中国と韓国と日本

今回の日韓の政府同士の慰安婦問題についての「合意」は、非常に奇妙な印象を多くの人に与えた。この合意がなによりも変なのは、まったく、慰安婦たち「当事者」の合意なしに行われたことで、韓国側が今ごろになって、当事者からの理解に躍起になっている、ということであろう。
そもそも私が理解できないのは、韓国政府の態度である。どう考えても、安倍政権であり、安倍政権のとりまきが「反省」するわけがない。彼らの性根が分かっていれば、安倍政権と「合意」するという態度が、なんの意味もない行為であることぐらい分かっているはずである。なんとか時間をかけて、日本の政権交代が起きて、民主党のようなリベラル政権の誕生を待って合意しなければならなかったはずなのに、なぜ「あせった」のか、ということになるわけである。

「戦後70年が過ぎたが、日本は依然として植民地支配や戦争責任問題にまともに向き合えずにいる。(韓国人には)申し訳ないが、これを克服するには時間がもっと必要なようだ。米国もフィリピン支配やベトナム戦争に対してきちんと謝罪しないように、日本もなかなかそれが容易ではない。しかし、このような状態が続くならば日本は東アジアや国際社会でまともに生きていけないだろうと考える。多くの日本人がこのことを悟るまで「慰安婦問題は解決されていない」と主張し続けるしかない」
[インタビュー]従軍慰安婦研究の吉見義明教授「日韓は合意を白紙化すべき」 : 政治•社会 : hankyoreh japan

歴史問題は「筋論」である。日本が今だに変われないのなら、変われるまで「待つ」しかない。それが、何十年かかろうが、何百年かかろうが、待つしかない。
おそらく、この事情には、二つの理由がある。一つは北朝鮮情勢に関わって、アメリカに日本と韓国の政府に「圧力」がかかった、ということであろう。
もう一つは、日韓スワップ協定の復活に関わっていたのかもしれない。

ただ、この日韓通貨スワップのおかしなところは、スワップと言いながら韓国側が提供するのは韓国通貨のウォンであるのに、日本が提供するのはドルなのです。
おかしいでしょ? 
というのも、日本が仮に危機に見舞われた際、韓国からウォンを融通してもらってそれほど役に立つとは思えないからです。
要するに、この日韓通貨スワップ協定は、形式的には同等を装いながら、実態としては日本による韓国に対する一方的な支援でしかなかったのです。
日韓通貨スワップがまたぞろ動き出す可能性!

確かに、日韓通貨スワップ協定はアジアの通貨危機に関係して、以前は行われていたが、韓国の大統領の竹島に上陸をきっかけとして、日本側が継続を嫌がる形で終了していた。
しかし、ここのところの明らかな、中国の経済の不安定が、韓国にとって日韓通貨スワップ協定の再開が自国の金融の安定にとって、非常に重要な問題であると考え始めた。
つまり、ここにおいて

  • バーター

が起きたのではないか、と思われるわけである。

グラフをご覧下さい。
中国の外貨準備の推移を示しています。
右肩上がりのグラフが当たり前だと思っていたら、中国では最近外貨準備が減る傾向にあるのです。
何故?
それは、繰り返しになりますが、中国の景気減速を嫌気して海外の投資家が資本を引き上げる動きに出ているからなのです。
つまり、海外の投資家が手持ちの人民元を売ってドルに交換し、ドルを国外に持ち出そうとすると人民元安の圧力がかかりますが、それに対して中国当局が過度な人民元安を起さないようにと人民元を買い支えているので、外貨準備高が減り始めているのです。
日韓通貨スワップがまたぞろ動き出す可能性!

年明けからの中国を発信源とした、世界的な金融不安は、そもそも、中国による人民元の切り下げが「きっかけ」となっている。確かに、アメリカのデフレ政策からの転換が言われている中で、アメリカが金利を上げれば、必然的にこういう行動を中国はとらざるをえないわけであるが、そもそも中国は去年、かなり強引に、IMFのSDR加盟に成功していたりするわけで、かなり「無理」で「強引」な政策が続いている、とも考えられるわけである。

80年代末期から90年代にかけて、日本が米欧から押し付けられて導入させられた制度にどのようなものがあったかを想起してみると良い--国際業務を手掛ける銀行の自己資本比率を8%以上に保つことを義務付けた国際決済銀行(BIS)規制、保有資産が取得原価(簿価)に対して一定比率以上も変動すれば当該機関の損益計算書に反映させる時価会計制度、そして「金融ビッグバン」と呼ばれた金融自由化が完全に実行されたことで、銀行や証券、保険といった各金融機関相互の垣根が取り払われただけでなく、海外からの買収も容易に行えるようになった。
それにより、戦後の「土地神話」を背景に「含み経営」で発展してきた日本経済は致命的な打撃を受けてバブルが完全に崩壊してしまい、多くの大銀行や大手証券会社の破綻も経て多くの日本人が塗炭の苦しみを味わってしまい、いまだにその後遺症を引きずってデフレ圧力に悩まされている。
こうしたことが、これから中国に襲いかかってくると考えると理解しやすいだろう。例えば、国有銀行や国有企業が時価会計の導入を国際社会から義務付けられること一つを採っても、それが実現されればまさに恐ろしい状況が待ち受けているといわざるを得ない。
日本は米国の完全な属国だったのでその要求を何ら抵抗せずに受け入れてきたのに対し、中国はそれなりに抵抗して"したたか"に振る舞うことはある程度は推測できる。
とはいえ、人民元のSDR採用が実現される以上、資本取引の自由化や国際資本取引でのルールの画一化に組み入れられることを自動的に受け入れたも同然であり、うまく立ち回って抵抗しても限度がある。
中国の権力者層や政策当局者がそれをどこまで考えて欧州系金融資本の"甘言"に乗ってしまったのか定かではなく、おそらく、眼前の天文学的なバブルや過剰生産能力の処理にばかり関心が向いてしまい、そうしたことに気が回らなかったのだろう。
http://blog.financial-journal.jp/article/429882424.html

国際経済は急速に進行している。以前も書いた記憶があるが、統計データを見ると、中国の平均賃金は、ここ5年くらいで、4倍くらいになっているわけで(その分、物価も上がっているだろうし、そもそも、円安になっているわけだが)、いわゆる「オフショア」ビジネス・モデルで、儲けようとしていた日本企業は、あまり、そのモデルに旨みがなくなってきている。
これに重なって、中国が今後、日本のバブル以前の「含み経営」を行えなくなり、時価会計で、BIS規制ということになれば、日本のバブル崩壊以降の二の舞も考えられる...。