日本サッカーのある憂鬱

サッカーのW杯も、あと何ヶ月かなので、この前のマリ、ウクライナとの練習試合を経て、本番に向けて、自分なりに、少し総括をしておこうと思っている。
今回の練習試合において、ハリルホジッチはインタビューで、ある気になることを言っている。

「パワーもアルジェリアの方があったと思う。ただ、日本の方が規律を守るという部分がある。規律を守るとはいえ、日本にも変えにくい部分がある。私がトライしても、なかなか変わらないところはある」
ハリル監督は規律を遵守する日本を称賛している。その一方で、攻守において様々なリクエストを選手たちにしており、"なかなか変わらない" という思いもあるようだ。W杯まで残り3カ月を切っており、修正を施す時間も限られている。ハリル監督もそれは重々承知だが、「W杯直前に(準備期間が)3週間あるので、改善できる部分もあると思う」と展望している。
「規律を守るとはいえ…」 ハリル監督が「なかなか変わらない」日本代表に苦悩 | Football ZONE WEB/フットボールゾーンウェブ

ハリルは、前回のアルジェリアに比べて、個で打開する能力のある選手が少ないと言う一方で、日本の特徴として「規律」を挙げている。しかし、それと同時に、

  • 私がトライしても、なかなか変わらない

なにかがある、ことを指摘するわけである。
このことは、私たちが「規律」ということを考えるときに、大きな示唆をしているように思われる。私たちは普通、日本人は「ルール」をよく守ると思っている。しかし、ハリルに言わせると、

  • あること

については、「なかなか直せない」と言っているわけである。このことは、私たち日本人が「ルール」を守ると言うときの「ルール」は、

  • 私たちにとって「どっちでもいいこと」

であることを示唆している、と考えられる。私たちは、自分にとってどうでもいいことについては、どんな命令をされても、なにも文句を言わないで「従う」わけだが、どうも

については、意固地なまでに、自らの「ポリシー」を変えない、ということを示唆しているように思われる。
さて。結局のところ、ハリルは何が言いたいのだろう?

だがプラチナ世代は、天才肌の攻撃的資質が溢れる反面、もともと守備面への課題を抱えていた。U-17日本代表を率いた池内豊監督も、攻撃的MFの高い競争率とは対照的に「少しでも守備の出来る選手がいれば、ボランチに回したい」と頭を悩ませた。結局一貫してプラチナを牽引して来た宇佐美にしても柴崎岳にしても、そこが解消されたとは言い難い。宇佐美はホッフェンハイム時代から、攻撃面では非凡なプレーも見せてきたが、現地ドイツでは「戦えない」とのレッテルが貼られてしまった。日本代表でも、ハビエル・アギーレは招集しようとしなかったし、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督に指摘されると途端に走行距離が急増していったから、意識づけが遅れていたことは否めない。また柴崎も、アギーレ、ハリルホジッチ両監督ともに、日本代表でのボランチ起用は考えていない。
解明すべき検証課題。なぜ宇佐美は、プラチナ世代は日本代表の軸になり切れないのか?(SOCCER DIGEST Web) - Yahoo!ニュース

私は細かいことは分からないけれど、結局のところ、ここなのかな、と思っている。日本のハリルが来るまでの「育成方針」は、とにかく、

  • スペインの「ポゼッション」サッカー

であった。とにかく、試合全体を通じで、圧倒的にボールを保持し続けるサッカーであった。ところが残念なことに、日本がそれが通用するには、せいぜいアジア予選までであった。そして、事実、前回のW杯は、それを「自分たちのサッカー」と呼んで挑んだわけだが、本戦では、どこのチームも自分たちより実力があり、この「願望」が叶えられられず、予選敗退であった。その場合に、彼らが言っていたことは、「歴史を後戻りさせることはできない」だった。いくら予選を通過しても、引いて守るだけのサッカーだったら、日本サッカーは、いつまでも「進化」できない、と。だから、「攻撃こそ最大の防禦」と主張した。
しかし、問題はそういった「自分たちのサッカー」が、必ずしも、彼ら選手一人一人の「個人的」な信念という狭い了見だったわけではなく、

  • 日本の育成方針

に深く関係した問題だったために、そう簡単に選手の「本質」を変えられなかったことなのだ。

人を捕まえる守備をすると相手によって動かされるのは当然ですが、それ自体をノーと言ってしまうのはまた違います。。サッカーに正解はないので、今の日本の守備にメリットがあると思う人もいれば、デメリットが多いと思う人もいます。だから今のハリルホジッチ監督のやり方が悪いわけではないんです。これが良いのか悪いのかの判定は誰にもできません。
なぜ日本は守備に隙が生まれるのか? 頑固なハリルは諸刃の剣に

おそらく、ハリルの今までの戦いにおいて、最も彼を象徴したのは、日本でのオーストラリアとの最終予選であろう。そして、ハリルは基本的に、この試合のレギュラーを今も

  • 日本のレギュラー

と考えているはずである。この試合を特徴づけたのは、試合全体を通して、前からプレスしていくスタイルであり、徹底した

  • ポゼッション・サッカーの否定

であった。おそらくは、ハリルは本戦もこの「レギュラー」を中心とした、この「スタイル」をベースに戦うであろう。ハリルが重要視していることは、まず、試合の立ち上がり

  • 守備中心

に入る、ということである。つまり、早々と前半で大量得点を取られて、雌雄を決せられてしまっては、前回の日本のように「一瞬」で、予選敗退が決まってしまう、というところにある。よって、なんとしても、

  • 守備の「崩壊」

を避けなければならない。そして、おそらくハリルは、その日本の「特徴」と呼んでいる「規律」を最も生かせる手段として、この

  • 人を捕まえる守備

をベースに考えているはずなのだ。ところが、彼を悩ませているのは、上記のオーストラリア戦のレギュラーを除いて、

  • なかなか、この「スタイル」に合った選手がいない

ということで悩んでいるのではないか。ようするに、

  • 「攻撃的守備」のデュエル

で評価できる選手が、日本には「驚くべき」ほどにいない、ということなのだ。
私は上記のような「仮説」を前提にして、ハリルは最終的には、

といった選手を選んでくるのではないか、と考えている(あと、まあ、岡崎も)。というのは、いくら攻撃の才能があろうと、ハリルの考える「守備」を一定のレベルにまでしてくれる人材が、あまりにも希少だと考えている、と思われるからである(実際にどうなるかは、また別なんでしょうが)。

今シーズン、世界最高峰ラ・リーガ(スペイン)でシステムの潮流となっているのは、4-4-2である。これは回帰主義と言えるだろう。一時2トップは否定され、1トップ、もしくは3トップが全盛になったが、結局、ピッチを広くカバーし、効率よく戦うには、この配置が理想的だ。
バレンシア、エイバル、ヘタフェが4-4-2でビッグクラブを相手に健闘を示しているのは、その防御ラインが強固だからだろう。
プレッシング&リトリートを併用。まずは相手のボールの出所を潰すも、外されたら、ラインを下げすぎず、守備ブロックを作り、跳ね返し、ミスを誘う。それでも入り込まれたら、じりじりとラインをさげる。忍耐強い戦いの中、2人が前線に残ることで、攻撃の糸口は捨てず、カウンターで脅かし、勝機をつかむ。
攻撃こそ最大の防御でもあるのだ。
DF、MF、FWという3枚のラインが、常に高さをコントロールしながら、それぞれ等間隔で並ぶ。それぞれの間に入ってきた敵を、圧迫し、殲滅。ラインの間でスペースを与えない。とりわけ、PASILLO INTERIORと言われるDFの前を横切る危険なスペースでは、絶対に自由を与えないことだ。
もし、これができたら、相手の攻撃力を半減できる。
そしてバルサまでが変則的な4-4-2を使っている。これはピッチを縦に左、左中央、右中央、右と4分割したとき、最も均等なスペース配分ができる。持ち場を守れる、個の能力が高く、もしくは戦える選手がいる場合、最終的に相手を押し切れる。後半になって、力の差が浮き彫りになる。今シーズン、バルサが手堅い戦いから、後半に勝負を決めているのは偶然ではない。
欧州遠征メンバー発表。W杯でハリルJAPANはいかに守るべきか?(小宮良之) - 個人 - Yahoo!ニュース

ハリルJAPANは何度か4-3-3を採用しているが、システムとしてはまったく機能しておらず、早急に4-4-2の選択肢を探るべきだろう。
欧州遠征メンバー発表。W杯でハリルJAPANはいかに守るべきか?(小宮良之) - 個人 - Yahoo!ニュース

まあ、どうでもいいのだが、今期のJ1では、横浜の「特殊サッカー」が注目されている。

「特殊サッカー」に変身したマリノス。2冠セレッソはどう対応したか|Jリーグ他|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

しかし、以下の記事を見ると、それを「特殊」と考えるのではなく、「ポゼショナル・サッカー」として評価すべきだ、と言っている。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180320-00000016-sasahi-socc

なるほど、と思いながら、J1の横浜に注目しているわけだが(そういえば、この監督が上記のオーストラリアの監督だったんでしため)、個人的には、私は、J2の新潟の試合をDAZNでよく見ている。去年から監督が変わり、全試合を 4-4-2 で戦っているわけだが、それほどの大勝ちもしないし、この前のように、最下位の愛媛に 0-1 で負けたりもあったが、概ね、失点を少なくできているわけで「手堅い」戦いができている、ということなのか、と思っている。
おそらく、本戦での「守備の安定」を考えるなら、4-4-2 は一つの選択肢なのだろうが、ハリルはこういった「トライ」を行うだろうか...。