非リベラル国家となった日本

今回の安保法制の問題は日本の「民主主義」の危機だということになるが、こういった場合に、このことを、こと「日本だけの問題」と考えがちな人が多い印象を受ける。
もう一度整理をすると、第二期安倍政権誕生は、麻生副総理による、「ナチスに学べ」指令から始まった。そして、安倍政権がまず行ったのが、特定秘密保護法であった。この法律の特徴は、

  • 最小化措置がない

というところにある。政府は何を「秘密」にできるのかについて、一切の縛りがない。よって、そもそも何が「秘密」なのかを言えないのだから、政府は「嘘を言わなければならない」ということになる(本当のことを言ったら、逮捕されるのだから)。
これによって、政府の言うことを、私たちは「本当なのか嘘なのか」を判断できなくなった、ということである。
こういった手法は、ナチスの全権委任法を思わせる。とにかく、独裁者は一切の縛りを誰かからされることを嫌う。秘密にできるものがなんなのかを「縛る」ことは、独裁者の手足を縛ることであって、彼らは嫌がる。独裁者が求めることは

  • 自分はなんでも行える

という権利である。独裁者が行うことは、だれも邪魔だてできない。
同じことが、今回の安保法制においても言える。新三要件は、とにかく、なにがやれてなにがやれないかを、時の政権が判断する、としか言っておらく、一切の最小化措置がない。とにかく、なにがやれるのかは、時の政権が決めるのだから、

  • <やりたいこと>がやれる

と言うに決まっている。まったくの全権委任法なのだ。
ということは、実質的に、個別的自衛権集団的自衛権もすべてが可能だということになったのだから、憲法九条は「なにも言っていない」ということになった。しかし、なにも主張していない文章が憲法にあるということは

  • 矛盾

なのだから、このことから、安倍政権は「憲法違反」を行い始めた、ということを意味することになるわけである。
この場合、何が問題なのか。
安倍政権は、憲法違反を行っているということは、こういった自国の憲法に違反した政権を、

  • 世界のリベラル国家は<自分たちの仲間>にしていいのか?

が問われている、ということになるわけである。
世界中のどんなリベラル国家も、自らの「正統性」の根拠に「憲法に従っている」ことを置いている。つまり、彼らが

  • 自国の国民から正統性を与えられている

理由は、彼らが「憲法に従っている」ということにある。しかし、である。もしも、こういった国々が「自国の憲法を平気で破っている」日本と

  • 友好関係にある

ということになったら、そのことは、「日本と仲良くしている国は、いずれ<平気で自国の憲法を破る>と言っているのと変わらない」わけである。なぜなら、日本と仲良くするということは、日本が自国の憲法違反を行っていることが「正しい」と言っているのと変わらないからである。つまり、仲が良いということは、相手の行っていることが「正しいと思っている」ということなのだから。相手が正しいと思うから、仲良くしているのだから。
よって、言うまでもなく、今回の安保法制によって「非リベラル国家」と日本はなるわけだが、言うまでもなく、そういった日本と仲良く振る舞う国は「非リベラル国家」だということになるし、平気で自国の憲法を破る国家となるし、そのように自国民から思われても仕方ない、というわけなのである。
大事なことは、世界の民主主義国家は自分たちの仲間に、日本を入れておいていいのか、ということが問われているわけである。もしも、日本が自分たちの仲間だとするなら、当然、自分たちの仲間の日本が、平気で自国の憲法を破るのだから、自分たちの国も平気で自国の憲法を破ると言っているのと変わらないわけである。
さて。こんな日本を、自分たち民主主義国家の仲間に入れたいと思う国がどれだけあるだろうか?
日本は世界のリベラル国家が共通してもっている「価値」である、

というルールを守る「価値」を共有しない国であることが今回のことで分かった。それによって、日本は「自国の憲法を守らない」国であることが分かった。世界のリベラル国家は、自国もこういったリベラル国家の価値を共有しない

だと思われることを嫌がり、日本と距離をとり始めることになるであろう。そして、それはアメリカも変わらない。このことは、安倍首相が「アメリカのため」に今回の安保法制を通そうとしているのではないことを示している。安倍首相にとって、アメリカなど関係ないのだ。集団的自衛権が今回の法改正で行使できるようになった、という名目によって、戦後の世界の侵略戦争集団的自衛権によって行われたように、アメリカは日本がアメリカを利用して、自分たちの利権を広げようとしていることに気づいている。日本が戦前の野望をもう一度、戦後の経済大国となった今の国力によって

  • 再現

しようとしている、ことに気付いている。戦前の日本は本当はアメリカと戦争などやりたくなかった。石油の確保もできず、アメリカを敵に回すことが悪手であることぐらい当時の連中だって気付いていた。そういう意味においては、戦前も戦後も、なんとかして

日本は日本の国益を増大させる手段を考えている。おそらく、今後、日本が世界に向けて、戦争をしかけて、多くの独立国を侵略し、自治国家を占領し、自国の領土としていくとき、その「言い訳」を

と言い続けるであろう。しかし、アメリカはいつまでこんな日本と付き合い続けていくであろうか。日本とは平気で自国の憲法を破る政府の国なのである。こんな国がもしも、アメリカの「同盟国」だと言うなら、世界中の国々はアメリカとの同盟を見直さなければならないと考え始めるであろう。そして、アメリカは日本の

  • 安倍政権

が「アメリカの国益に反する」存在であることに気付き始め、安倍政権の「打倒」こそ、目指すべき第一優先事項だと気づく、というわけである(しかし、TPPだとかなんだとか、今は安倍政権がアメリカに日本の国益を「売ろうとしている」まさにその時期だからな。しっぽり、絞り取られるまでは、アメリカもさんざん安倍政権を利用して、もとをとってやろうとしてくるのであろう。日本の政治の平和はまだまだ先のようだ...)。