なぜ二重国籍ではダメなのか?

今回の蓮舫さんの問題は、そもそも、最初は彼女が「二重国籍」なのかどうかが問題となっていた。ところが、国家官僚たちが彼女を法的には「二重国籍」と考えていないという根拠が示された途端

つまり、蓮舫氏が85年に日本国籍を取得していたとすると、そのとき自動的に中国の法令に基づいて台湾籍(中国籍)は失っており、二重国籍というのはありえないことになる。
一方、八幡氏はこうした報道自体を「知識のない記者が聞きかじりで書いた記事」と否定しているが、複数の新聞や通信社が一斉に同内容の記事を書いているということは、普通に考えれば、法務省当局のブリーフィングがあったと見るべきだろう。
蓮舫「二重国籍」報道はグロテスクな純血主義にもとづく差別攻撃だ! さらにはガセの可能性も浮上 |LITERA/リテラ

(そりゃそうである。10年近く国会議員をやっていたのだから、そういった「資格」を審査する仕事をしているはずの、官僚はなにをやっていたのか、という話になるにきまっている)、おおさか維新の会の馬場議員が、二重国籍の禁止の法案を国会に提出する、と言い始めた。
私は、この今回の流れは非常に「怖い」と思っている。
よく考えてみてほしい。
そもそもの最初は、彼女が「二重国籍」なんじゃないのか、という疑問であった。これ自体も、明らかに彼女が民進党の党首として立候補することが分かった時点で、明らかに彼女を「狙い撃ち」した追及だったわけで、この一連の流れを「恐怖」しながら、かたずをもって見守っていた方々が多くいたのであろう。
この事態が恐しいのは、「出る杭は打たれる」ということにある。彼女が、ひとたび民進党の党首になろうとしたとき、明らかに彼女を「狙い撃ち」して、今回の話がわきあがってきた。
これが日本社会である。
日本社会は、一見、普段は多様な人々を「受け入れている」ように見せながら、なにか自分たちに「クリティカル」な「嫌さ」があると直観すると、途端に

  • 差別

を始める。ここは非常に大事なポイントであるわけで、最初は「彼女が二重国籍かどうか」が問われていたわけである。そうであるのに、なぜ、その疑いが晴れた途端に、「法律で禁止する」という話になるのだ。
まるで、ヤクザの「当たり屋」ではないか。
どんどん、話をすりかえていく。やれ、戸籍謄本を見せろだとか。潔白なら見せられるはずだとか。かたっぱしから、個人のプライバシーをさらけ出させようとする。そして、細かな瑕疵を見つけては、いつまでもいつまでも、いじいじといじめる。
つくづく、日本人って怖いな、と思う。
よく考えてみてほしい。ある外国の方が日本人になってくれました。その人は、今の日本の法律は外国からの受け入れに「優しい」法律だな、と好感をもって日本人になりました。ところが、そこから、日本人のヒステリーが始まります。急に、キレ始めた日本人は、いろいろと「ヤクザの当たり屋」並みに難癖をつけて、法律を、外国からの日本国籍をとってくれた人に「不利」なように変えたとしましょう。彼はどう思うでしょう?

例えば、ブラジルという国は重国籍を認めるどころか、国籍離脱が事実上できなくなっています。そのため、日本に帰化したブラジル人は自動的に二重国籍となります。法務省は当然これを承知しているわけですが、それが理由で帰化を拒んでいるということは全くありません。
法務省ですら事実上容認している二重国籍の禁止規定が、どれだけガラパゴスルールなのか考えてみる (1/2)

この記事を読むと、二重国籍は少なくとも私たちが先進国と呼んできた欧米の国々では、どこでも認めている(認めていないのは、アジアの一部の国なのか)。だったら、まず最初に行うべきなのは、二重国籍を認めることなのではないのか。なぜ、そういうふうに考えられないのだろう?
あなたが女性だったとしよう。あなたは、ブラジル人の素敵な男性と結婚しようと思っている。しかし、ブラジル人の彼は、ブラジル国籍を離脱できない。でも、あなたは日本国籍を維持したい。普通に考えたら、二重国籍でいいんじゃないんでしょうか?
大事なポイントは、国籍離脱を相手国が行ってくれるかどうかは、相手国の都合で決まる、ということです。
例えば、こんな例を考えてみましょう。ある二重国籍をもっていた野党議員が国民的人気があり、今にも総理大臣になりそうだ、とします。そこで与党の政権中枢は考えました。その相手国に賄賂を行い、この議員の国籍離脱を妨害してくれ、と頼みます。すると、二重国籍の議員は、総理大臣になれないというルールによって、いつまでも、与党政権は安泰だった、と。

アメリカに話を戻すと、この国では米国籍保持者であれば「生まれつきのアメリカ人」か「市民権取得者(いわゆる帰化人)」かにかかわらず、ほとんど全ての地位に就ける。たとえばヘンリー・キッシンジャーはドイツ、マデリーン・オルブライトは旧チェコスロバキアからの亡命者でありながら国務長官にまでなった。特にオルブライトは米国史上初の女性国務長官だった。共和党は基本的に移民に厳しい政策を採るが、ジョージ・W・ブッシュ時代にも台湾生まれ、キューバ生まれの各省長官がいた。
ヒューマン・バラク・オバマ 第4回:大統領は二重国籍?〜「生まれつきのアメリカ人」とは。

このように、アメリカは基本的に、あらゆる地位に就ける。唯一例外の大統領と副大統領も、「生まれながらのアメリカ市民権保持者(a natural-born citizen of the United States)」しかなれない、とはなっているが、この「生まれながら」という定義が曖昧なわけである。
もしも、あなたの結婚した相手が外国人で、子どもにはお互いの国の国籍をもっていてほしい、と父親、母親の両方が思っていたとき、本当に、その子どもは、どちらかの国籍を選ばなければならないと思うだろうか? 両方の国籍をもっていて、どうして悪いと思えるだろうか。また、その子が、二重国籍だからといって、

  • 国家官僚になれない
  • 総理大臣になれない
  • 国会議員になれない

なんて言われたら、その子がかわいそうだと思わないのだろうか(というか、普通に差別であろう)。
まあ、でもそういう人はきっと、「自分は日本人だから日本人と結婚するんだ」と思っているんでしょうねえ...。