新潟のJ2降格

新潟という、ここ何年か、J1の最下位周辺をうろうろしていたチームが、今年はJ2に落ちたといっても、だれも驚きもしないし、関心もないのだろう。それは「弱いから負けたんだ」と言われればそうなのだろうし、別にそれを否定したいとも思わない。サッカーチームについては、人によっていろいろな「理想」があって、そう考えたとき、新潟の試合はここ何年か、どう考えても、おもしろい試合をしていたとは思えない、と。そうして、多くの人の頭から忘れ去られた新潟は、実際こうやってJ2降格が決まってもだれも、そのことを話題にも振り返ったりもしない。
しかし、である。
新潟を長年応援していた地元の人たちには、そういった他人から見た「理屈」はどうでもいいわけである。なぜJ2に降格したのか。それは、降格すべくして降格した、と言うしかない。じゃあ、それは一体だれの責任なのだろう?

2015、16年と2年連続で残留ギリギリの15位だったクラブは今季、新監督にJ3長野で指揮を執っていた三浦文丈氏を招へい。「スピーディーなサッカーを目指す。勝つことに全力でチャレンジする」と新たなスタートを切った。新チームのコンセプトは始動からブロックをつくって守備をし、そこから素早く攻撃に転じる。その練習を繰り返し、これまでアルビの代名詞とも言える前線からのプレスが影を潜め、逆にスピーィーな攻めが攻め急ぎになってしまった。当然、守備でもプレスをかけにいく位置が前線からではなくなり、これまでボールに食らいつく守備が売りだったボランチの小泉が「俺がいる意味がない」と自身の存在価値を見いだせずに悩んだこともあった。
J2降格 アルビレックス新潟に何があった - 「アルビレックス新潟」各チームの勝利を願い 出来るだけ現場で応援している東京都内在住のサポーターが書くweblog

呂比須監督は「残り23節で12勝以上、勝ち点は38以上を目指す」と布陣をこれまでの4-4-2から4-2-3-1に変えて攻撃力を上げ、初戦に勝利したものの、その後チームワーストの6連敗。第13節(5月28日)の仙台戦から第29節(10月14日)のG大阪戦で勝利するまで16試合勝ちなし(4分け12敗)と泥沼に陥った。
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この二人の監督に共通して見られる特徴は

  • まったく経験がない若者

ということに尽きている。ようするに、この監督を招聘したオーナーが「お金をけっちた」わけである。長年、J1にい続けたことで、J1をなめたのだと思っている。彼ら二人は「いい経験」を積んだのだろう。しかし、それが一体、新潟にとって、なんだったというのだろう?
この二人の監督には、自分の選手時代の特徴から、「ボクノサイキョウノさっかー」のイメージがあった。それは、選手時代の自分が一番輝けるサッカーであって、そのためには、選手もチームも新潟もどうでもよかったのだ。悲しいくらいに、どうでもいい二人に、新潟はなぜか、いつまでもいつまでも、「授業料」を払い続けた。意味不明なまでに、

  • レッスンを受けている

側に、授業料を払い続けるという愚行を繰り返し続けたわけであり、この失態を許したのが、新潟の盲目的に無条件に地元を礼賛する、批判精神のない地元民だったのだろう。

加えて例年、優良な外国人選手を獲得していたが、今季の外国人選手は素行に問題があった。MFジャン・パトリックは規律違反を犯して6月16日に契約解除。MFチアゴガリャルドも仮病で練習を休んだ日に、選手を招いて自身の誕生会を開いたり、練習生を故意に蹴り、それをとがめた大野主将に襲いかかろうとするなどプロとしてあるまじき行為をし、9月28日には家庭の事情という理由で一時帰国することが発表された。
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ここにも、日馬富士問題とまったく変わらない「外国人労働者」問題が介在している。外国人選手は「助っ人」ではない。彼らも純粋な「労働者」なのであって、最も大事なことは、彼ら一人一人を

  • 自分たちが受け入れられるのか?

が問われている。彼らはまさに、東浩紀先生の「観光客の哲学」が言うように、「ふまじめ」「不謹慎」に日本でお金を稼ぎに来ようとする。そういった多くの「ふとどき」な連中の中から、この日本の土地の人のために、誠実に自分のできることを捧げようとしている人を、たとえ数えるほどしかいないかもしれないが、探しださなければならないのであって、それがスカウトの仕事なのだ。たんにスキルがあって能力があるだけだったら、どっかのランキングの上位から順番に引き抜いてくればいいわけであって、だれでもできる仕事でしかない。

第29節(10月14日)のG大阪戦で17試合ぶりの勝利を挙げると、自信を回復させるとともに加藤の言う新潟らしい戦いもできるようになった。そこから18日の甲府戦まで4試合負けなし(3勝1分け)という好結果も出した。
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なぜか、このシーズンの最終盤に来て、勝ち続けているわけだが、この光景には、どこか忸怩たる思いがある。私は最初に、新潟のサッカーは「おもしろくない」と書いた。しかし、そのやっていることは、ハリルホジッチが言っているのと変わらない、前からのプレス。つまりは「デュエル」なわけで、つまりは、それを「つまらない」と言うなら勝手にしてくれ。新潟は別に弱くはなかった。そうでなければ、ずっとJ1に残れていたわけがないわけで、ようするに「弱者の戦術」において、よく戦っていた、とは言えるわけである。
もちろん、こんなことを言ってみたところで、今さら、J1を降格したことは変わらないわけで、そもそも来年、どこまでの戦力をそろえて、J2で「いい勝負」ができるのかもわからないわけで、ようするに、経営側が今年のように

  • まったくやる気をみせない

で、同じ誤ちを繰り返すことは十分に予想はできるわけだが、新潟県内の「まっとう」な批判精神をもったメディアも育っていない状況で、いったいなんの改善が望めるというのだろうか。唯一の希望は、それでも、どこまでも「応援」してくれる地元民なのだろうが、彼らの「良識」に頼るしかない現状が、なんともいえない停滞を、もう何年もかかえ続けていた、ということなのであろう...。


追記(2017/12/02):
言うまでもなく、サッカーもしょせんは「ゲーム」であり、J2に落ちるときもあれば上がるときもある。上記の記事では少しアイロニカルに書いたが、私は上記の記事である視点について抜けていたことを、書いたその後、知った。今日の今期のJ1三位のC大阪からの勝利で新潟は、J1の最終順位を17位として、最下位の大宮の18位を逆転した(これだけでも、今年1年のスタートダッシュからのぶっちぎりの最下位をひた走っていた状況を考えると驚くべき結果だ!)。人によっては、So what? と思うかもしれない。しかし、これによって来年のルヴァンカップの出場権を獲得しているわけで、大変に興味深い結果だったんじゃないのか、とは言えると思うわけである...。