森友問題の本質

私が森友問題に違和感を覚えたのは、以下の東浩紀先生の発言からであった。

東:まず国有地が本来10億であったもの、それも問題ないんだというのが右翼のもっとも保守のラディカルな人たちですけど、僕はそれは思っていなくて、あの10億の国有財産が1億で払い下げられ、しかもいろいろ相殺されて200万円しか払っていないというのは、あれはとんでもないと思うわけ。もう大問題です。あれは何かの背任か何かに値する可能性があるから、大阪の何局だっけ?理財なんとか?
津田:理財局。
東:そこらへんとかはバッチリ追及すべきだし、検察とかが入るべきだし、背任とかで誰か役人を挙げるべきだと思います。でも、いま問題になっている籠池理事長の国会審議とか、これ何の意味もなくて......。要は、安倍首相と籠池が友達かどうかみたいな話しですよ。そんなの知らんがな。何の意味もないです。やめるべき。
茂木:国有地の値段、あの売却額が適切なものだったら、それについては問題ないんだけど、それも多くの人が疑問持っているということでしょ?まずは。
東:適切ではないです。
茂木:あとは私学審議会でしたっけ?あれも設置基準に特別な配慮があった。
東:あれも特別な配慮というか、結局規制緩和で私学審議会の基準を緩めたところで、まさに現場のやつが柔軟な運用をしたということですよね。それも柔軟な運用をした当事者とか、その上司とかを背任で捕まえることはできるかもしれないけど、そこの背景に大阪全体が、例えば何かの思想で一色になっていて、大阪とか維新の党が、あるいは一体となって塚本幼稚園、森友学園を応援していたということは、陰謀論にすぎないんです。もしかしたらそうかもしれないけど、それを物証で証明することはできないでしょ?だから、現場のやつが国有財産に損害与えていたんだから、それは背任として捕まえるということでいいんじゃないですか?
森友学園騒動の「本当の問題」とはいったい何か――東浩紀・津田大介・茂木健一郎が籠池氏証人喚問の夜に語り合った

ようするに、彼は、安倍首相を中心とした政権中枢の、森友問題への関与を追及することは

  • 無意味だ

と言っているわけである。なぜなら、

  • 物証で証明することはできない

からだ、と(物証というものは、そもそも、権利者が自分の「利益」の保証のために、相手に求めるものを言うわけですから、最高権力者がそんなものを、命令相手に「残させる=公開させる」わけがないわけですw)。しかし、もしもその通りだとするなら、この日本という国は、

  • 最高権力者

が「犯罪」に関わっていた場合に、それを取り締れない、ということになるのではないか? このことは、ヤクザやオウム真理教で、鉄砲玉の子分や信者の「犯罪」をいくら裁けても、親分や麻原教祖の罪を裁けない、ということを言っているわけで、つまりは、そんな社会でいいのか、が問われているわけであろう。
なぜ森友問題が、こんな一年にも及んで、国会でやっているのかといえば、確かに今回、文書の「改竄」というものが判明したわけであるが、そもそも、財務省中央政府が、国会や国民による、情報公開の請求に対して、まともな対応を行わずに、のらりくらりと、かわし続けてきたからなわけであろう。
ようするに、安倍総理は、まったく「やる気」を見せなかった。そして、こうして一年も、ずるずると時間の無駄使いを行い、野党や朝日新聞を罵倒し続けたわけで、ところが、こうやって、国会に提出された、公文書が「改竄」されていたことが分かって、

  • いかに安倍総理が、この問題を「ごまかしてきた」のか

が暴露されたわけであろう。
しかし、よく考えてみれば、これは単純に「公文書の公開」が、普通に行われていれば、なんのことはない、こんなに長く、やることもなかったわけである。
つまり、森友学園の土地の売却の「交渉記録」を、国民に公開すればいい。
もちろん、どんな記録も、国家は管理している、ということはないかもしれない。ある程度、慣例となっているものは、「いつもの作業」として、そういった記録が残らないことはあるかもしれない。しかし、このケースは、あまりにも特殊にして特殊なわけであろう。おしもこんな売却を、だれの上司の指示もなく行ったとしたら、後から、

  • なんでこんなことをしたんだ

と聞かれたとき、公務員は自らを守るために、そういった「交渉記録」を残さないはずがないわけです。
つまり、単純に「これ」を国民が見れればいいわけです。
じゃあ、なぜこの「資料」が国民に公開されないのか?

三木由希子 というよりも、中身を見なくても、たとえば、文書のタイトルとか、ある程度、検索をして、中身を示さずに、該当するものを探す方法というものは、あるので、それはできるんじゃないか、っていうことなんですよね。それで、日本の裁判の限界なんだと思うんですけど、原告とか訴訟当事者が立会わない証拠調べって、一切やってないんですよ。いま。インカメラ審理っていうのは、部分的にやってるんですけど、それって、証拠調べではないんですよね。文書提出命令を、例えば、この場合だと、国が拒否した場合に、拒否したことが妥当かどうかを、裁判所が提出対象の文書をインカメラで見て判断をするということなので、それで証拠で出てくれば、双方がちゃんと見るっていう、証拠調べになるんですよね。なので、例えば、この場合だと、私達が立ち会いを放棄した証拠調べをするっていうことが、個別の法律上規定をすれば、憲法に反しないと。裁判公開の原則に反しないと、最高裁の話はあるんですけど、今、そういう法律が、情報公開法も含めてないんですね。なので、立ち会いを放棄しても、最高裁の別の決定があって、個別の法律がなければ、インカメラでの証拠調べはできないっていう判断が実はあって、そこが今回、足枷になっている可能性があるな、とは思っているんです。
VIDEO NEWS『森友、加計問題』の本質は情報公開と公文書管理にアリ

三木由希子 情報公開訴訟は昔から、裁判所が非公開文書を直接証拠調べできないってことが、問題になっていて、これは国際社会にいくと、日本の裁判が変だ、ってみんなに言われるんですよね。普通は、裁判所の権限でできると、いう言い方をされていて、実はその民主党政権時代に、改正情報公開法案で出してるんですけど、各法で、その時は、インカメラ審理の手続きを入れたんです。証拠調べとして。それが通れば、日本で始めて、証拠調べをインカメラでやるっていう、手続きができたんですけど、結局、それが通らなかったので、今に、こう至っている。
VIDEO NEWS『森友、加計問題』の本質は情報公開と公文書管理にアリ

まあ、ようするに、インカメラ審理の「法律がまだない」から、ということになる、と言わざるをえないんじゃないですかね。
まずは、さっさと、この法律を国会は、一丸となって、成立させる、ということが先でしょ。
そして、もう一つの問題が、

  • もしも最高権力者が「犯罪」に関わっていた場合にどうやってその「罪」を裁くのか?

の「システム」を、この国はビルトインしなければならない、ということになるでしょう。

神保哲生 ここで大事ようなのは、73年の10月20日、逮捕されてから、一年ちょっと経った所なんです。この時に、実は、アメリカはまだ、きちんとした、独立検察官制度っているのが出来てなくて、司法長官が、独立検察官というものを任命して、それで、大統領の関与、この事件を捜査するという形をとっていました。つまり、FBIとか、既存の捜査機関では、最高権力というものを、きちんと捜査が出来ないというふうに、ある種当たり前なんですけど、そう判断してたんですね。それは、当たり前ですけど、FBIというのは人事でも、予算でも、なんだかんだいって、政権の一部だ、と。特に、その当時、フーバー長官というFBIの名物だった長官が、亡くなって、FBIが揺れてるとこだったこともあるんですけど、その独立検察官というものを、この時は、特別検察官と呼んでたようですが、アーチボルド・コックスという特別検察官が任命されたんだけれど、ニクソンは最高権力者だから、自分に捜査の手が及びそうになった時に、それを指名する権限をもった司法長官に、コックスの罷免を求めるんですね。罷免しろと。自分に捜査の手が伸びてきたということで。司法長官は、その罷免を拒否して、辞任するんです。辞任した後に、今度は副長官、ナンバーツーが今度は罷免する権限をもってるので、ニクソンは、副長官にそれを命じる。しかし、副長官も、その罷免を拒否して、辞任するんですね。この日に、二人が次々と首になって、ついでにこの、ナンバースリーの、ロバート・ヴォークという、後に最高裁の判事に任命されて、承認を受けられなかった人間が、当時、司法省のナンバースリーで、このナンバースリーが、ニクソンの要求に、拒否しきれなくて、この特別検察官を解任します。なので、この同じ日に、司法長官、司法副長官、そして、特別検察官というものが解任されるということで、これ、土曜日の夜だったので、アメリカで、サタデーナイトマサカーって、なんていうんだろう、土曜の夜の大虐殺、っていうような、アメリカ史の中では、そういう呼び方をされる日がこの1973年の10月20日なんですね。この時に、実は、アメリカは、これは最高権力者っていうのが、もし犯罪に絡んでいたりすれば、今のアメリカの仕組みでは、それをきちんと裁くことができてないんだ、できない可能性があるんだということを、非常に痛感したということが、歴史の転換点としてあります。
VIDEO NEWS森友問題の本質は最高権力をいかにチェックするか・アメリカがウォーターゲート事件から学んだ教訓を参考に

まあ。さっさと「独立検察官制度」を日本は導入しろ、ということになるでしょう。
大事なポイントは、今回の森友問題で、

  • だれが考えても、明らかに安倍総理または奥さんが関与していることは自明だ

けれども、問題はそこにあるのではない。そういった、最高権力者が犯罪に関わっているときに、こういった人たちが

  • もしも

犯罪に関与していたら、どういった「仕組み」があれば、それを裁けるのか、という「仕組み」が日本にないことにあるわけである。
じゃあ、なぜ日本の警察や検察は裁けないか? まさに、彼らの「人事権」を、こういった最高権力者は握っているから、なわけでしょう。
つまり、問題の本質は「物証で証明できない」ことではなく、彼らと「独立」に彼らの犯罪を捜査するシステムが「ない」ことが問題なわけである。よく考えてみてください。世の中には、物証がなくても、裁かれている犯罪なんて、いくらでもあります。では、なぜそれらは裁かれているのでしょう? それは、そういった証言が信用に足るとか、状況証拠からとか、そういったことだけではなく、ようするに、

  • フェアな立場から捜査される

といったシステムがそれを担保するわけでしょう。
じゃあ、今の中央政府自民党がなにをやっていますか? 今だに、麻生財務大臣は辞任をせず、「自分の手で」財務省の「調査」を行おうとしているわけですが、だれが考えても、

  • 当事者

が、まともな「調査」を行えるわけがない、ということが自明なわけでしょう。ですが、意地でも、この地位を手放さない。自民党も、どう考えても、「当事者のお友達」で構成したとしか思えない(同じ「犯罪」のグルだとしか思えない)ようなメンバーで構成された、調査チームを作るとか、なんかの冗談としか思えないようなことを、今だにやっている。
まあ、これが森友問題の「本質」なんでしょうね...。