪の枢軸」説が嫌いであった。つまり、彼らは徹底して、この戦後のレジームを破壊することを悲願として生きてきた。彼らも戦後70年を経て、戦前世代が高齢化をとげている今を「最後の機会」と考え、日本に対して

  • クーデター

をしかけてきていると考えることができるであろう。彼らにとっての最初の「クーデター」は、A級戦犯靖国への合祀を、だれも気づかない間に、

  • 勝手

にやった、ということである。これによって、天皇家は末代まで、靖国神社を参拝することはなくなった。

  • 戦前の帝国日本が復活しない限り

ということになる。なぜならそれが、日本の戦後の国際社会への復帰のための「手打ち」の内容だったからだ。もっと言ってしまえば、A級戦犯たちは、国益を考えて、人身御供になってくれたわけである。そうしなければ、日本が生き残れないことを分かっていたから、彼らは耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んで、死刑を受けいれたわけであろう。
せっかく、戦後の世界秩序はこうやって、構築されてきたというのに、この戦後の日本の秩序に「不満」をもつ勢力が無視できなくなってきた。つまり、A級戦犯の子や孫にあたる人たち、ということである。
彼らは、どうしても戦後のA級戦犯「悪人」説を受けいれられなかった。彼らの目的は、A級戦犯の「名誉回復」であった。しかし、そうすると、大変なことになるわけである。戦前の戦争について、日本が国際社会と行っていた

  • 手打ち

を全て反故にしなければならない、というわけである。もしも、A級戦犯が悪くなかったなら、一体、日本の誰が悪かった、ということになるのであろうか。これに、A級戦犯親族は答えられない。つまり、論理の必然として、日本は「悪くなかった」と言うしかなくなるわけである。
よく考えてみよう。イタリアやドイツが、戦前は悪かったと言うとき、明らかに彼らには、ムッソリーニ政権やヒットラー政権に対する、一切の「温情(=共感)」がないわけである。他方において、日本では、だれも悪かった奴なんか一人もいなかった、という話に流されやすくなるわけである。
もしも、日本がA級戦犯は悪くなかった、とひとたび、国際社会で言うことになるなら、日本は今の北朝鮮のような立場に逆戻りをさせられることになるであろう。言うまでもなく、戦後国際社会が日本を受けいれてきた前提が壊れるわけですから。
それに対して、日本はエコノミックス・アニマルとして、日本の国民が汗水たらして稼いだお金を、国際社会に容赦なくバラ巻くことになる。まあ、そうまでしないと、一人ぼっちの戦後レジームの破壊工作野郎は、だれも相手をしてくれないわけである。こんなテロリストを、どうして国際社会がまともに相手をしてやらなければならないのかが、まったくはっきりしないわけであろう。
上記の構造は言うまでもなく、日本という国の構造を考えるとき、明確な特徴としてあったはずなのである。
ところが、日本の知識人は、みんな、このA級戦犯「悪人」説という、国際社会との「手打ち」を、

  • ホンネ主義

によってバカにしてきたわけであろう。そして、どうであろう。日本の政治は完全に、日本会議という戦前の亡霊たちによって、占拠されてしまっている。日本の政治の中心は、まるで、冗談のように聞こえるかもしれないが、こういった

  • A級戦犯の子や孫たちによって実質、支配されてしまっている

わけである。このいい例が、安倍首相その人なわけで、ここにこそ、戦後の敗戦国であり、国連の敵国である、イタリア、ドイツ、日本の中で、日本がまったく「違う」様相を示している理由になる、と言えるわけである。
だとするなら、この「旧体制(アンシャン・レジーム)」勢力を、日本の政治がどうやってコントロールしていかなければならないのかを示していたはずであるが、結局、日本の戦後をだれも総括をしなかったから、今だにこういった

  • 戦争時の<亡霊>

に今だに悩まされている、ということになっているはずだというのに、まったく、だれもこのことを正面から語らない。靖国神社はタブーであり、A級戦犯はタブーであり、日本会議はタブーである。しかし、そのくせに、いっちょまえに日本論をぶっている、というわけである orz。
この事態は、どこか「日本の滅び」を予感させている事態のように思わなくもない。日本は、A級戦犯問題で、アメリカから三行半をとらせられることになるのであろう。そうした場合、日本は世界中で「孤立」することになる。今の北朝鮮のような、世界中から

  • なんらかの制裁

を強いられている状況となるであろう。今回の安保法制もこの流れで考えられる。日本会議という、A級戦犯の名誉回復をたくらむ彼らは、今、国会に閉じ込もり、日本国民に向かって

  • クーデター

を実行しているわけである。日本人を人質にして、彼ら戦前の亡霊たちは世界中を敵に回して、一体、何を始めようというのだろうか...。